AIJ問題について その1
以前、アク研HPの中で、今年はAIJがらみで大騒ぎしていますし、その辺もテーマとして、考えておくとよい、とアドバイスがございました。(例)「資産の評価方法」、「任意脱退」etc
ありがとうございます。o(_ _)oペコッ
まずは、ネット上の記事より、現状把握をしておきたいと思います。
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AIJ投資顧問株式会社(東京)は、顧客に対し、240%の運用利回りを確保していると説明してきたが、2012年1月下旬の証券取引等監視委員会の検査により、運用資産の大部分が消失していることが明らかとなった。
厚生労働省は、AIJ投資顧問に年金資産の運用を委託していた厚生年金基金などに対し、2011年度決算で委託額を全額損失として処理するよう通知していたことが4月6日分かった。
さらに、
厚生労働省は4月6日、AIJ投資顧問の年金消失問題を受け、企業年金の給付減額や厚生年金基金解散の要件を緩和する方向で検討に入った。辻泰弘副大臣が同日の記者会見で明らかにした。有識者会議を4月13日に発足させ、6月をめどに見直し案をまとめる。
↓厚生労働省Hp内のコチラ
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000an1v.html#shingi16
*****
厚生労働省では、平成24年3月1日現在、581基金にアンケート調査、558年金基金有効回答
資産規模では、全体の約6割が200億円未満。
その内、AIJ投資顧問に投資残高がある基金は84基金
|
年金基金数 |
資産残高 |
加入者・受給者総数 |
厚生年金基金 |
74基金 |
NA |
NA |
確定給付型企業年金 |
10基金 |
NA |
NA |
合計 |
84基金 |
2000億円 |
90万人 |
AIJ投資顧問は、「裸売り(空売り)」という損失を限定しないリスクの高い金融派生商品(デリバティブ)取引で運用を繰り返し、集めた年金資産の大半を失ったとのこと。これにより、
03年3月期に1億円未満だった損失額は、
04年3月期16億円▽
05年同34億円▽
06年同270億円▽
07年同40億円▽
08年同186億円▽
09年同37億円▽
10年同501億円▽
11年同7億円--と毎年億単位で計上。
AIJは厚生年金基金から受託をしていた約2000億円を、ずさんな運用の結果などで残ったのは、そのうち僅かに200億円程になったと言われています。ほとんど失われたことになります。 (「AIJ問題とは」でググる)
なぜ発見が遅れたのか?
会社ぐるみでグルになっていると、どうしようもないとか・・・・・
AIJの受託資産は信託銀行などを経由し英領ケイマン籍のファンドで運用されていたが、本来は独立して運用利回りなどを確認する管理会社や証券会社はAIJと一体化していた。これが問題発覚を遅らせたとされています。
この問題を一言でいう場合、「エージェンシー問題」とも言うらしいです。ググってみると、
*****
「ミクロ経済学」には契約理論と呼ばれる分類がある。これは、事前に決めた契約が、事後的に守られない状況において、どのような契約が最も効率的になるかを分析するものだ。
最も身近な例が賃金だ。従業員は業務に努力すると約束して入社するが、固定給にすると従業員が努力しない。そこで賞与を動員し、業績をあげた従業員に余分に給与を与える事で、従業員の努力水準を改善する。
平易に言えば、事後的に守らす強制力が無い契約を不完備契約と言う。依頼人(Princeple, 例では雇用主)と代理人(Agent, 例では従業員)の間の問題なので、経済学ではエージェンシー問題と呼ぶ。
*****
会計監査は機能しなかったのか?
会社法上、大会社である場合、会計監査人を設置して、監査を受ける必要があります(会社法328条)。
ここで、大会社とは、資本金として計上した額が五億円以上または、負債合計額が200億円以上の会社を意味します(会社法第2条第6項)。
ところが、AIJは、大会社ではないとのこと。
AIJは資本金が2億3千万円であり、5億円に届かず、負債も200億円に満たないため、会社法上の「大会社」に該当しません。
ということで、AIJは、会社法上、会計監査人の監査も受ける必要がない会社であるということになります。
ところで、被害にあった基金には、大阪の基金が一つもないといわれています。関西の年金基金では、ガイドライン(厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン)に基づき理事会での説明を要請されていたとのこと。
そこで、今のガイドラインはしっかりできているといわれています。
厚生労働省の「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」の内容に基づき、引き続き勉強したいと思います。
ではでは。
m(_ _)m
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