「サクリファイス」 近藤史恵著 を読んで
よかったです!
チーム・オッジのエース 石尾が、「サクリファイス」の中で、亡くなってしまったこと。
チーム最年長の赤城が、「サクリファイス」の中で、引退してしまったこと。
これらは、「サクリファイス」の外伝、Story Seller 1、2、3を読んできて、赤城や石尾が“いいな”とおもっていたところでは、残念でしたが、物語としてはよかったです。
ロードレースと言う、「エース」と「サクリファイス=犠牲=アシスト」で成り立つ“過酷なチームスポーツ”、当然、チームが一つにならなければ、勝利することのできないロードレース。その中で、自分のためだけに、自分がよりメジャーなチームへ移籍できるように、ドーピングまでして、チーム存続の危険にさらすことをする袴田を赦すことができず、下半身不随の怪我をさせた石尾。
チーム最年長の赤城も「やり過ぎだったと思う。」と言っているように、袴田の恨みを買うこととなり、石尾は、自ら命を落とすこととなる。
物語の中で、石尾のしたことは、赤城の言うように、「やり過ぎ」と思いました。
ここで、想い出したのが、ユダヤ教の教典であった旧約聖書にある「目には目を、歯には歯を」です。作家であり、キリスト教信者でもあった三浦綾子氏の解説によると、一つの事件を例にされています。自動車を蹴られた男が、その相手を引き殺すという事件。自動車を蹴られたのなら、自分もまた相手の持つ自動車を蹴るか、その人間を蹴って、帳尻が合う。だが、人間というものは、自動車を蹴られただけで、相手を殺したいほどに、恨みがエスカレートするときもある。
こうした“人間性”を見抜いた上で、<目には目を>のおきてが定められたのであろう、と。目を傷つけられた者は、激しい憎しみにかられ、相手の命まで取ろうとする。だからせめて、こうしたおきてを定めて、目を取られたら、自分もまた相手の目を取るだけで勘弁してやれという、「復讐規制」の掟なのだと、三浦氏は解説をされています。
新約聖書では、イエス・キリストの言葉となって、「右の頬を打たれたら、左の頬を向けよ」へと、高次元となるのですが、ここでは置いておきましょう。
石尾は、この旧約聖書にある「人間性」に気をつけていれば、亡くなることはなかったのかもしれません。
(「サクリファイス」は、大藪晴彦賞を受賞した作品。サスペンス、ミステリー小説としては、避けられないのかもしれませんが・・・・)
サクリファイスの主人公は新人の白石となるのですが、もっと赤城と石尾の続きが読みたいな、と思いました。
新人白石の続編として「エデン」があるようですが・・・・・・・・勉強にも勤しまねば!
ではでは。
m(_ _)m
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コメント
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先日はStory Seller2、ありがとうございました。私も道尾秀介さんが入っていなかったのは残念に思いましたが、冒頭の伊坂幸太郎さんから引き込まれました。有川浩さんの人間描写、本多孝好さんのほっとさせるストーリーも、良かったです。もちろん、近藤史恵さんの”チームオッジ”シリーズも。そのうち年代順に読み返してみたいような気がします。
私は有川浩さんの自衛隊シリーズの最終編、「海の底」を借りてきました。その先には図書館戦争シリーズが待ってます。学会誌にも目を通さなくちゃいけないんですけど…
投稿: 山陽のキキ | 2012年3月 4日 (日) 01時10分
コメント、ありがとうございました!
本、とくに“面白本”は、読み始めると止まらなくなりますネ。
次は有川浩氏、道尾秀介氏のですかね。
自分よりも若い世代の人達、山陽のキキさん世代ですよね。人間描写をとても上手に表現をされていると思っています。
さんくす♪(o ̄∇ ̄)/
投稿: adler | 2012年3月 4日 (日) 21時57分