年金2 厚生年金基金に関する論文予想 その3
1.資産運用規制の在り方
有識者会議報告では、「規制の強化」になっています。
人として考えたとき、「規制」が無くても誠実にできないのでしょうかと、とても残念な気持ちとなるのは自分だけでしょうか?
以前、どこかのブログで弁護士の方が、法律が無くても成立する国が、ほんとうに幸せな国と言われていました。なるほどナ~と思いましたが、無理なんでしょうネ。残念ながら・・・
また、残念ながら、「規制の強化」は“諸刃の剣”と思います。「規制の強化」に係る費用は、基金の誰が払うのでしょうか?
(1) 基本的な考え方
資産運用の手法が多様化、複雑化し、金融市場の変動幅も大きくなる中で、公的年金の一部である代行部分を含めた年金給付等積立金を安全かつ効率的に運用していくとの観点から、今後の基金の資産運用規制については、以下のような基本的な視点に立った見直しを行う必要がある。
① 「善管注意義務」や「忠実義務」といった基金の理事長や理事の受託者責任を明確化し、その趣旨を改めて徹底していくこと
※「善管注意義務」:受託者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う
※「忠実義務」:理事は、法令、法令に基づいてする厚生労働大臣の処分、規約及び代議員会の議決を遵守し、基金のため忠実にその職務を遂行しなければならない。
② 基金のガバナンス強化や資産管理運用業務に携わる役職員の資質向上を通じて、基金の資産管理運用体制を強化すること
③ 外部の専門家等による支援体制や行政によるチェック機能を強化すること
(2) 具体的な見直しの方向性
① 受託者責任の明確化
ü 基金の理事長や理事が「善管注意義務」を適切に果たしていくためには、現在の法令やガイドラインに定められている「分散投資」を徹底し、より実効性のあるものとしていく必要がある。
ü 債券、株式等の資産の種類ごとの配分割合を定めた「政策的資産構成割合」を策定することが基本となる。現在は策定が努力義務となっている政策的資産構成割合を、今後は全ての基金に策定させる必要がある。
ü 各基金の運用の基本方針において基金としての方針を明確化すべきである。
ü 各基金の運用の基本方針について、厚生労働大臣への届出を義務付ける必要がある。
ü 毎事業年度、各基金から提出される「年金給付等積立金の管理及び運用に関する資産運用業務報告書」についても記載事項や様式を見直し、行政監査等において活用できるようにするとともに、厚生年金保険の被保険者全体に適切な方法で情報開示し、外部からのチェック機能を強化する必要がある。
忠実義務の徹底
さらに、基金が、国家公務員倫理規程に準拠して役職員の職務に関する倫理規定を定めることとするなど、忠実義務を徹底すべきである。
② 基金の資産管理運用体制の強化
運用受託機関の選任・評価
ü 平成9年に策定されたガイドラインに具体的な記載はあるが、最新化、より充実させる観点から、先進的な事例も参考にしつつより具体的な例を追加する必要がある。
ü 例えば、定性評価における投資方針や組織・人材・運用プロセスなどに関する着眼点を追加することや、オルタナティブ投資に係る運用商品を選定するに際し運用受託機関に対して説明を求めるべき事項として、時価評価の合理性の確認などの項目を追加することが考えられる。
基金のガバナンス・情報開示
ü 代議員会等に説明すべき事項についての例示をガイドラインに追加する
ü 監事による内部統制を強化する観点から、各基金が定める「監事監査規程」を見直して、監査におけるチェックリストに改正後のガイドラインの内容を反映させる必要がある。また、ガイドラインの遵守状況を含めた監査結果について代議員会への報告を義務付け、今後の基金の資産管理運用業務に適切に反映させる必要がある。
資産管理運用業務に携わる役職員の資質向上
ü 現行のガイドラインでは自己研鑽の努力を促すにとどまっている。役職員の資質向上の観点から、資産運用に関する実務経験や資格の保有状況等も勘案しつつ、こうした研修を受講させることとするとともに、代議員会等にその取組状況を報告するなど、より積極的な取組を促す必要がある。
③ 外部の専門家等による支援体制や行政による事後チェックの強化
資産運用委員会
ü 現行のガイドラインでは、資産運用委員会の設置が望ましいとされており、9割以上の基金において設置している。
資産運用委員会は合議制が特徴である。多様化、複雑化する資産運用に対応していくためには、中立性・公平性の観点にも留意しつつ、資産管理運用業務に関する専門的知識・経験を有する者を構成員に加えていくことが望ましい。また、資産運用委員会の内容について、直近の理事会や代議員会へ報告し、さらに事業主や加入員等にも周知していく必要がある。
運用コンサルタント
ü 現行のガイドラインでは、運用コンサルタントの助言を求めることが考えられるとされており、約3割の基金で運用コンサルタントを採用している。今後は、運用コンサルタントについては金融商品取引上の投資助言・代理業を行う者としての登録を受けることを契約の要件とし、さらに契約に際し、基金は運用受託機関との関係で利益相反がないかどうかについて確認することとする必要がある。
行政による事後チェックの強化
ü 厚生労働省が策定する「監査要綱」を見直して、改正後のガイドラインの内容を反映したチェックリストを追加する必要がある。また、各基金においては、監査結果を代議員会へ報告することとし、今後の基金の資産管理運用業務に適切に反映させる必要がある。
また、年金給付等積立金を安全かつ効率的に運用していくためには、厚生労働省の基金に対する指導・監督はもとより、金融行政においてもAIJ問題のような不祥事の再発防止の努力や運用受託機関に対する適切な検査・監督等を行うことが不可欠であり、企業年金行政を所管する厚生労働省と金融行政を所管する金融庁等との連携をより一層強化していく必要がある。
そこで、金融庁においても、AIJ 投資顧問株式会社事案を踏まえた資産運用に係る規制・監査等の見直し(案)が提示されています。 (※金融庁平成24年9月4日付、同公表より)
○ 第三者(国内信託銀行等)によるチェックが有効に機能する仕組み
ü 国内信託銀行によるファンドの「基準価額」「監査報告書」の直接入手
ü 国内信託銀行によるファンドの「基準価額」等の突き合わせ
○ 顧客(年金基金等)が問題を発見しやすくする仕組み
ü 運用報告書等の記載事項の拡充
ü 運用報告書等の交付頻度の引上げ
ü 年金基金の「プロ成り」要件の限定
年金基金が「特定投資家」(いわゆるプロ)になるための要件を限定する。
※現在、年金基金が「特定投資家になりたい」と申し出た場合、投資一任業者は「顧客の知識・経験・財産の状況に照らして不適当」でない限り、承認できることとされている。この点について要件を限定する。
※法律により、民間の年金基金はアマチュアとなっていて、自己の投資判断や売買指図は禁じられ、プロの信託銀行や投資顧問会社に全て資金委託することが義務付けられている。
考えうる「規制の強化」は、実行されることになると思います。
“諸刃の剣”であることは、すいません、拭えないでおります・・・・・次は「財政運営の在り方」 その4へ続く
m(_ _)m
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