「わかりやすい企業年金」 久保知行著 を読んで パート2
「わかりやすい企業年金」、本の最後には、次のことが書かれていました。
*****
短期的な業績に一喜一憂する状況が生まれてきています。
手っ取り早く業績を回復するために、賃金を引き下げたり、「リストラ」という名の首切りをしたりする企業も出てきています。
本来、企業では、経営者の“的確”な舵取りのもと、従業員の知恵をいかに発揮させるかが、企業業績に多大な影響を及ぼすようになると言われています。賃下げやリストラで従業員の士気を損なっては、元も子もないのではないでしょうか?
もちろん、企業が厳しい状況に追い込まれれば、コスト削減にあらゆる手立てを尽くす必要があります。しかし、最も優良な工場や優秀な機械を手放すのは最後でなければならないように、企業を究極的に支える従業員へのしわ寄せは最後であるべきです。ヒトに手をつけるのなら、経営者自身、自ら進退を考えるべきです。この気概を重視して、トヨタ自動車の会長で日本経団連会長の奥田氏は、かつて「リストラする経営者は腹を切れ!」と発言されました。
アメリカの心理学者マズローは、欲求5段階説を唱えました。人間の欲求は、
①生理的欲求
②安全に対する欲求
③愛情の欲求
④尊重の欲求
⑤自己実現の欲求
に区分することができ、低位の欲求が満たされると高位の欲求を目指すようになるというものです。
“知恵”による経営の時代を迎えている。
失業の不安が大きくなり、生理的欲求や安全に対する欲求の局面に戻ったかのように見える時代ですが、もはや、自己実現への欲求はとどめることはできないでしょう。若者の意識は確実に変化していますが、その背景には、グローバルな競争の中では“知恵”こそが、最大の武器であり、それを最も有効に活用できる環境や組織こそが、今後の発展のカギになるという意識があると思います。
経営の3大資源といわれるヒト、モノ、カネのうち、これからの時代を左右するのは、やはりヒトです。企業年金も、カネではなく、ヒトの面にこだわり続けていくのなら、時代を超えてその意義と魅力を持ち続けていけるのではないでしょうか。
*****
納得です!!
ここで、一つ思い出したことがありました。
一度、久保先生の講義を聴かせていただいたことがあります。
そのときに、聴き間違いであったのかもしれないのですが、そのときに、「(公的年金に世代間の不公平は無かったが、)平成16年の保険料水準固定方式、マクロ経済スライドは、世代間不公平固定方式である。」と言われていたと思うのですが、その当時、いえ今もですが、この点は理解ができないでおります。
右肩上がりで上がり続ける保険料率にブレーキをかけようとすれば、平成16年の財政再計算においても、ほかに代替案があるのかと言われれば、思いつきません。
そして、次に迎えつつある平成26年の財政再計算について、マクロ経済スライドが一度も発動されずに来ている中、計算結果に基づき、国民への負担を良識の範囲で考えたときに、次の策があるのか? 考えていかなければならないのだと思います。
ではでは。
m(_ _)m
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コメント
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拙著にお目通しいただき、有難うございます。
企業年金をとりまく状況を厳しさを増していますが、知恵を絞って対応していかなければならないと思います。
ご質問の「保険料水準固定方式、マクロ経済スライド」ですが、後者のマクロ経済スライドは基本的に合理的な仕組みだと思っています。
しかし、前者は正確には保険料水準上限固定方式であり、上限に到るまで給付の発生を従来通り行うわけです。保険料が低いのに、それはおかしいでしょう。少ない保険料なら給付発生も少なくすべきだと思うのです。
年金問題は、深く考える価値があると思います。お互い、頑張って勉強しましょう。
投稿: 久保知行 | 2012年5月 8日 (火) 14時22分
久保先生
コメントをいただき、たいへんありがとうございます!
びっくり、驚きです!
「年金問題は、深く考える価値があると思います。お互い、頑張って勉強しましょう。」、肝に銘じて生きたいと思います。
また、ご返信いただいた件については、給付に見合う保険料、保険料に見合う給付にすべきであり、そのようになっていないからということですね。
まだまだ勉強不足ですので、がんばりたいと思います。
この度は、ありがとうございました!
m(_ _)m
投稿: adler | 2012年5月 8日 (火) 23時37分