「ハゲタカ」 真山 仁著 を読んで その3
またまた登場をさせていただきました。
本の中に、次の記載がありました。
主人公のホライズン・キャピタル(投資ファンド)の鷲津社長がもの思いに浸るシーンになります。
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日本でホライズン・キャピタルを創業して以来、彼らを取り巻く環境は最悪だった。それもこれも原因は、98年に破綻した大手長期信用銀行である長債銀を、2000年に金融庁から安値で買収したリッキーウオーターという得体の知れないファンドのせいだった。
連中のおかげで、日本中で「ハゲタカ」たたきが始まった。
誰もが日本経済が低迷している本質の追求をやめ、本来は死にかけた企業を救済することになるファンドの動きを妨害した。
しかし、その「被害者」づらの向こうにあったのは、日本の経営者達の責任のすりかえだった。彼らは、日本経済の低迷の原因をすべて「ハゲタカ」に押しつけることで、元凶である自分達の放漫経営の責任を回避しようとしていたのだ!
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これは、
日本長期信用銀行→新生銀行(平成12/2000年6月)の想定と思います。
引き受けをしたリッキーウオーターはハゲタカと言われていますが、また「救世主」でもあると思いました。
そして、リッキーウオーターとは、リップルウッドの想定と思います。
ネットの中には、次のような記載もあります。
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新生銀行 上場!
新生銀行が、2004年2月19日、東証一部に上場しました。新生銀行の前身は、1998年10月に破たんし、一時国有化された日本長期信用銀行。日本長期信用銀行は、リップルウッド・ホールディングス(米国)を中心とする外資系ファンドに営業譲渡され、2000年3月に新生銀行として再スタートしています。
一時国有化された銀行の再上場は、今回が初めてのケース。外資ファンドの損得勘定は?
リップルウッド・ホールディングスを中心とする外資ファンドが持つ発行済み普通株式は、13億5,000万株強。今回の上場に伴う売り出しは、その3分の1。今回の上場により、外資ファンドは手数料等を除き約2,200億円の売却収入を得、残りの3分の2の株式にも多額の含み益が発生したことに…。
これに対し外資ファンドの投資額は、営業譲渡時に預金保険機構から旧長銀株式を買い取った代金10億円と、資本増強のために実施した第三者割当増資1,200億円の計1,210億円。
リップルウッド・ホールディングス等は、普通株式の3分の2を保有し経営権を維持していきますが、今回の売り出しだけで十分に投資コストを回収できた計算になります。
外資ファンドが巨額の利益を得ることに対する批判もありますが、日本企業も旧長銀を買おうと思えば買えた状況下で、外資ファンドはリスクをとって、その分のリターンを得たということです。
1998年に特別公的管理下に置かれ上場廃止となり、2000年に外資ファンドへの譲渡により公的管理が終了、民間銀行として再スタートした新生銀行は、5年強で再上場を果たしたことになります。
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銀行再生の一つのビジネスモデルとなる一方で、公的資金の投入額約7兆8,000億円は、税金により負担されており、旧経営陣の責任は重いと思います。
AIJの2000億円と比べてもすごい金額です。
さらに、「ハゲタカ」の中には、次の記載がありました。
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・・・プライベート・エクイティ(PE)と呼ばれる投資ファンドの研究をしていて、今後日本の経済再生には、PEを活用した企業再生ビジネスが、日本でも脚光を浴びると感じたからだ。
これからの日本の再生の鍵は銀行ではなく、投資のプロと再生のプロが一体となった企業再生にかかっている。
日本の銀行の悪口になるけれど、日本の銀行の投資というものは何の目的もない。不動産があれば、いくらでも金を貸す。逆に不良債権が増え始めると、今度は一気に金を返済しろっという。そこには、融資や投資というものが持つ本質はゼロだ。でも企業再生ファンドの場合、金を投資するためには該当する企業を徹底的に調べて、投資に見合うリターンが得られるかどうかを判断してから投資をするそうだ。
(中略)
日本では投資ファンドと言われているプライベート・エクイティは、3年から5年で投資した額の年利10%程度をリターンしていく。つまり、最初から復活する可能性のあるところにしか金を落とさない。古今東西、金を出しただけで企業が再生出来た例など一つも無い。・・・
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注目したい「リップルウッド」について、岩瀬さんの上司であられた言葉を見つけましたが、”大事な言葉”、”大切な言葉”と思いました。
少し記載をさせていただき、覚えておきたいと思います。
「勝負事で一番大切なことは“観察力”だ」
一見なんということもない短い記事の内容を、違う業界に当てはめてみたり、違う場面に当てはめてみたり、違う人物に当てはめてみたり、より一般的な教訓におきかえてみたりと。
漫然とニュース記事を追っているだけの人と、感受性を研ぎ澄ませて、何気ない記事から多くのメッセージを読み取っている人では、ビジネスパーソンとしての底力の点でどれだけ大きな差がつくことだろうか。
ほかにも・・・
• never, never, never give up。もうだめだと思ったところから、勝負ははじまる。
• 早咲きした人で、晩年まで成功し続けた人は少ない。人生のピークは、むしろあとの方に持っていけた方がいい。
• 大切な人には、手書きでお礼状を書く。
• 大事なミーティングの前には、自分が話したいポイントを手帳にメモって整理しておく。
• 実務家であり、同時に学者たれ。論文なり本を書いておくと、あとあと役立つ。
• 相手が目上の人であっても、自分が正しいと信じることは恐れずに主張する。
• 大きな流れを読んで、我慢して、人と逆張せよ。
• 失意泰然 得意淡然
物事がうまくいかなくても、あせらず、どっしり構える。うまくいっているときは、おごらず、つつましくする。
(岩瀬さんの過去のブログより)
http://totodaisuke.weblogs.jp/blog/2008/10/post-3c8a.html
先日、何気なく入ったブックオフで、僅か数分の後に「金融資本主義を超えて」(岩瀬大輔著)が目の前に現れたのでした。これは運命?と思い早速購入。
今度感想を書きたいと思います。
ありがとうございました。
m(_ _)m
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