ビスマルクと社会保障制度について
少し調べてみましたので、整理しておきます。
「福祉」とは、「公的配慮によって社会の成員が等しく受けることのできる安定した生活環境」とあります。 また、国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(生存権)を保障している日本国憲法第25条には「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と記されています。 福祉は国から国民に等しく与えられる「権利」であることを意味してそうです。 最初の福祉は「貧しい人のため」 『社会保障論(第5版)』 (中央法規、2007)。では社会保障が生まれた理由の一つとして「イギリス等のヨーロッパの慈善事業と救貧法(Poor Law)」を挙げています。 「救貧法」の正式名は「エリザベス救貧法(旧救貧法)」と言います。徳川幕府が開かれたのとほぼ同じ時期の1601年、イギリスのエリザベス1世のもとで制定されました。 同法はさまざまな理由で生計が立てられない人々を人道的に救済することを目的としています。 社会福祉の歴史は「貧しい人を救うこと」から始まったのでした。 福祉の考えは「貧しい人を救う」から「貧しくなるのを防ぐ」へ
貧困層の実証的な研究が進みます。こうして、貧困は困窮者自身の問題であるという考え方から、労働条件や社会制度といった国の社会政策の問題である、という考え方に変化していきました。 こういった考え方は、貧困の状態に陥らないための予防的な手段ですから「救貧」ではなく「防貧」と呼ばれます。 社会福祉の歴史は、「救貧」からはじまり、「防貧」という大きな流れになって現在まで続いているわけです。 この考え方を政策としてはじめて実現させたのが、ドイツ帝国の宰相ビスマルク(1815/4-1898/7)です。世界史の教科書で「鉄血宰相」とか「アメとムチ」というような言葉をご記憶の方も多いと思います。ビスマルクは1883年の疾病保険にはじまり、災害保険や養老及び廃疾保険などを次々に法制化し、1889年には年金保険が導入され、現在の社会保障制度に大きな影響を与えました。 鉄血宰相ビスマルク 現在の大問題(=ドイツ統一)は、演説や多数決ではなく、鉄(=大砲)と血(=兵隊)によってこそ解決されるいう演説を行い(鉄血演説)、以後「鉄血宰相」の異名をとるようになった。 ビスマルクの名言 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。」 愚か者は、自分の経験から学ぶと信じている。私は最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶ事を好ましいと判断する。という意味です。 鉄血政策を大きく進め、その一方で国際的に良好な関係を作る事に腐心し、イタリア・ロシアに接近し、オーストリアと同盟を結び、同盟関係を背景に1864年に「デンマーク」と争い、勝利してシュレースヴィヒ=ホルシュタインを奪った(第二次シュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争)。この時の陸軍参謀総長は(大)モルトケであり、これ以降も政治・外交のビスマルクと参謀総長のモルトケのコンビは、対立しつつも活躍することになる。 ビスマルクは、戦争はしたが、彼の残した足跡から、類まれなるスゴイ人物ではある、と思います。 その後、ビスマルク(80歳)1888年、ビスマルクが長年仕えたヴィルヘルム1世が死去する。息子のフリードリヒ3世が跡を継ぐが3ヶ月で死去し、その息子の悪名高き?ヴィルヘルム2世が跡を継ぐ。この若き皇帝は、1890年にビスマルクを解任している。
1889年にビスマルクにより創られた年金保険の保険料、戦費調達のためとも言われていますが、時間軸で照らしてみると、おそらくヴィルヘルム2世(その後、ヒットラーへと続く)によって浪費されたように想像しています。 ざんねん。 日本の労働者年金保険制度(現在の厚生年金保険制度)も1942年(昭和17年)という、戦時下に誕生をしている。 きっと、似たところはありますよね。 次に、日本の年金の歴史について、深めてみたい。
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