厚生年金基金の不思議 その3
『給付水準の5%適正化について』
厚生年金において、給付と負担の均衡を図りつつ、将来世代の負担を過重なものとしないため、老齢厚生年金(報酬比例部分)の給付水準が5%適正化されたことに伴い、それまでの給付乗率7.5/1000が7.125/1000に引き下げられた。(平成12年4月1日施行)
「ふむ、ふむ、ここは理解できます。」
つぎに、代行部分の給付水準が5%適正化されたことに伴い、厚生年金基金が支給する年金の給付水準の“努力目標水準”は代行給付の2.7倍から、5%増の2.84倍に置き換わることとなった。
「えっ!??」
「厚生年金は水準の適正化により、給付水準が5%引き下げられたのに、厚生年金基金では、給付水準の努力目標とはいえ、5%引き上げる!?」
「冷静に考えれば、保険料負担を増やして、加算部分を含めてとは思いますが、それでも、出口さんの生命保険入門でも、厚生年基金の9割以上が積立不足になっている、と言われている中で、ちょっと精神論、根性論のようにも思えます。」
引き上げられた理由としては、
代行部分の2.7倍が給付の“努力目標水準”である平均的な被用者の退職前の年間所得の6割程度に相当する水準となり、また、この水準までは、特別法人税も非課税となるためのようです。(厚生年金保険法第132条)
そこで、2.84倍まで引き上げて、特別法人税も非課税とするために、努力目標水準を引き上げられたようです。
(※平成16年法改正では、(60~64歳までの支給分の政府負担金化)に伴って、3.23倍まで特別法人税は非課税となっている)
「ところで、この6割程度ですが、給付水準として、どのような数値根拠があるのでしょうか?」
「厚生年金基金ではなく、厚生年金では、給付水準の下限として所得代替率50%と言われています。(法律「年金改革法附則第2条」でも50%を下回れない)
もらえる年金は、多いに越したことはないかもしれませんが、この5割、6割という給付水準の数値根拠がよく分かりません。
さらに、年金開始後となる受給者の方のその後の年金額。それは、物価スライドとなり、さらにマクロ経済スライドが働けば、所得代替率は年々下降し4割程度まで下降していくと言われています。
4割から6割まで、バラツキが大きくはないでしょうか?
6割という努力目標は無くてもよいように思えるのですが・・・、できることから1歩ずつで良いように思うのですが・・・。
特別法人税非課税枠がありますが、凍結期間を何度も繰り返すような「税」です。低成長時代が続く中で、特別法人税存在そのものを考え直した方がよいようにも思えますよね。
失礼いたしました。
m(_ _)m
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