最低責任準備金について
一般に、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるための準備金として「責任準備金」という。さらに、主に生命保険では、金融庁が定める「標準責任準備金」がある。
厚生年金基金には、「最低責任準備金」がある。
厚生年金基金あるいは企業年金連合会が解散した場合、それぞれが負う代行給付の支給義務を、基金においては連合会へ、連合会においては政府へ移転するため、代行給付に見合う原資として(厚生年金保険法第85条の2に規定する)責任準備金に相当する額を連合会または国へ納付する。
この責任準備金に相当する額を「最低責任準備金」という。
財政検証の基準日を解散日とみなす。
(1)制度創設~平成11年9月(「将来法」による計算)
○最低責任準備金は、基金が解散(又は代行返上)する場合に移管すべき積立金であるが、その計算方法は、創設から平成11年9月までは、将来法(いわゆる「給付現価方式」)と呼ばれる計算方式で行われていた。(この場合に用いる予定利率は厚年本体の長期の予定運用利回りである5.5%を用いていた。)
(2)平成11年9月~平成17年3月(「過去法」を加味した計算(暫定措置))
○平成11年改正による免除保険料の凍結により、最低責任準備金の計算方法についても、暫定的な措置として変更が行われた。すなわち、将来法で計算された平成11年9月時点での最低責任準備金をベースに毎年度の代行部分の収支差を加減し、これに厚年本体の実績運用利回りを乗じていくという過去法(いわゆる「コロガシ方式」)を加味した計算方法に変更された。
(3)平成17年4月~現在(暫定措置の恒久化と厚年本体との財政中立化)
○平成16年改正で免除保険料の凍結が解除されたことに伴い、暫定措置であった最低責任準備金の計算方法が恒久化された。同時に、厚年本体との財政中立化の観点から、「給付現価負担金」制度(※)が設けられた。
○代行部分の給付債務は、厚年本体における「死亡率」や「長期の予定運用利回りの見直し」により変化するが、給付債務が増大した場合、将来期間分については免除保険料率に反映される一方、過去期間分については反映されない。このため、過去期間の代行給付現価が、基金が保有すべき最低責任準備金の一定割合を超えた場合には、一定のルールに基づき厚年本体から給付費負担金を交付する(逆に、過去期間の代行給付現価が最低責任準備金を下回った場合には免除保険料で調整する)というしくみである。
※なお、これは「過去期間代行給付現価」と「最低責任準備金」という債務の差額を調整するものであり、最低責任準備金と保有資産の差額(=積立不足)は、基金において掛金の引上げ等により対応することとなる。
財政検証の基準日を解散日とみなして、平成11年9月末時点 の従来の最低責任準備金(代行部分を支給するための原資に相当する額) に免除保険料、受換金を加え、代行年金額、移換金を控除し利息分を付与して得た額となる。
この利息分の算定の基礎となる利率は、厚生年金保険本体の年度実績運用利率であり、年度末の翌年に適用される。
つまり、X年度(X年4月~(X+1)年3月)の運用実績は(X+2)年1月~12月に適用される。
最大1年9カ月遅れで適用されることから、この遅れを「最低責任準備金の期ズレ」 という。
厚生年金の平成22年度における時価ベースの運用利回り(▲0.26%)。
これが、平成24年1月~平成24年12月までの付利利率となっている。
※ただし、最低責任準備金は、平成11年10月以降、厚生年金本体の運用利回りによって付利されているが、財投債部分については、満期保有を前提に取得原価法により評価された運用利回りを使用している。実際に基金が解散する場合には、時価評価額により返還されることを勘案すると、このように計算された運用利回りを最低責任準備金の付利利率に使用することは合理的でない。従って、さらなる代行部分の財政中立化 を図るためにも、最低責任準備金の付利利率は、財投債部分についても時価評価した場合の運用利回りを適用するよう見直すべきとある。
この方式では、厚生年金本体利回りを確保していれば、代行部分について財政上の不足を生じない仕組みとなっています。
ほかにも最低責任準備金については、0.875問題があったりするのですが、「年金」の勉強をしてみて、「過去法」と「将来法」で(最低)責任準備金の額が異なるということが、ある意味で新鮮な驚きでした。
o(_ _)oペコッ
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