日本の年金の歴史 (改訂)
昨年、ブログにアップをさせていただきましたが、改訂してみました。
前回の記載に、厚生労働省の「H21 財政検証」から追記をしてみました。
青字箇所となります。
視点は、前回と同じく、簡単ではありますが、「日本の年金の歴史」を年金一元化、積立方式と賦課方式について、加えて、厚生年金、国民年金とも、設立当初は積立方式であったこと、国民年金の設立により、国民皆年金を(一時的には)確立をしたことを追記しました。
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年金は一元化した方が良いと考えていますが、システム開発の視点で言えば、公的年金のシステムは「スパゲッティー状態」を通り越しているのではないかと想像しています。生命保険会社のシステムもレガシーでスパゲッティーなシステムとよく言われていますが、それを遥かに超越しているように感じています。少しのことをするにも大変な状態かもしれません。でも、進めていく必要はあるのですよね。
今(2012年6月)時点では、進めるうえで、システム統合に向けた開発ではなく、「制度間調整措置」のような形で実現を図るほうがよいように思えています。それが、システム開発負担の軽減、障害発生率の抑制にもなると思えているからです。
<http://life-insurance2.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-396d.html>
【1-9、H21財政検証P86-】
時期 |
内容 |
補足 |
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M8(1875) |
海軍退隠令制定 |
軍人に対する恩給制度 「生命保険」はM14の明治生命が最初なので、それよりも早いんですね。 |
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M17(1884) |
官吏に対する制度制定 |
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T9(1920) |
現業官庁に対する退職年金制度実施 |
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T12(1923) |
軍人、官吏、現業官庁職員に対する退職後の所得保障を整備。 「恩給法」として制度が統合された。 |
つまり、年金制度は「職業別」からスタート。 恩給制度は一定期間公務に従事した軍人や官吏に対する恩恵的報酬という制度からスタートした。 【大貧困社会P89】 |
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S14(1939) |
船員保険制度導入 |
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S17(1942).1 |
労働者年金保険制度誕生
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当初は10人以上の労働者を使用する事業所の労働者のみを適用対象(主に工場や鉱山で働く男子労働者を対象とした) その仕組みは「積立方式(平準保険料)」で、給料の約10%(坑内員は20%)の保険料を徴収し、55歳から年金を給付するというものであった。【大貧困社会P90】 |
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S19(1944) |
「労働者年金保険法」は、「厚生年金保険法」という現行法の名称を得た |
5人以上の労働者、職員を使用する事業所に使用される(男女を問わない)労働者、職員を強制適用の対象とした 給付水準も改善されたが、それに伴い、保険料率も月収の11%(坑内員は15%)に引き上げられた。 |
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S23 |
戦後の急速なインフレにより、給付の実質価値が大幅に低下してしまった。このため、昭和23年改正において、インフレに対応するため、当時既に支給の始まっていた障害年金について大幅な給付増額がおこなわれた。 一方、この改正で、保険料負担については、戦後の混乱期における被保険者と事業主の負担能力を考慮し、保険料率を一般男子・女子の保険料率が3.0%、坑内夫3.5%という「暫定料率」として引き下げられた。 当時は平準保険料を念頭において財政運営がなされており、当時計算された平準保険料率は、男子9.4%、女子5.5%、坑内員12.3%であったことから引き下げられた保険料率は暫定的なもとのされた。 このように、急速なインフレにより積立金の実質価値が大幅に低下したことと、保険料を大幅に引き下げたことにより、これ以後、厚生年金は、実質的には「賦課方式」を基本とした制度となったと考えることができる。 「賦課方式」への幕開け…【1-15】 |
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S28 |
厚生年金の適用は、常時5人以上の従業員を雇用するサービス業を除くすべての業種の事業所を強制適用対象とすることが定められた(建築・医療・通信などの業種にまで拡大された) 【1-25】 国庫負担もあり、給付費の15%に引き上げられた(坑内員の国庫負担は20%据え置き) |
S60の改正では、5人未満の事業所でも法人格を有するところは厚生年金の強制適用とされ、また、サービス業であっても法人格を有する事業所も強制適用とされることとなり、今日に至る |
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S29.1 |
私学共済発足【1-26】 私立学校教職員共済組合法の施行【1-18】 |
公務員並みの、あるいはより高い給付水準を求める職域グループが次々と厚生年金を離脱 |
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S30.1 |
市町村職員共済発足【1-26】 |
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S34.1 |
農林漁業団体等職員共済組合発足【1-26】 |
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S36.4 |
国民年金制度の施行【1-25】 国民皆年金の確立 |
制度発足当初高齢であった者には、無拠出で老齢年金(老齢福祉年金)が支給された。この制度はS34年11月から施行された。 国民年金制度も発足当初は平準保険料式による保険料設定がなされたが、その後の運営は厚生年金と同様の経路をたどっている。(賦課方式へ)【1-35】 |
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戦後の復興期を終えた昭和30年代当時、自営業者等は公的年金制度の対象になっていなかったが、高齢化による老後生活への不安や、戦後の家族制度の変革に伴う核家族化の進行などを背景として、全国民に老後の所得保障を与える「国民皆年金」を望む声が次第に高まってきていた。昭和33年には国民健康保険制度ができて「国民皆保険」が実現しており、また当時のいわゆる神武景気のなかで財源捻出がしやすかったことから、既存の公的年金制度に加入していなかった自営業者等を適用対象とした「国民年金制度」が創設され、無拠出制については、昭和34年から、拠出制については昭和36年からそれぞれ実施に移された。 |
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S40改正
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厚生年金は、標準的な老齢年金の月額が1万円となる年金(1万円年金)が実現した。 国民年金は2千万人規模の被保険者を抱くまでになり、高齢化の進行に伴う老後の所得保障への国民の関心の高まりから、厚生年金の定額部分が国民年金に相当するとの考え方から、被保険者1人あたりの標準的な年金月額が5千円(夫婦で1万円)となるように給付水準が引き上げられた。 国民年金では制度創設当初は「平準保険料」に基づいて保険料を設定していたが、給付水準の大幅な改善による保険料負担の急激な増加を抑えるため、厚生年金と同様、段階的に保険料を引き上げる段階保険料方式を採用することとなった。以後、国民年金の保険料は、経済の発展とそれに伴う給付改善や高齢化の進展に併せ、厚生年金と同様に段階的に引き上げられていくこととなる。また、国民年金の財政方式についても賦課方式的な考え方に移行することとなった。 【H21 財政検証より】 |
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しかし、職域ごとに設けられた制度は、産業構造・就業構造の変化に脆弱であったと、昭和60年改正以降、『下降の歴史』がスタートします。 |
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S61.4 |
船員保険
基礎年金制度の施行 |
職務外年金部門は厚生年金に統合【1-28】 全国民共通の定額制の基礎年金【1-28】 |
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H9 |
日本鉄道共済年金 日本たばこ共済年金 日本電信電話共済年金 |
厚生年金に統合【1-29】 |
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H14.4 |
農林漁業団体等職員共済組合(農林年金) |
厚生年金に統合【1-29】 |
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現在、厚生年金のほかに「国家公務員共済組合」、「地方公務員共済組合」、「私学共済」が被用者年金として存続しているが、今後一元化に向けてさらに検討が行われていく予定です。 |
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以上です。m(_ _)m
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