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2011年1月30日 (日)

「カーライル」 その二

1993年、赤字転落したIBM2002年末まで在籍)を立て直し、それを「巨像も踊る」という本にも書かれたルイスガースナー氏が、2008年にカーライル・グループというプライベート・エクイティのトップの座に就いた。

ルイスガースナー氏、今はすでに退任をされていましたが、その「カーライル」とはどのような会社なのでしょうか?

本の内容は「カーライル」という会社の宣伝的な内容にも少し思えましたが、あまり知らなかった「投資ファンド」のこと、そして、今は残念ながら会社更生法を申請することとなってしまいましたが、PHSで有名なウイルコムの約10年の軌跡が分かり、大変興味深い内容でもありました。

最初にルイスガースナー氏が登場、ルイスガースナーの座右の銘が出ておりました。それは、

「机上は世界を議論するには最も危険な場所である」

ジョン・ル・カレ 「スクールボーイ閣下」より、英語では、次の通りです。

A desk is a dangerous place from which to watch the world.

-- from The Honourable Schoolboy (Le Carr 1977: p. 84).

自分自身も「現場主義」を大切にしたいと考えていますので、これもよい言葉だと思いました。

映画”踊る大捜査線”でも、「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ~」ってありましたね。

更に、もう一つ

「人間には4つのタイプしかない。何かを起こす者。起きた何かに翻弄される者、起きたことを傍観する者。そして何が起きたかに気づかない者である」

これはどうでしょうか?

「何かを起こす者」と「起きた何かに翻弄される者」だけで“起きたこと”を全て対処できるのでしょうか?

少し疑問に感じました。

また、ルイスガースナーはIBMの立て直しにおいて、“大リストラ”を敢行されています。

ビジョナリーカンパニーで著名なコリンズ氏は、第5水準(最高水準)のリーダーは(ほとんど)リストラをしないと言われています。

話を、この本のメイン「プライベート・エクイティ」に戻します。

「プライベート・エクイティ」は、生命保険や年金などの機関投資家から資金を預かって、主として未上場株や不動産を始めとする非市場性の商品に投資を行うファンドである。

非公開商品に投資するファンドという意味である。

「プライベート・エクイティ」の投資する商品は短期で売却利益を得ることがほとんどの場合不可能である。そのため、プライベート・エクイティはファンドの中でも中長期投資のスタンスを持つ。

プライベート・エクイティのMBOへの参加目的は、経営陣を支援することによって企業価値が高まった株式を最終的に売却することにある。最終的にプライベート・エクイティは、その保有株式を長期投資の後に必ず売却し、回収資金を機関投資家を中心とする出資者に還元する。その長期とは、通常は3~5年程度の期間だと考えた方がいい。5年というのは経営にとっては長期であるから、併走期間の意思決定は長期的視点に立って行われるのだが、それでも最後にはパートナーシップが終わる日はやってくる。

では、双方の成功の後にいずれ訪れる株式の売却において、経営陣から見ればどのようなエグジットの形態が理想てきなのだろうか。

理想的なエグジットには、2つのケースがある。ひとつは、再上場を含む上場というエグジット、もうひとつは、新たな企業グループへの参加(資金供与のために傘下に入る)という結果であろう。

また、一般にファンドが出資を検討する際には、“デュー・デリジェンス”という会社事業価値の精査のプロセスが行われる。

“デュー・デリジェンス”のプロセス(客観的証明が求められ、仮説では投資しない)を経て、MBOを手段として資金調達が為される。

通常、MBOの最大のボトルネックとなるのは、経営陣と従業員の意欲である。 

経営陣と新たな株主とのギャップを粘り強く埋めていくこと。新株主はそのギャップを受け止め、業界固有の知識を柔軟に理解し、認識が間違っていたと理解すれば速やかに判断を変えていくこと。ガバナンスを司る取締役会は、こうして徐徐にチームとしての能力を向上させていったのである。

次に、TOBによる株式の非公開化を宣言する

TOB

英語のtake-over bid の頭文字をとった略称で、「株式公開買付」のことです。すなわち、ある企業の株式を大量に取得したい場合に、新聞広告などを使って一定の価格で一定の期間に一定の株数を買い取ることを表明し、不特定多数の株主から一挙に株式を取得する方法のことです。
利点として、市場で大量に株を買うと価格が上昇してしまいますが、TOBは公表した買付価格で買うため、資金計画が容易になります。
又、期限までに買付予定数の株式が集まらなかった場合は、株券を返却してキャンセルすることができますので、買付に失敗した時のリスクを抱えません

MBOManagement Buyout、マネジメント・バイアウト):

現経営陣の主導により、会社の株式や資産を取得して独立すること。

経営陣の提案による株主交代である。

現経営陣と従業員がそのまま事業を継続するため、既存の資産や顧客基盤などが活用できる。

MBOはどのような場合に経営陣の選択肢になりうるのか

親会社の制約からの解放

○子会社の独立

○事業部門のスピンオフ

上場によるデメリットからの解放

○上場企業には中長期視点に立った大胆な改革を伴う非連続的成長の実現

M&A

・ガバナンス強化

・海外展開

オーナー企業における事業承継に対する抜本的対策

○創業一族の株式の散逸対策

○キャッシュアウト機会の提供

○資本構成の再構築

MBO180日が勝負と書かれている。

最後に、企業に投資するファンドのカテゴリーを整理しておこう。

カテゴリー

主な投資対象

コンセプト

主に上場株式に投資

投資信託

上場株式、債券等

概して、「物言わぬ」投資家として、値上がり益、利子・配当等によるリターンを追求

ヘッジ・ファンド

上場株式、債券等

物言わぬ投資家として金融市場での資金運用を通じて収益を上げるファンド

市場間または金融商品間のアービトラージ(ロング&ショート<空売り>)を多用

LTCMが該当

アクティビスト・ファンド

上場株式

投資リターンを確保するために、「物言う投資家」として、現金配当や自社株買いを投資先会社に要求

現株主が経営陣の言動を信用しなくなっている時に、このファンドがつけいる着眼点が存在する。つまり、経営環境が難しい時代になると勢いを持ち始める

※村上ファンド、スティール・パートナーズが該当 

プライベートエクイティファンド

バイアウト・ファンド

株式や事業部門取得を通じて「ビジネス」に投資

会社経営陣と共に潜在的な企業価値の具現化または新たな価値の創出によって投資価値の増大を目指す

ベンチャー・ファンド

創業間もない会社の株式

投資先会社の自発的成長のポテンシャルに賭ける

ディストレスト/事業再生ファンド

不良債権や倒産企業株式

倒産企業の債権または株式を安価で取得し、ターンアラウンドでリターンを確保

※ダイエーや鐘紡は国の再生ファンドによる再建の成功事例である

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