「ぼくはこう生きている 君はどうか」 鶴見俊輔、重松清 著 を読んで
鶴見俊輔氏について知りたいと思い読んでみた。個性的であるが、素敵な方であるように思った。
ここには、アドラーが言うところの「共同体感覚」と同様に「共同体」、「ゲマインシャフト」という言葉が書かれていた。
「ゲマインシャフト」について、情緒の通う「共同体」と書かれていた。
そういうものが1905年までの日本には機能していた、と言う。日本は日露戦争に勝ってから、おかしくなった、日本の「本当の教育」は終わった、と言う。それまでには、坂本竜馬、高杉晋作、横井小楠、西郷隆盛、勝海舟、大久保利通、木戸孝允、乃木希助と児玉源太郎、伊藤博文と井上馨、夏目漱石、森鴎外、長井長義、長岡半太郎、若槻礼次郎と浜口雄幸、無着成恭の「山びこ学校」、渡辺崋山、小村寿太郎、小栗上野介、陸奥宗光、井上成美、など、これらの人々は共同体・ゲマインシャフトにより育った人物達だと言う。
松下村塾、緒方洪庵の適塾、幕末にはそういう私塾から優れた人材が生まれたというのも示唆的であるし、明治維新の時の薩摩の活力は横丁の路地と言う共同体から生まれた、と言う。
一人の人間の育成に必要な周囲の力。
「弱さ」「弱点」の自覚から師弟関係は始まる。
陸奥宗光は「蹇蹇録」を書かれているが、これは、弱い日本がどうしたら列強につぶされないで済むかと言うことを研究したノートである。彼は自分たちの弱さを自覚している。
内村鑑三は、日本よりも、地上の理想国・デンマークについて書く。
「弟子の方、教え子のほうは自分の弱いところを知ることで師を求める。師の方、先生のほうも自分自身の弱さを認めることでその言葉が説得力を持つ。師弟関係というのは、お互いに自信の「弱さ」、「弱点」を自覚することから始まる」。
鶴見俊輔氏の祖父は後藤新平であり、父親は鶴見祐輔(政治家)である。
祖父を抜いたといえるものが一つだけあると言う。それは勲章をもらわない事。祖父は勲章をもらうのが好きでね。どんどんもらっちゃうんだよ、と言う。
バートランド・ラッセルとアインシュタインは協力して原爆反対の座り込みを行った。ラッセル94歳の時。
老年になってからも何事かはできる!と言う。
重松清氏の本もいくつか紹介がされていた。「自分の小説は読者自身の思い出がよみがえるための「呼び水」だと言われていた。印象に残る言葉であった。紹介されていた本は、機会を見つけて読んでみたいと思った。
生命保険会社の人間として、「デンマーク」が気になった。デンマークは社会保障制度において、現在もなお、日本の先を行っている国である。共同体・ゲマインシャフトが、日本の社会保障制度を見直すキーワードなのかもしれない!?
デンマークアクチュアリーも100周年超えている。貢献しているんだな~。
「後藤新平氏」が祖父と言うのも興味深かった。
後藤新平と言えば、優れた医師であり、優れた官僚であり、優れた政治家であり、ボーイスカウトを日本に普及した人でもある。児玉源太郎とも関係がある。
また、ドイツに留学した時に、鉄血宰相として有名なビスマルクが作り上げた「社会保障政策」を学び、逓信相の時に、日本に導入をしようと尽力をしている。当時においては実現できなかったが、簡易生命保険事業の発足を手掛けている。生命保険会社の人間としては、すごいな、と思う。
その中で、勲章好きであり、また、派手好き、大風呂敷とも言われていたところは、ある意味で後藤新平の魅力を高めているように思う。
さあ、もっと勉強しなくては!自己研鑽がまだまだ必要だな~。
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