「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス著 を読んで
今回のプロジェクトに“コンサルタント”として入られていた20代の方がいました。 (若い!)
コンサルタントになるのに、学校では何を専攻されていたの?と言う話からだったと思います。
「心理学」ということでした。
コンサルタントの専攻として「心理学」は珍しいのでは?と思い、「どうして心理学を専攻されたの?」と思わず聴いたところ、
高校時代に「アルジャーノンに花束を」を読んで感動し、心理学を専攻されたということでした。
著者ダニエル・キイス氏は心理学専攻。 物語の中でも、心理学部の教授としてニーマー先生が登場しています。
また、この物語自身も「心理学」を取り入れた内容だと思います。
物語は、知的障害のあるチャーリー・ゴードン(32歳)が主人公。
そのチャーリーが、ビークマン大学の精神科で脳外科手術を受けて、完璧な天才になり、そして、また元に戻っていく。その間、僅か六ヶ月程度。
急に大人になった知能、さらに完璧な天才の知能となったチャーリーが、大人になれていない“精神”の方は追いついていけずに巻き起こるいろいろな出来事に焦り、悩み、葛藤することとなる「心」の物語だと思います。
また、どちらのチャーリーが幸せだったのか、とも投げかけてきます。
神に授かったままの元のチャーリーがよかったのか。それとも、誰も追いつけなくなる程の完璧な天才のチャーリーがよかったのかと。
以前も酒井穣氏のブログより引用をさせていただきましたが、
*****
人間は、反論の余地のない「完璧な人」に対しては、嫉妬や警戒心は抱いても、親しみを感じることはありません。
逆に、この社会では、周囲に多くの味方をつけられる「欠点だらけの凡人」が、完璧な人に勝ることがしばしば起こります。
他者が笑って許してくれる自分の「欠点」は、複雑な人間関係でできている社会を上手に生きていく「武器」になります。さらに一歩進めるなら、自分の「弱点や失敗」は(もちろん、その深刻さの度合いにもよりますが)積極的に他者の笑いに変えようとするメンタリティーを養うべきだと思います。
人に軽蔑されるのは嫌ですが、自分が人に笑われること、自分が人を笑わせることは、周囲を明るく元気にします。また、誰かが人を笑わせようとしているときは、その心意気を「ありがたいもの」としながら、積極的に楽しもうとする態度を示せることが「社交性」のエッセンスでしょう。
*****
はじめて読んだ時には、読み流していたのですが、物語に入る前の序文で、著者ダニエル・キースはプラトンの「国家」より、次の文章を引用されています。
『目の混乱には二通りあり、そして二つの原因から生じることを思い出すであろう。すなわち明るいところから暗いところへ入ったためにしょうじるか、または暗いところから明るいところへ入ったために生じるかである。
その人の魂がより明るい生活から暗い生活へ入り、それで暗さになれていないゆえに見えないのか、あるいは暗闇から白日のもとへ出たので、あまりの明るさのために目がくらんでいるのか・・・』
「暗いところ」、「明るいところ」は、「知的障害のあるチャーリー」、「手術を受けて完璧な天才となった時のチャーリー」なのでしょう。
チャーリーは知的障害の状態から完璧な天才になり、また元に戻っていく、その間、僅か六ヶ月程度と言う間での急激な変化において、目の混乱のような出来事がいろいろと起こったわけです。
普通の人間の場合も、「一生」の間を通じて、両方を経験することになるのかもしれませんね。
それは、“徐々に”であるために、目の混乱のようなことまでは起こらない。
けれども、中高年になると、若い時のようなわけにはいかなくなる部分が生じてくる。
それでも、その年代年代に応じた役割をしていくこと、そして、明るさと社交性を持って前向きに生きていくことが必要なのだと思います。
「アルジャーノンに花束を」、不思議な魅力のある本だと思います。
すごく好きです。
自分は英語力をつけたかったため? ペーパーバックも持っていますヨ。
今回は再読でしたが、前に読んだ時よりも、少し理解を深められたように思います。日本語版で・・・
ありがとうございました。
さてと、勉強もしないと・・・( ̄Д ̄;; (汗)
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