« 「厚生年金制度の財政状況をどのように評価するか」について | トップページ | つぶやき!? »

2012年7月14日 (土)

国民年金と厚生年金、「永久均衡方式」と「有限均衡方式」とどちらがいいの?

前回の「事前積立方式」と「賦課方式」では、どちらがいいの?では、

「賦課方式」に近く、段階保険料方式による一部積立となるハイブリッド方式でした。

では、一部積立をどの程度とすると良いのでしょうか?

太田氏の言われている「ハイブリッド方式」は、その本の中で、すでに現在の「有限均衡方式」程度と、述べられていますが、果たしてホントにその程度でよいのか?ということになります。

*******

年金財政計算の目的は、長期的な給付と負担の均衡を検証することです。

この均衡の確保については、現時点から、将来にわたるすべての期間について均衡を図る必要があるかどうかという点で、「永久均衡方式」と「有限均衡方式」との2つの考え方があります。

<永久均衡方式>[P1]

「永久均衡方式」とは、現時点で将来にわたるすべての期間について給付と負担の均衡の確保を図ろうとするもので、現在のように将来の高齢化率が高い見通しとなっている状況のもとでは、運用収入を活用するために、積立金を将来にわたって一定の水準に維持しておくことが必要となります。(平成16年の財政再計算における計算では、100年後に給付費の67倍分の積立金が必要となります。)

平成16年の年金制度改正時において、厚生年金保険の最終保険料率は平成16年改正前の13.58%から22.8%へ引き上げが必要、国民年金の保険料では、13,300円から20,700円に引き上げが必要なレベルとなります。

現在は、厚生年金保険は平成29年(2017年)まで引き上げられ、最終保険料率は平成29年(2017年)までに18.3%とする。国民年金は平成29年(2017年)まで引き上げられ、最終的には16,900円とする。

ここまで高くなってくると、あんまり変わらないとも思えるナ~・・・・・

                                                                               

<有限均衡方式>[P2]

有限均衡方式とは、常に人の一生程度の期間(100年程度)について給付と負担の均衡を図ることを考え、時間の経過とともにその均衡を考える期間を先に移動させて、結果として永久に均衡を図ろうとするものです。この場合には、「財政均衡期間」の最終年度において、「支払準備金程度」となるように、積立金の水準を維持しておけばよいことになります。

この2つの考え方の違いは、世代間扶養を基本とする公的年金制度の財政を考える際に、現時点でどの世代までを見通して財政運営を行おうとするかの違いとして現れてきます。つまり、「永久均衡方式」では、これから生まれてくる世代を含めて、一定の見通しのもとに財政運営を行おうとするのに対して、「有限均衡方式」では、すでに生まれている世代について、一定の見通しのもとに財政運営を行い、この見通しの期間を徐々に移動させていくこととなります。

平成16年の年金制度改正では、「有限均衡方式」が導入。それまでの、「永久均衡方式」からの転換となっています。

主な理由としては、[k3]

それまでの「永久均衡方式」では、公的年金制度は、将来にわたり永続する制度であるとの考えのもと、将来にわたるすべての期間を視野に入れる必要があるが、遠い将来においては、予想できないような事態が起こることを否定できないこと、また、我が国の人口構成の下では、巨額の積立金を保有する必要があることとなるが、大きな積立金を持ちつつ、「マクロ経済スライド」という財政調整(給付の抑制)を行うことについて、国民の理解が得られるかといった問題がある、と言われている。

積立金の活用/積立金水準の抑制[P4]

これまでは、財政計算に際して、「永久均衡方式」によって、将来にわたるすべての期間について、給付と負担の均衡を図ることが考えられてきました。その結果、将来の高齢化率が高い見通しとなっている場合には、運用収入を活用するため、積立金水準は将来にわたって一定の水準を維持することが必要とならざるを得ません。

これに対して、「有限均衡方式」の場合、現時点での財政計算において、給付と負担の均衡を図るべき期間として、すでに生まれている世代が概ね年金受給を終えるまでの期間、つまり100年程度(平成16年財政計算では95年)の期間を設定し、この期間について給付と負担の均衡を図ることになります。

その結果、積立金水準の目標は、財政均衡期間の最終年度において、「支払準備金程度」の保有となるように設定すればよいことになります。

今後の財政計算では、遠い将来においては、現時点では予測することができないような大きな変化が生じることも否定できないことを考慮し、将来に向けて積立金水準を抑制していくことを基本に考えて、最終年度における積立金水準を給付費の1年分程度とする「有限均衡方式」により行われることになっています。

そこで、2040年度頃をピークに積立金が減少し続けている。[P5]

これは、「積立金を活用して、後世代の給付に充てると共に、負担を大きくしない」という財政方式を取り入れているため、財政均衡期間の後半では、積立金を取り崩していくから。

今後の財政検証で、どのような状態になれば制度の見直しが行われることになっているか、また、その見直しの内容はどのようなものか[k6]

・ある時点の財政検証で、その次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合に、制度の見直しが行われる。

・見直しの内容としては、給付水準調整(マクロ経済スライド)の終了や、その他の措置を講ずるとともに、「給付及び負担の在り方」について検討を行い、所要の措置を講じることとなっている。(改正法附則第2条)

・具体的には、次のような見直しが考えられる。「所得代替率の下限」、「年金支給開始年齢」、「保険料水準」。

永久均衡方式と有限均衡方式のどちらが望ましいのか[k7]

有限均衡方式について

・将来の加入者数について、将来人口推計がおおむね100年間のため、ほぼ推計できる

・均衡期間中に加入していても、均衡期間後に支給される給付については、財源の担保はされていない。つまり、均衡期間の末期の加入者に関しては、保険料収入は経常されているが、給付は計上されていない。

・現在の見通しのような収支の状況が均衡期間終了後も続くとした場合、財政検証のたびに、「マクロ経済スライド」の適用される均衡期間の延長などが行われ、長期的には永久均衡方式下の状況に近づいていくこととなる。これは、必要となる「抜本策」の導入を先延ばしともいえる。

・有限均衡方式が繰り返されていくと、制度全体の姿は、給付と負担の最終的な姿は永久均衡方式に近づいていくと考えられる。その際には、各回の均衡期間中の保険料の引き上げと給付の削減が少ない分、積立金の積立レベルが低いまま推移し、結局の負担は多くなることがあり得る。

・政治的な安定性を求めるとすると有限均衡方式が適切である。

永久均衡方式について

・将来の加入者数について、100年以降の期間について大きな仮定を置く必要があり、不確実性が増す。

・将来の収入と支出が均衡・完結している。

・現在の保険料水準から考えて、段階保険料方式とならざるを得ないが、その上限までの負担可能性、引き上げの担保が不明である。

・大きな積立金を持たざるを得ない。そのため、経済変動の影響を受けやすくなる。

まとめ[k8]

政治という場で、議論・意思決定がされる公的年金では、将来の制度について極力あらかじめ決めておくことが望ましい。前回(H16)の財政再計算から保険料(率)水準を固定しているが、政治的な安定性や、巨額の積立金を運用するというリスク、国民の理解を得る困難性、さらには、制度改正当時の政治情勢から考えると、「有限均衡方式」の導入は適当であったと考えられる。

ただし、財政検証毎に作成される将来の見通しが、将来行われる財政検証毎にどう変化していくかについての説明を加える必要がある。

なお、企業年金では、事前積立の下、早期の積立てが推奨されており、また、過去勤務債務の償却は一定期間で行うように定められている。これは、強制適用であり、国家が存続し続ける限り制度が続くとする公的年金と、栄枯盛衰がある産業や企業に依存している企業年金との性格の違いと理解すべきであろう。

「有限均衡方式」なんだろうな、と思いつつ、平成26年の財政検証時において、上記赤字のことが起こらないとよいのですが・・・

平成21年財政検証結果レポートの「今回の財政検証における経済前提の設定の基本的考え方」に次の記載がありました。

長期的な経済前提については、過去の実績を基礎としつつ・・・・(略)。この長期的な経済状況については、平成202008)年度後半以降の日本経済及び世界経済の金融危機に起因する混乱を脱した後(2008915日のリーマン(AIG)ショックのことだと思います)、再び安定的な成長軌道に復帰することを想定した上で、その段階での平均的な姿を見通したものとなっている。ということで、一応、リーマンショックは考慮されているように書かれていますが、用いられている過去の実績は、平成192007)年度末までであり、どうしても後から付け加えたガード文言のように、申し訳ありませんが思えてしまいます。

リーマンショック前であれば、以前「金利の動向で思うこと」で書いたりもしましたが、ゴールデンクロスが2006年から2007年にかけて起きており、2008年リーマンショック発生まで、上昇機運がありました。 ↓「金利の動向で思うこと」

http://life-insurance2.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-d752.html

何度も申し訳ありませんが、その流れのままの「経済前提」に思えてしまいました。

実際は、リーマンショック以降、2009年から2010年にかけてデッドクロスが起きており、今日まで金利は下降傾向となっており、上述の赤字部分が、「平成26年財政検証結果レポート」で起こる可能性は十分にあるのではないでしょうか?

また、その場合には、まず「マクロ経済スライド」の終了とありますが、実際には、これまで一度もスライド調整が行われておりませんから、始まってもいない状況となります。そこで、保険料を上げるのか?年金額を下げるのか?年金開始年齢を上げるのか? これらをベースにした対応策を検討していくことになるのですね。

最後に、Greeen 「希望の光」で締めましょう!

http://www.youtube.com/watch?v=2rLraPLoBpI&feature=endscreen&NR=1

失礼いたしました。

m(_ _)m


[P1]年金制度改正の解説(H16P18

[P2]年金制度改正の解説(H16P19

[k3]H21 年金23Aより

[P4]年金制度改正の解説(H16P19

[P5]H21 年金23Aより

[k6]H21 年金23Aより

[k7]H21 年金23Aより

[k8]H21 年金23Aより

« 「厚生年金制度の財政状況をどのように評価するか」について | トップページ | つぶやき!? »

勉強・試験」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1331845/46328441

この記事へのトラックバック一覧です: 国民年金と厚生年金、「永久均衡方式」と「有限均衡方式」とどちらがいいの?:

« 「厚生年金制度の財政状況をどのように評価するか」について | トップページ | つぶやき!? »

フォト
2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のトラックバック

ウェブページ

ライフネット生命

無料ブログはココログ

Twitter

  • twitter