「流星ワゴン」 重松清 著 を読んで
何気なく子供の本棚から手にとって、借りてしまった本です。
重松氏の本は、たいへん読みやすく、登場してくる人物も心根は優しい人ばかり、読んでいると心が落ち着くように感じます。
この本では、「中高年男の悲哀」を感じるストーリーではありましたが・・・・
この本の主人公は、リストラされた中高年、家庭もやばくなり、何もかも投げ出そうとしていた永田一雄さん、38歳。
そして、主人公の前に、38歳の姿で現れる永田一雄の父、「忠さん」。
5年前に33歳のとき、ワゴン車で交通事故死して、幽霊となってワゴン車に乗って現れる橋本義明さん。
・・・このワゴン車がホンダのワインレッド色のオデッセイで、本の題名でもある「流星ワゴン」。
皆さん、中高年のお父さん達である。
ちょっと若い気がしましたが、重松氏が36歳のときの作品としては、この辺りの世代にしたかったようです。今だと、同じ年代でイチロー選手や松井選手ががんばっていますので、もっとやばいのは、40代後半から50代の世代。自分の世代ではないかな、と思いました。
それでも、この本の内容、今も全く古さを感じさせませんでした。
なぜだろうか?
この本が書かれたのは、重松氏36歳のときとあり、1963年生まれなので、1999年になります。
平成10年(1998年)に自殺者が初めて3万人を超えています。前年からの約8千人増による悲しい記録です。
急増したリストラにより、50代中高年の自殺者の急増が原因と言われています。
その後、毎年3万人の自殺者が、今もまだ続いています・・・・・
戦後初の生命保険会社が破綻したのも、この前年となる1997年、その後、生命保険会社の破綻、吸収合併は今も続いています。
不況は続いており、会社は生き残りをかけて、リストラが継続されているから、今も古さを感じずに読めるのかな、と思いました。
複雑ですね・・・・
それでも物語の最後では、わずかかもしれないけれど「希望」を持って前に進んでいこう、となって終わります。
自分を含めた中高年のお父さんたちに、いつからでもやり直せるヨ、とエールを送っています。
同じく疲れ果てた中高年ですが、まだまだなんとか、なんとかと粘ってみますか。
« 「破天荒! サウスウエスト航空 驚愕の経営」 を読んで | トップページ | 家庭訪問 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 瀬戸内寂聴さん(1922年5月15日~2021年11月9日、享年99歳)が51歳で得度される前年に出版、40歳から50歳までに書きためられたエッセイ「ひとりでも生きられる」を読んで(2025.03.16)
- 瀬戸内寂聴さん、70歳のときのエッセイ「孤独を生ききる」を読んで(2025.02.01)
- 瀬尾まいこ氏の著書は「あと少し、もう少し」、「図書館の神様」に続く、約6年ぶりの3冊目、2019年の本屋大賞にも選ばれた「そして、バトンは渡された」を、試験後の癒しとして読んでみました~!(2024.12.21)
- 岩波文庫「読書のすすめ」第14集、岩波文庫編集部編。非売品。最近、読書量が減っているので、薄いけど面白そうでしたので、古本屋さんで200円でしたので、買って読んでみました!うん、面白かった!!(笑)(2024.12.01)
- 新型コロナ禍の2020年6月から2021年6月末まで、朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載された、小池真理子著「月夜の森の梟」が文庫化されたので、一気に読んでみた~!(2024.02.16)
コメント