厚生年金基金の不思議 その2
これは基金についてというよりも、「平成21年財政検証結果レポート」における“長期の経済前提における運用利回り”についてとなります。
公的年金における積立金の運用は、厚生年金保険法等の規定により、長期的な観点から「安全」かつ「効率的」に行うこととされています。
この基本的な考え方に照らすと、
「安全」という観点からリスクを低く抑えるために、国内債券といったリスクの低い資産への投資が中心となる一方で、
「効率的」と言う観点から、国内外の債券や株式等を一定程度組み入れた分散投資を行っているところであり、一定のリスクのもとで、期待収益率を出来る限り高めることが求められています。
そこで、
(長期の運用利回り)=(将来の実質長期金利)+(分散投資効果)+(物価上昇率)で算出されます。
ちなみに、「国内債券の利回り」=(将来の実質長期金利)+(物価上昇率)となるそうです。
「平成21年財政検証結果レポート」における、長期の経済前提における運用利回りは、
(将来の実質長期金利):2.7%
(分散投資効果):0.4%
(物価上昇率):1.0%
よって、(長期の運用利回り)は合計して「4.1%」で想定されています。
財政検証では、(長期の運用利回り)1.5%(←これは妥当に思います)よりスタートして、年々上昇し、平成32年(2020年)以降、4.1%で推移する前提で、将来100年間の検証が行われています。
この設定について、
「年金は本当にもらえるのか?」の著者鈴木亘さんは、“想定が甘い”と言われています。
「いま、知らないと絶対損する年金50問50答」の著者太田啓之さんは、4.1%の内訳について、
実質賃金上昇率1.5%、物価上昇率1.0%、実質的な運用利回り(対賃金上昇率)1.6%の合計4.1%で捉えれば、概ね妥当と評価されています。
どうなのでしょうか?
また、単純和でよいのでしょうか。「実質」としているので、独立だから単純和でよいのでしょうか?
この利回りを利用して、代行保険料率/免除保険料率も算出しています。
年金財政が困難を極める中で、相対的に高めに思える利率を設定できれば、保険料は相対的に小さく算出され、年金財政的には楽になる要因となります。
「国内債券の利回り」=(将来の実質長期金利)+(物価上昇率)ということですが、
「国内債券の利回り」(40年の超長期国債)は、平成21年財政検証時で、2.4%。
その後、毎年0.1%ずつ下がり、平成24年現在は2.1%に至っております。
財政検証時の想定を逆進しているようです。
長期の経済前提は、現実的にはもっと厳しい状況として設定すべきでは?でも、そうすると、ちょっと?怖い検証結果になるのでは・・・( ̄Д ̄;;(汗)
次回財政検証を迎えるまで・・・・・否それでは遅すぎるのでしょう。
公的年金は、なんとかしなければならないでしょう。政治は混沌としておりますが・・・・・
m(_ _)m
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