年金2-平成17年度より
GW、年金2を勉強してみました。
平日は、毎日午前様の状態のため、チョロチョロしかできませんが、ちょっと集中してみました。
平成17年度の過去問より、公的年金制度のあり方について
(1)公的年金制度の目的・機能を述べよ
解答より、次の通りとのこと。
m 老齢、障害、生計中心者の死亡等による稼得能力の喪失または減少の事態に対し、国民(加入者)が共同してそれを補填し、一定の所得を保障すること
m 稼得能力の喪失又は減少に対する不安・リスクを軽減し、生活を安定させること
副次的な機能として次のような事項が挙げられる。
m 階層間、世代間の所得の再配分、移転、平準化
m 私的扶養、親族扶養から社会的扶養、世代間扶養への転換
m 労働者の保護、労働力の保全
優秀で健全な人材が安心して働くことができ、労働の生産性の向上、企業・経済の発展に寄与
m 保険料の納付を通じた余剰通貨の回収
インフレの防止、資本の蓄積によって経済の発展に寄与
m 積立金の運用による効用
財政投融資による社会資本・生活基盤の整備、市場運用による株式市場・金融市場の活性化
m 年金給付による消費活性化
景気を支え、経済の発展、生活の向上に寄与
m 保険料負担の影響
企業にとって経営の圧迫要因となり、国際競争力の低下、経済の衰退に繋がる。個人にとっては可処分所得が減少し、消費の減少、生活の低下に繋がる。
m 財政負担の影響
財政負担の増加が国家財政を圧迫し、財政赤字の増大をもたらす。
(2)前記の目的・機能を果たすため、公的年金制度の設計、運営等において具備すべき要件について論ぜよ。
解答を参考にしながら、論じるようにしてみました。批評を仰ぎたいです。
公的年金の目的・機能を果たすための要件の例としては、
1. 国家の責務として、法律に基づき強制加入の制度とすること
2. 全国民に適用すること
3. 給付(給付水準、給付要件)の妥当性、有効性、確実性
4. 保険料負担の妥当性、可能性、公平性
5. 給付と負担の世代間、男女間、職業間(職種と有無)、所得階層間公平性
6. 財政の長期的安定性(財政収支の相当均衡)
7. 制度の長期的な持続性(永続性)
8. 経済諸要素の変動への耐性
9. 実施、実現が可能
などが挙げられる。それぞれの要件は互いに相反する場合もあり、全てを満たす制度はありえない。
そのような状況下、必要とされる要件をどのようにバランスさせた制度設計、制度運営とすべきか?
歴史的な経験から、「自由市場経済体制」が我々の生活レベルを効率的に向上させてくれる経済体制であるという認識は基本的な支持を得ているといえるであろう。
しかしながら、歴史が繰り返し示してきたように、すべての経済活動を自由市場に任せてしまうと、「貧困」や「環境破壊」という問題が現れてくる。
貧困の要因には個人の自助努力では回避できないかたちで発生するものがあることを認識されてきた。
そこで、公的年金制度では、政府が自由市場に介入し、市場における活動の一部に制限を加えることにより「貧困を防止」する動きの一環として導入されたものである。これは国際的な傾向でもある。
人生における経済リスクを社会全体で支えると「防貧」が可能であることに人類は気付き始めた。
「救貧」から「防貧」へ
もともと若い世代は、老後の年金に対して関心が希薄である。まずは目先のお金が重要で、老後の生活に関心が低いのは若者の特徴でもある。そこで、保険料を支払いたくないとも考えている。
パターナリズム
老後の備えについては、高齢になってからそれが不十分であると気付いた時には既に挽回が不可能になっているという過酷な側面がある。この過酷さを回避するために、国が個人の生活に介入して、若い時から強制的に収入の一部を老後に備えるべく消費させない制度が、公的年金制度として考案されたところである。若齢期にはお節介と映るかもしれないが、高齢期を迎えたときに安心と理解がもたらされるこのような国の介入は、「パターナリズム」と呼ばれることがある。
国の介入は、別の効果も有している。憲法第25条に定められているように、すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有している。従って、国としては、老後の備えができなかった人にも、何らかの生活扶助を行う必要がある。しかし、その扶助を行うための財源は国民が負担する。
人々が努力せざるを得ないようにする制度的仕組みを、経済学ではコミットメント・デバイス(約束を守らせるための装置)と呼ぶ。
寿命や物価上昇等の長生きに伴う経済的不確実性に対処し、また、老齢期の生活のための備えが手遅れにならないようにすることにより、老齢による貧困の要因を除去することなどを「目的」として、公的年金制度が導入されているといえる。
自らの余命の予測、インフレーションへの対応、運用利回りの予測というテーマは自助努力の範囲を超えており、予測を超えて費用が必要となった場合には、高齢になっていることもあり、挽回はほぼ不可能である。このリスクを回避するために、公的年金制度が必要になる。
終身にわたり年金額の実質的な価値を保ちながら支給されること
「社会保障制度たりうる年金制度」という視点から、すべての国民が何らかの形で公的年金制度の適用を受けていることが望ましい。
社会保障制度としての年金制度と呼ばれるためには、従来国民各階層に対してばらばらに実施されてきた各種制度に対して、統一化・統合化や調整が進められ、同時にそれが全国民にもれなく、公平に行きわたるように措置されていることが必要である。
昭和25年に公表された社会保障制度審議会の「社会保障制度に関する勧告」にも、公的年金制度はすべての国民を対象とすべきであることが謳われている。
「国民皆年金」へとなっていき、国民年金制度は昭和36年4月から施行された。
公的年金の一元化
社会保障制度としての年金制度であるためには、ほかの同様の制度とあわせて、全国民に普遍的に適用される制度であるとともに、制度間で公平化が図られていなければならない。「国民皆年金」の実現後は制度間の公平性に着目がなされた
少子化対策
少子化が続けば、いかなる年金方式を採用しても財政は不安定になる。現役世代の人数が減少したら、一人当たりの保険料はますます上昇することになる。それを少しでも和らげようとすれば給付抑制が不可避になると考えている。
現在の日本社会は、莫大な財政赤字の累積、少子高齢化、貧困の拡大という課題に加えて、世界的な大不況までもが襲ってきている状態である。
社会保障制度改革は、すでに給付を受けている人を保障しつつ、新しい制度が継ぎ足されていくため、短期で問題は解決されない。いまよりもベターなものになるように、少しずつリフォーム工事をしていくという根気が必要になる。
「みんな得する改革」「抜本改革」ということは無く、地道で粘り強い改革こそが求められるであろう。
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