「春宵十話」-岡 潔 著 を読んで
教育関係にたずさわれている酒井穣氏(お気に入りにある“NED-WLT”のブログ管理人でもあります)が紹介をされており、また著者が数学者ということもあり、少しは数学をやってきた者としても興味が湧き読んでみました。
いろいろと多くのことが書かれており、自分自身には少し難しく感じましたが、「数学」について書かれていたところは、何となく気になりましたので、そこの辺りを中心に書いてみます。
・人の中心は「情緒」である。
・数学とはどういうものかというと、自らの「情緒」を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つであって、知性の文字盤に、欧米人が数学と呼んでいる形式に表現するものである。
・私は数学なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレはただスミレのように咲けばよいのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えてきた。
・職業に例えれば、数学に最も近いのは百姓だといえる。種をまいて育てるのが仕事で、そのオリジナリティーは「ないもの」から「あるもの」を作ることである。
数学者は種子を選べば、あとは大きくなるのを見ているだけのことで、大きくなる力はむしろ種子の方にある。
・数学の本質は調和の精神である。数学の本質をよく見ようとするのであれば、もっと調和が良く分かるようにしなければなりません。それにはよい芸術を見せるのがよいのです。
・数学の教え方としては「よく見極めて迷うところなく行い、十分よく調べて結果が正しいことを信じて疑わぬ」ようにさせるのがよい。
・これから数学をやりたいと思っておられる方に何よりもまず味わっていただきたいと思うのはアンリ・ポアンカレーの「数学の本体は調和の精神である」という言葉です。ポアンカレーは1912年に亡くなりましたが、彼が数学界を代表した頃になって初めて数学自身は、自分というものはこういうものだという自覚に達したといえましょう。
情緒ある調和のとれた方であると思いましたし、天才であるとも思いました。
例えば、フェルマーの最終定理はシンプル(もちろん証明内容は分かりません・・・)で分かりやすいですが、本著には出てくるポアンカレーが予想した問題も有名ですが、これは証明しようとする問題そのものが何を言っているか、正直よくわかりません。
この本では、数学以外にも、「教育について」、「将来の日本への心配」、「世界への不安について」、が書かれています。著者、約半世紀前の1962年、62歳のときになります。戦後の復興期であり、これから高度経済成長を迎えて躍動していこうとする時に、その当時の日本を「動物的」であると心配されている。もし著者が今の日本を見られたならば、どのように思うのでしょうか・・・卒倒するかもしれませんね。
著者は、当時 アインシュタインが来日するということなどの影響で、当初は物理学科に入ったが、数学の問題が解けたときの喜び、たのしさ、そして恩師との出会いにより数学科へ移られたと書かれていました。ここだけは、自分が数学を志向した理由と同じでした。m(_ _)m
自己研鑽を継続し、少しでも多く社会に貢献できるようにしていきたいと思いました。(*^.^*)
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ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな
本文
≪…「ないもの」から「あるもの」を作ること …≫から、岡潔と犬の写真の連想で、「数学が見つける近道」マーカス・デュ・ソートイ著 富永星訳に、【 犬は微積分学をするのか? ・・・自然は最適解を出せる者をひいきにする。・・・ 】 とある。
また、≪…鬼滅の刃…≫の本歌取りの替え歌などから、[言語の本質」のオノマトペで、[言葉の量化]と[数の言葉の量化]を数学の基になる自然数について、大和言葉の【 ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と 】からの送りモノとして眺めると、[コンコン物語]になるとか・・・
[言語]と[数の言語]の最適解を求めて・・・
投稿: ヒフミヨ巡礼道(岡潔数学体験館) | 2024年5月 6日 (月) 20時29分
コメントをいただき、どうもありがとうございました!
m(_ _)m
投稿: adler | 2024年5月19日 (日) 20時43分