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2011年1月31日 (月)

「カーライル」 その四 がんばれ!ウイルコム! 自分ももっとがんばらないと!

最後に、カーライルによるMBOを行いながらも、昨年20102月に会社更生法申請を行ったウイルコムについてのドラマは魅かれるところがあった。

PHSを含む携帯電話業界の熾烈な競争を垣間見るようであった。

KDDIが携帯電話に“選択と集中”を推進する中で、20046月、DDIポケットは、カーライルと京セラによるバイアウトが発表された。

200410月、KDDIの子会社であったDDIポケットがMBOにより独立した。買収総額は2200億円。20052月、新しい株主構成はカーライル60%、京セラ30%に加えてKDDI10%の株主となった。DDIポケットはウイルコムと社命を変え、本格的に再スタートを開始する。

最初にPHS業界衰退の理由の一つとして

PHS独自の「マイクロセル方式」という通信方式に起因する。携帯電話の場合は「マクロセル方式」といって、最大半径5キロまでをカバーできる巨大な基地局を建設して地域一体を圏内にする通信方式に基づいている。基地局一箇所の建設には億円単位の設備投資が必要だが、その一方で、基地局の数は少なくて済む。地権者との交渉などの手間を考えると、このようなマクロセル方式は資金さえ続けば、短期間に都市圏全域を圏内にすることが可能な方式だと言える。

一方でPHSの場合、半径500メートルをカバーする小さくて安価なアンテナをビルの屋上に設置しながらエリア全体を圏内にしていく。設備投資のコストは小さいが、アンテナの設置数は莫大である。携帯電話の基地局が一箇所ですむ同じ地域を、PHSの基地局は100カ所のアンテナをカバーすることになる。従ってエリア全体を圏内にするためのスピードは、ビルの所有者などアンテナ設置場所の地権者との交渉や契約にかかる時間がボトルネックになる。

この展開スピードの差がPHSのあだになった。

その中で、DDIポケットは地道に基地局の設置を続けており、2001年頃には都市部においては、ほぼどこでもすぐにつながる状況に達することができた。

さらに、この頃、インターネットビジネスが最初のブームを巻き起こしていたこともあり、ノートパソコンにPHSカードを差し込む形でモバイル通信の手段とするサービスが広がってきていた。このサービスを主に行っていたのが、DDIポケットであった。

しかもニッチセグメントにおけるデファクトスタンダードであった。

その後、ウィルコムは、更に音声定額の導入で劇的に加入者数を増やすことになる。

さらに、さらに、コアユーザーに支持されている通称アドエス(正式名Advanced/W-ZERO3)、宣伝では「縦ケータイ、横パソコン」と呼ばれるシャープ製の多機能PHS2005年に発売している。

普段たたんだ状態ではやや大きめの携帯だが、横にスライドさせるとパソコンのようなキーボードが出現する。しかも、OSにマイクロソフトのウインドウズモバイルを搭載しているため、メールで送られてきたオフィスファイルを開いて見ることもできる。

このようなノートパソコンよりもずっと小さいパームトップのモバイル機器として、アドエスは熱狂的なコアユーザーたちに支持されている。

カナダでは同様の「ブラックベリー」が人気を得ていたこともあり、親指だけではメールを打てない外国人、日本でも苦手な人は多かったのでしょう。人気を得ることができた。

200712月、総務省に対して次世代広帯域移動無線アクセスシステム構築の前提となる2.5ギガヘルツ帯の無線帯域使用の免許取得 

この免許の枠は2つ、「WiMAX方式」のauと「次世代PHS方式」のウイルコムのみにおりた。

ところで、「広帯域無線アクセスシステム」とは、どこに居ても使える無線LANだと思えばよい。

外出先で、ノートパソコンで仕事をする方が、インターネットに接続して情報をとろうとしたら方法は2つだろう。PHSカードを使うか無線LANを使うか。前者はどこでも使えるがスピードが遅い。後者はスピードは速いが、駅の一部や契約のあるカフェなどにある指定されたホットスポットに出向かないと使えない。

ところが広帯域無線アクセスが実現すると、どこにいても高速でインターネットにつながる時代が来るとある。

WiMAX方式」はマクロセル方式、「次世代PHS方式」はマイクロセル方式となる。

この次世代の趨勢が分かる時期、ウイルコムの予測では2015年であった。

ところが、それには多額の資金が必要であったこと。

そして、ウイルコムの優位性であった、音声定額がソフトバンクのホワイトプランで風穴を開けてきた。

さらに、ソフトバンクは、広告宣伝の投入規模、新規機種の発売ラインナップの充実ぶりでは、資金投入規模が巨大な戦略として遂行をしてきた。

この事実をカーライル・グループ、ウイルコムは冷静に受け止めて、忍耐強く前向きに戦線を立て直そうとしてきたが・・・

この本では、それでも希望を持って前向きに将来を切り開いていくというところで終っている。

ところが・・・

ウィルコムの契約者増減数は、ソフトバンクのサービス開始半年後の20076月に+2万、7月に+1万と明らかな鈍化を見せ、20078月には20042月以来3年半ぶりに純減になる。

その後、契約者数は20097月まで停滞することになった。

そして、

20099月、事業再生ADR(産業活力再生特別措置法所定の特定認証解決手続き)を申請した。

これは、ウィルコムが抱える債務の返済期限を延長してもらえるよう、関係各者と調整を図るための手続きだった。ウイルコムは「(高速無線通信方式の)XGPを展開する上で、開発投資や設備投資と既存サービスの両立に多少無理があった。ADRの申請がマーケットに影響し、会社更正手続きに至った」と説明する。

企業として事業の維持や再生を目指す手続きとなる。米投資ファンドのカーライル、京セラ、KDDIも保有株式を100%減資して、株主責任をとることとなった。

20102月、会社更生手続き開始

20108月、ソフトバンクとスポンサー契約

201010月、更生計画案提出

とてもストーリーのある戦略であったと思うのですが、現在はソフトバンクの資金力で対応をされているようです。でもこれからも考えに考え抜いてがんばって欲しいと思いました。

自分ももっと自己研鑽をして社会貢献できるようにがんばりたいと思いました。

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