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2012年7月14日 (土)

「厚生年金制度の財政状況をどのように評価するか」について

「事前積立方式」による財政評価と「賦課方式」による財政評価の相違点を明らかにしたうえで所見を述べよ・・・・・なるほど。 

論点例

・厚生年金制度で用いられている財政方式について

・事前積立方式によって財政評価を行うことの是非、必要性

・過去期間分の給付を将来の保険料で賄うことについて、どのように考えるか

・将来の保険料収入の確実性(世代間扶助のコンセンサス、負担能力など)

・後発債務発生の可能性と対応能力

 

賦課方式[P1] 

「賦課方式」とは、年金給付に必要な費用を、その都度、被保険者(加入者)からの保険料で賄っていく財政方式である。

保険料(率)は受給者と被保険者(加入者)の人数比に依存するので、将来に向けて、受給者数や被保険者(加入者)数が変化していけば、その影響をそのまま受けることとなる。従って、わが国のように少子高齢化が進行すれば、人口構成の変化に伴い、保険料(率)は上昇することとなる。

一方、賃金や物価の上昇に対応して年金額を改定した場合には、保険料収入も賃金の上昇に従って大きくなるという意味で、保険料(率)はあまり影響を受けないこととなる。また、積立金を保有していないことから、金利変動があったとしても保険料(率)は影響を受けない。

「賦課方式」の場合、制度発足当初は、一般的に、受給者数の被保険者(加入者)数に対する比率が小さいことから低い保険料(率)ですむものの、時間の経過とともに年金給付費は増加し、保険料(率)もそれにあわせて引き上げていくこととなる。さらに、実際には、制度発足当初において高い年齢で制度に加入した者については少額の保険料負担で一定水準の年金給付を支給することが多いことから、生涯を通じた平均的な給付額と保険料負担額の比率については、世代によって差が生じることとなる。

 

積立方式[P2] 

「積立方式」とは、将来の年金給付に必要な原資をあらかじめ保険料で積み立てていく財政方式である。「積立方式」の場合、将来、受給者・被保険者(加入者)の年齢構成や利回り等が見通しどおりに推移する限り、人口の高齢化が進んでも保険料(率)を変更する必要は生じない。

最終的には、年金給付を保険料と積立金からの運用収入により賄う仕組みであり、保険料(率)は実質利回り(利回りと年金改定率の差)に依存する。このことから、将来に向けて、予想していた以上に賃金や物価が上昇し、それに伴い年金額が改定された場合でも、その上昇に見合った利回りの上昇があれば、保険料(率)はあまり影響を受けないこととなる。

もっとも、利回りの上昇が賃金や物価の上昇に及ばない場合には、その差から積立不足が生じ、この不足分については、例えば、それ以降の被保険者(加入者)が保険料により負担することとなる。

年金給付費は、一般的に、制度発足後、時間の経過とともに増加するが、積立方式の場合、制度発足当初から将来の給付に見合った水準の保険料(率)としていることから、当初の保険料(率)は「賦課方式」の場合よりも高いが、見通しどおりに推移すれば保険料(率)を引き上げていく必要はなく、最終的には、積立金から運用収入の分だけ保険料(率)は「賦課方式」の場合よりも低くなることとなる。

また、生涯を通じた平均的な給付額と保険料負担額の比率が、世代により大きく異なることは無い。

 

                             
 

 

 
 

賦課方式

 
 

積立方式

 
 

考え方

 
 

年金給付に必要な費用をその時々の現役加入者からの保険料で賄う方式

 
 

将来の年金給付に必要な原資を保険料であらかじめ積み立てていく方式

 
 

保険料

 
 

保険料は基本的に年金受給者と現役加入者の比率により決まるため、人口構成の変動の影響を受けやすい(金利変動の影響は受け難い)

 
 

保険料は基本的に積立金の運用益により決まるため、金利変動の影響を受けやすい(人口構成の変動の影響は受け難い)

 
 

経済変動への対応

 
 

想定を超えたインフレ、賃金上昇があった場合には、その時点での現役加入者の保険料の負担により実質的に価値のある年金を支給

 
 

想定を超えたインフレ、賃金上昇があった場合には、現役加入者に保険料の追加負担を求めない限り、実質的に価値のある年金の支給は困難

 
 

加入者の保険料の使途

 
 

その時々の高齢世代の年金給付費

 
 

自らの世代の将来の年金給付費

 

注意1

賦課方式を積立方式に切り替える場合には、切替時の現役世代が自らの将来の年金積み立てに加えて、別途の形でその時の受給世代等の年金を重ねて負担しなければならなくなるという「二重の負担の問題」が生じ、これをどう対応していくかが問題となる。

注意2

先進諸国では賦課方式を採用(スウエーデンでは一部積立方式)

 

段階保険料方式について[k3] 

厚生年金及び国民年金においては、保険料水準を将来に向けて、段階的に引き上げていくこととしている。このように、保険料水準を将来に向けて段階的に引き上げていくことをあらかじめ想定して将来見通しを作成し、財政運営を行う財政方式のことを段階保険料方式という。

平成16年年金制度改正では、保険料水準を段階的に引き上げて、平成292017)年度以降、一定の水準で固定し、給付水準を自動調整するという保険料固定方式がとられたが、この財政方式についても、保険料水準の引き上げをあらかじめ想定し財政運営を行うという観点からは、段階保険料方式の一形態と考えることができる。

厚生年金、国民年金は、現在の積立金の水準からみれば「賦課方式」を基本とした方式であり、また、平成16年年金制度改正では、100年後の積立金の支出の1年分とする財政方式が取られたことから、今後も積立金水準からみると、「賦課方式」を基本とした財政方式といえる。

 

段階保険料方式と後代負担[k4] 

厚生年金、国民年金は、制度発足当初は、平準保険料方式により計算された保険料(率)が設定されていた。

厚生年金については、昭和23年(1948)年、急激なインフレのなかで、インフレによる積立金の目減りや負担能力などを考慮し、平準保険料率よりも低い暫定的な保険料率が設定され、賦課方式に近い保険料水準に引き下げられた。

また、厚生年金、国民年金は、制度発足後の制度改正、とくに、昭和48年改正で物価スライド・賃金再評価が導入されたことにより、大幅な給付改善がおこなわれたが、給付改善により新たに発生した費用は、後代負担により賄うこととされた。

ここで、過去の保険料水準が低かった理由として負担能力との関係が取り上げられるが、過去の負担能力を考える上で、当時の経済状況や生活水準を考慮することは当然であるが、その他、私的扶養との関係についても考慮する必要がある。

年金制度発足当初の現役世代は、親世代は、公的年金を受給していないか、受給していてもわずかな金額である。このような状況では、現役世代は、親世代を私的に扶養する必要があり、私的に親を扶養しながら、公的年金の保険料をまるまる納める必要が生じることとなる。

賦課方式的な考え方では、親世代が受け取る年金に相当する分しか、保険料を払う必要はないことから「負担の重複」という問題は生じないが、積立方式的な考え方では、私的に親を扶養しながら自分の老後のための保険料を拠出することとなり、私的扶養も含めて考えると負担の重複が発生することとなる。

すなわち、親世代が十分な年金を受給できない制度成熟期間中においては、私的扶養との関係から、負担能力が低下することとなることに留意して考える必要がある。

 

給付と財源の内訳(バランスシート)[k5] 

国民年金・厚生年金の給付と財源の内訳

 

厚生年金、国民年金を積立方式に切り替えたとした場合におけるいわゆる「二重の負担」について

過去期間にかかる給付(厚生年金830兆円、国民年金120兆円)

・過去期間に係る国庫負担(厚生年金190兆円、国民年金60兆円)

・現在保有する積立金(厚生年金140兆円、国民年金10兆円)

そこで二重の負担の額(厚生年金500兆円、国民年金50兆円)となる。

 

シンガポール[P6] 

世界で唯一、積立方式の公的年金制度が機能している国。

独立後の1955年頃は賦課方式を検討したが、当時は国力が弱く、採用し続けることができなかった。そこで、給与の3040%というかなりの金額を保険料として強制的に貯蓄をさせてきたのだ。医療も介護も、公的な助け合い方式が採用できなかったため、年金同様、強制貯蓄方式を採っている。

しかし、この制度がスタートした時にすでに中高年だった高齢者世代に対する生活保障は極めて脆弱である。それは年金を積み立てる期間が少なかったからだ。

そこで、華人系の多いシンガポールではもともと家族内での親子の助け合い文化があったのを利用し、「親子扶養法」を導入、子供の強制貯蓄口座から親の生活支援を行うようにしたのだ。シンガポールでは社会的な世代間の助け合いはないが、家族内の世代間助け合い方式、つまり、実質的な家庭内賦課方式になっているのだ。   ※「大貧困社会」 著者駒村康平氏より

つまり、世界中探しても、純粋な積立方式の国は無いということを言われているようですネ!

 

積立方式移行の戦略[P7] 

「年金は本当にもらえるのか」の著者 鈴木亘氏の持論となります。

1. 基礎年金分は税方式化して、目的消費税化する

2. よって、保険料や年金支払は厚生年金の所得比例分に絞られる。現在、厚生年金の所得比例分の支払は、年間約20兆円。この20兆円を、国はどこからか調達してこなければなりません。これは、年金受給者が亡くなった後に発生する相続資産の中から、相続税として徴収すること。カナダで行われている「クローバック制度」と同様とのこと。

3. 存命中のときでも、貯蓄や資産が豊富にある高所得の年金受給者からは、固定資産税の一部を、年金目的税として課税する。

・それでも税収は20兆円に達しないため、当面は年金目的の赤字国債を発行する。これは、上記23の継続により、時間をかけて解消していく。

 

数値がもう少し具体的(具体的なのは、「20兆円」という所にのみのように思います)であれば、よいかもと思いました。そうしていただけると、より現実感が出てくるように思います。

 

「積立方式」はダメである[P8] 

「いま、知らないと絶対損する年金5050答」の著者 太田啓之氏の意見となります。

第1の理由は、「二重の負担」問題です。仮にある年から賦課方式を積立方式に切り替えるとすれば、その時点の現役世代は「今生きているお年寄りの年金を支えるための保険料」と「将来自分自身を養うために積み立てる保険料」の両方を同時に支払わなければなりません。この「二重の負担」額は厚生年金と国民年金合わせて550兆円にも達します。年間の国民年金と厚生年金の保険料収入は合計24兆円(09年度)ですから、およそ23年分にも相当する金額です。現役世代がこうした負担を背負うことの合意を得ることは、極めて困難でしょう。

第2の理由は、積立方式が「すでに各国で試みられ、失敗した形式である」ということです。

「現役時代にためたお金の価値を死ぬまで維持する」というのは、実は想像以上に難しいのです。保険料を支払い始めてから死ぬまでには60年、70年と言う時間が経過します。これだけ長期のスパンでみれば、リーマンショックのような経済の落ち込みによる運用失敗のリスクや、急激なインフレのリスクは非常に高まります。

日本がずっと積立方式で年金を運営してきたとしよう。その場合、現時点での積立金の額は国民年金、厚生年金合わせてざっと950兆円になる。(実際の積立金の額のおよそ7倍)

実際の積立金の運用先は、基本的に国債67%、国内株式11%、外国債8%、外国株式9%となっている。これをそのまま当てはめるとすれば、950兆円のうち、104兆円を国内株式で運用することになる。

ところで20111月末時点の国内株式の時価総額は、314兆円。国内株式の3分の1は年金積立金の資産、ということになる。

年金積立金の動向自体が、株式市場を大きく左右してしまう。例えば積立金で株を買いますと、それをやっている最中に株価の全体水準が上がってしまうだろう。逆に売ろうとすると、株価の水準が下がってしまう。ヘッジファンド(ヘッジファンドの規模は大きくても数千億円程度)のように安値の時に買って、高値の時に売り抜けて儲ける、なんて小回りのきく運用はとてもできないだろう。

国債でも同じこと。950兆円の積立金の67%で国債を買おうとなると、国債の発行残高753兆円(2010年末現在)の大半が年金積立金の資産となる。

買っている時はまだいいかもしれないが、年金の支払いに充てるために売り始めると、国債が市場でだぶついてしまって国債の利回りを大幅に引き上げないと、誰も買い手がつかなくなるだろうね。国債の資産価値は暴落するだろうし、元本や利回りの支払いのため税金を引き上げざるを得なくなり、現役世代の生活はどんどん厳しくなるだろう。

~そこで、太田氏は、現在の「ハイブリッド方式」をベースに考えられています~

「年金のハイブリッド方式」とは[P9] 

日本の公的年金は少子化、高齢化に対応するため、計算上は2070年ごろから積立金を本格的に取り崩し、2105年時点では給付1年分の積立金だけを保有することになっています。こうした「ハイブリッド方式」は最近、欧州の年金でも多く取り入れられるようになってきました。こうした限定的な積立金導入であれば、「二重の負担」問題も生じません。「世代間の仕送りである賦課方式を基本とする」という原則は変わりませんが、少子化、高齢化という先進国共通の問題に対応するため、積立方式を部分的に取り入れることで、年金財政を安定させようとしているのです。

公的年金の最大の使命は「高齢者に、生活の柱となるだけの水準の収入をいかに保証するか」ということにあるのであり、「世代間の格差是正」というのは、「その使命を果たした上で、どれだけ格差を縮められるか」と言う観点から論じるべきことである。

しかし、

「高齢者でも所得や資産が豊かな人は、同じ世代の、生活が苦しい人を支える側に回ってもらう」

65歳以上世帯の4割以上が年間所得200万円未満である一方で、年間所得が1000万円を超える世帯も2.6%います。高齢者世帯の4分の1以上の世帯が3千万円以上の貯蓄をしているのに対し、貯蓄の総額が500万円に満たない世帯も2割に達しています。

また、相続税を強化することは「裕福な家に生まれた子供は手厚い教育を受け、将来も高収入を得られる可能性が高まる」と言う格差の拡大再生産を防ぐという点でも有効です。税収の増加分を年金だけでなく、公教育の充実や奨学金の充実など「子どもが教育を受ける機会の平等を確保する」方向へと振り向けることも可能でしょう。

 

賦課方式に近いのだけれども、段階保険料方式による一部積立となるハイブリッド方式が望ましいように思っています。

また、これは、「永久均衡方式と有限均衡方式」に繋がっていくのだと思います。 

 

それにしても、なかなか自分としての所見が乏しいのは寂しい・・・(;´д`)トホホ…

がんばろ~

 


[P1]「H21 財政検証 P119

[P2]「H21 財政検証」 P120

[k3]「H21 財政検証 P125

[k4]「H21 財政検証」 P126

平成23年度年金2_3A/類題H9

[k5]「H21 財政検証」P348、H16 3A

[P6]「大貧困社会」P107

[P7]「年金は本当にもらえるのか?」P208

[P8]「年金5050答」P144

[P9]「年金5050答」P150

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