「社会保険方式」でまとめてみました
未納は問題であるが、現行の「社会保険方式」の改善による視点で論ずる
現行の基礎年金制度は当年度の給付に要する費用を現役世代が負担していく制度であるから、現役世代において負担を逃れる者があることは社会連帯の意味においても問題があるといわざるを得ない。
保険料の未納は将来の自らの年金額の減少を招くというペナルティがあるもののそれは遠い将来に発生することであり、負担する現段階において負担する者としない者に差を設けることができないことは、現行制度の課題と言える。
これは、社会保険制度における国民年金が実態的に自主納付制度になっていることに起因する問題である。
現状の社会保険方式は、拠出が給付の条件であることが基本で、自助努力の要素を取り入れた仕組みとなっている。制度的には強制徴収の仕組みが設けられているものの、事務負担等の問題から国民年金の保険料の強制徴収はほとんど行われていないのが現状である。
そこで、「パターナリズム」として、ある程度の強制力としての「お節介」が必要なのだと思う。
老後の備えについては、高齢になってからそれが不十分であると気付いた時には既に挽回が不可能になっているという過酷な側面がある。この過酷さを回避するために、国が個人の生活に介入して、若い時から強制的に収入の一部を老後に備えるべく消費させない制度が、公的年金制度として考案されたところである。若齢期にはお節介と映るかもしれないが、高齢期を迎えたときに安心と理解がもたらされるこのような国の介入は、「パターナリズム」と呼ばれる。
皆年金のスウエーデンやアメリカでは、国税庁が税金と保険料を「一体徴収」するので、もし支払わなかったりしたら、脱税と同等の罪に問われ、収監されることもある。大変厳しい未納対応をしている。
日本でも納税との2度手間とならない「一体徴収」ができれば、それほどの負担にはならないと思える。
全てを税方式とする考え方もある。例えば、消費税の年金目的税化がある。
すでに平成21年度から、年金の国庫負担の割合が3分の1から2分の1に引き上げられている。
一方で、年金だけでなく、医療、介護についても、今後の支出増が想定されている中で、その国庫負担の財源をどこに求めるのかという問題は大きい。
今後、どのような改革を進めても、消費税は少なくとも10%程度に引上げる必要があるといわれている。
また、全てを税方式とした場合、これまでの社会保険方式による納付済み期間との連続性を図ることがある。過去期間をすべて無視して新しい制度を導入することについては、ほとんどの者の大きな抵抗を受けるものと想像される。逆に、新しい制度による給付に過去期間の納付済み期間分の上乗せ給付を行うことも考えられるが、場合によっては倍近くの給付を行うことになりかねず、財政的な問題が大きくなることが想像される。
また、ここには、多大な事務負担、多大なシステム改修費用が発生することが見込まれる。
そこで、消費税率の引き上げ幅も大きくなることが想像されるが、消費税率を引き上げる場合においては、段階的に実施する必要があり、低所得者に対する配慮も欠かせない。
社会保障国民会議シミュレーションにおいて、基礎年金を税方式化として場合には、勤労者世帯や年金受給者世帯の負担が増え、一方で企業側の負担が減少することが示されている。
消費税の滞納をどのように防ぐかも問題になる。保険料の場合と異なり、消費税の負担は必ず行われるが、負担された消費税が必ずしも国庫へ納められないとなると、不当な利益を得る者が出現することとなり、今の制度よりも大きな問題となることが想定される。このため、滞納に関して必要な措置を講じることが望まれるが、現在よりも実行性の高い仕組みを導入することは難しいのではないかと思われる。
消費税の滞納は、税方式、社会保険方式どちらにも言えるかもしれませんが、消費税に対する国民の理解が得られる方法を選択しなければならないことを物語ってもいます。
そこで、国民年金に加入することの大切さ、そして魅力を向上させることを考えていきたい。
厚生年金では、平成16年の制度見直し以降、平成20、21年度の2年間は、被保険者数を、減少させているが、加入事業所数は、平成16年以降、僅かずつかもしれないが増加を続けている。
例えば、国民年金の保険料を納めていない人は、将来、国から1円も年金をもらうことができないこと。一方で、年金支払財源となっている消費税を支払っていることで、消費税の「支払損」となっていることを理解してもらう。
公的年金制度の仕組みを理解してもらう。そのような機会も設けていく。
公的年金制度は、高齢者に対する年金の支給に要する費用をその時の現役世代の負担によって賄う「賦課方式」を基本としつつ、一定の積立金を保有しそれを運用することにより、将来の受給世代について一定水準の年金額を確保するという財政方式のもとで運営されている。
年金制度がなかった時代、または未成熟であった時代は、高齢となった親の扶養は、家族内等の「私的扶養」を中心として行われてきたが、わが国の産業構造が変化し、都市化、核家族化が進行してきた中で、従来のように私的扶養だけで親の生活を支えることは困難となり、社会全体で高齢者を支える「社会的扶養」が必要不可欠となってきた。公的年金制度は、こうした高齢者の「社会的扶養」を基本とした仕組みである。
公的年金制度は、高齢期の生活のかなりの部分を支えるものとして、極めて重要な役割を果たしており、現役世代にとっても、公的年金によって、親の経済的な生活の心配をすることなく安心してくらすことができるようになっている。
とても大切な仕組みであることを理解してもらう。
また、国民年金自体にある「障害基礎年金」など機能の認識、さらに「国民年金基金」、「付加年金」など、国民年金の魅力もより広く伝えていくようにする。
また、年金記録問題が起こることの無い、安心できる、信頼できる年金制度として認識してもらえるようにしていく必要もある。
以上のように、公的年金制度について、課題はあるものの、“とても大切な制度”であることの理解を深めること。一歩踏み込んで、大人になる前から、理解を深めていくように「教育内容」に取り込んで、小さい時から関心を持てるようにすることも必要であるように思う。
最後に、「社会保険方式」、「税方式」でも残る問題が、生活保護との関係が残ることになる。
駒村氏は、本来、生活保護は失業などの「短期的な緊急事態のための制度」として、年金は高齢者向けの長期にわたる所得の保障という考え方のもと、「短期が生活保護、長期が年金」という役割分担を想定してきたが、いま、年金と生活保護の整合性が失われ、役割分担が崩壊しつつあると言われている。
一体で仕組みの検討が必要である。
どちらの方式でも、一度にすべてを解決できない以上、負荷のできる限り少ない方法、今の「社会保険方式」を一つ一つ改善していくことが良いと思っています。
参考) 生活保護と年金
http://life-insurance2.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-205e.html
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