年金2 続き
「税方式」か「社会保険方式」か、を考えるに辺り、
Actuaryjpさんのアドバイスに基づき、論点を絞りながら、一つずつ進めていきたいと思います。
「社会保障制度としてどう位置づけるか。」 その一つとして、
まず、最初に、「国民皆年金とすべきか?」を考えておきたい。
結論としては、「すべき」と考えています。
国民年金制度の目的
国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項(国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない)に規定する理念に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
この目的より、国民年金は強制加入が原則となっている。
しかし、保険料を支払わなくても実質的には見逃される(支払わなければ、年金をもらえないだけと放置される)という、事実上の任意加入制度となっている。
現在、生活保護を受けている高齢者の約50%が無年金者と言われている。
その原因は、年金保険料の未納。
いろいろな理由は考えられますが、「パターナリズム」によって、改善できる可能性はあると思います。
パターナリズム
老後の備えについては、高齢になってからそれが不十分であると気付いた時には既に挽回が不可能になっているという過酷な側面がある。この過酷さを回避するために、国が個人の生活に介入して、若い時から強制的に収入の一部を老後に備えるべく消費させない制度が、公的年金制度として考案されたところである。若齢期にはお節介と映るかもしれないが、高齢期を迎えたときに安心と理解がもたらされるこのような国の介入は、「パターナリズム」と呼ばれることがある。
また、他の国の保険料未納対策について。
皆年金のスウエーデンやアメリカでは、国税庁が税金と保険料を一体徴収するので、もし支払わなかったりしたら、脱税と同等の罪に問われ、収監されることもある。大変厳しい未納対応をしている。
ドイツやイタリアなど大陸欧州の国では、皆年金をとっている国は多くはない。従って、年金を支払わなくても年金空洞化という騒ぎにはならない。しかし、日本と同様に無年金者の問題が生じているとのことであった。
お節介としてのある程度の強制力は必要なのかもしれない。
また、「社会保障制度たりうる年金制度」という視点から、すべての国民が何らかの形で公的年金制度の適用を受けていることが望ましい。
社会保障制度としての年金制度と呼ばれるためには、従来国民各階層に対してばらばらに実施されてきた各種制度に対して、統一化・統合化や調整が進められ、同時にそれが全国民にもれなく、公平に行きわたるように措置されていることが必要である。
少なくとも元気なうちは、生活保護とはならない、それ以上の生活水準を維持できるだけの社会貢献の機会を備えた社会であることが求められると思います。
小さくてもいい、夢や希望が持てなければ、国民のモチベーションは上がってこないかもしれません。
ここで、駒村氏は、ワーキングプアへの処方箋として、能力開発の機会提供とキャリアラダーを提唱されている。
「キャリアラダー」とは、一種の資格制度であり、介護・看護・保育といった専門職は、細かく規定された資格をこまめに取得することにより、キャリアを引き上げ、それに応じて賃金が上昇するようにする。
これは、製造業でも導入可能ということらしい。企業横断的なキャリアアップの仕組みと考えられている。
まずは、人手が不足、今後ますます不足が考えられる、介護、保育、看護といった公的な財源に支えられている分野に誘導する必要があり、政府は資格取得と資格取得期間中の生活費の支援をおこなうべきである、とされている。
今後、少子高齢化がますます進む中で、重要視されてくる職種だと思います。
それが、「キャリアラダー」によって、魅力が向上するかは、もう少しいろいろな意見等を聞いてみたいのですが、これらの職種を注目する機会を増やしていくこと、働く意欲を向上させるインフラを整備することは必要だと思います。
「国民皆年金」に関する各著者のコメント
細野氏は「国民皆年金」を肯定されているようです。以下、抜粋。
国民年金は「税金」から半分支払われている中で、国民年金の保険料を払わないと、逆に税金の「払い損」になってしまうような仕組みになっているのです。
つまり、国民皆年金のもとで、年金の保険料を払うのは「国民の義務」というよりも「国民の権利」に近い。
保険料を払わないのは「自己責任」であって、国は「そこまで面倒見きれないよ」と突き放した姿勢をとることも可能なのです。
保険料の支払には、所得に応じて「4段階」の「免除制度」があることを説明されていた。
まずは、「国民年金」を分かりやすく説明していくことで「未納者」を減らしていくことが国の政策としては極めて重要である、と。
駒村氏も「国民皆年金」を肯定した「年金対応策」を講じておられる。
鈴木氏は、「税方式」の考え方ですので、それにより、国民皆年金は自動的に達成される考え方である。
次は「生活保護」との関係を確認しておきたい。
いくつかの論点を明確にしていくことで、「税方式」か「社会保険方式」か、の考えを明らかにしていきたい。
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