「金融工学」は何をしてきたのか 今野浩著 を読んで
「金融工学」とは「将来の不確実なキャッシュフローの計算と制御」である。(P.187)
また、不確定な未来に対して、「分散投資」によって、リスクを回避する必要があることは、ポートフォリオ理論によって明らかにされた事実である。(P.26)
「一つのかごにすべての卵を盛るな」(P.108)ともある。
2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに起きた「世界同時金融危機」は「金融工学」が悪かったのか?
経済学の世界では、ミルトン・フリードマン教授は「金融工学は経済学とは言えない」といい、ポール・サミュエルソン教授は「世界経済を破滅の淵に追い込んだ金融ビジネスの不始末の元凶は米国金融当局の規制緩和と、悪魔的・フランケンシュタイン的金融工学だ」と言われたらしい。(P.71, 109)
しかし、「金融工学」にも責任はあるが、それだけではないと言う。負の連鎖による結果だと言う。それは、原因となった「クレジット・デフォルト・スワップ」について言えば、
ü 強欲で短期的利益偏重のMBA経営者
ü 返済能力のない人たちに、(破産リスクを無視して)住宅ローンを貸し出した金融機関
ü その債権を証券化し、危ない商品であることを知りながら投資家に売り出した投資銀行(証券会社)
ü これにトリプルAの格付けを与えて、投資家を欺いた格付け機関
ü 安易にこれを購入した機関投資家
同じく、そう思う。「金融工学」を良い方向に導けが、例えば、天候デリバティブ、ハリケーンデリバティブでは、農作物、電化製品、観光業などで、リスクヘッジが可能になる。
生命保険会社には「アクチュアリー」がいる。
「アクチュアリー」とは「将来の出来事の発生確率を評価し、望まれない出来事の発生確率を減らすように知恵を絞り、起こってしまった出来事の影響を軽減することを考える専門家である。つまり、生命保険会社は「金融工学」を知らなければならず、活用する場合には、正しく活用しなければならないのである。
とは言うものの、生命保険会社に勤める者ではあるが、“株価はランダム・ウオークではない(p.129)”、“CAPM(P.52, 179, 112)”、“ベータ公式(P.112, 119)”、“ブラック・ショールズ公式(P.162)”、“デルタ・ヘッジ(P.171)”、“完備市場、無裁定条件、同値マルチンゲール測度”など、同書の中に書かれていたが、なかなか理解は難しい。
もっと勉強しよう!
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