「三昧力(ざんまいりき)」 玄侑宗久著 を読んで その1
最近、「坐禅」をしてみたりしていますが、「三昧」とは、インドで古くから行われてきた静坐瞑想法とのことだそうです。
また、「三昧力」とは、幼児の如く柔軟で没頭しやすい心の在り方のこと。日本的な柔軟かつ「自他一如(じたいちにょ:他を生かさずして自己は生きていけない、自分のためにという生き方が、そのままに他のためにということでなければ自己は生きられない、これは自然の大道であり大原則です。本来は自他の区別などありえない、自他一如で利己はそのまま利他であり、利他がそのまま利己です。自他にこだわらない生き方とは、うばいとり、つかみとる手を、与えようささげようの手に変えていこうと心がけ、行動することで、そうすれば自他一如の世界で生きられる。自他一如の心を良寛さんは無心と言われた)」の心。
幼児にはたしかに自他の感覚が希薄、大人がそれを目指すのは決して「甘え」などではなく、いま最も求められている世界への親和力ではないか、と。
そして、“いろは歌”についても話がされています。
“いろは歌”とは、ググってみました。
「すべての仮名を重複させずに使って作られた誦文(ずもん、唱える文のこと)。七五調の形式となっている。のち、手習いの手本として広く受容され、近代にいたるまで約九百年間用いられた。それは、時に我々日本人の幼い心に、うたごころや、人生観、世界観や、言葉への親しみをも染み込ませることに他ならなかった。日本人の心の伝統と、美意識の特性を考える上で、この事は注意されてよいだろう。」とありました。
「三昧力」の本のなかでは、次のことが書かれていました。 なるほど~。
*****
「いろは歌」では、「有為の奥山今日越えて」と謳われる。
有為の奥山とは“人生そのもの”の喩えだ。つまり人は「無為自然」に生きたいと願っても、目標によって有為と感じないでは生きていけない。そして有為なる目標に近づくことを、奥山を登るように上昇することだと思いましょう、と謳っているのだ。
奥山を越えると、阿弥陀さまが現れる。迎え受けてくれる。それは目標を目指す自力の末に他力に出逢うことにほかならない。
そう考えると、目標をどうしても持ってしまう人生も、肯定できるのではないだろうか。要は、本来は「無為自然」であり、目標なんてものは人工的な計らいだとはっきり知りつつ、「方便」として意識的に目標を掲げるのだ。
新緑の、奥山の景色をもう一度よおく眺めてみることだ。景色が変化したのは盛んな生命力のせいなのだ。まずは小さな目標だけを見て歩き始めてみる。そうすれば、やがていやでも中くらいの目標まで見つかってしまうだろう。それで貴方は安心するに違いないが、もっと大切なのは、ときどき目標のない時間に戻ること。それが「ナムアミダブツ」の時間である。
「有為の奥山」を今日越え、いま「中陰(死後の世界)」にいる。そしてここから自分の人生を振り返ると、それは浅い夢をみていたようだし、酔っていたとさえ思える。これからは、「浅い夢を見るまい、酔いもするまい」と謳われるが、そんなことを宣言する必要もないくらい、幸せを感じているのだ。
「有為」もそれなりに楽しいものだから、どうか皆さんも「いろは歌」を玩味しながら長生きしましょう。
*****
ご参考までに、「いろは歌」となります。
いろはにほへど ちりぬるを (色は匂へど散りぬるを)
わがよたれぞ つねならむ (我が世誰ぞ常ならむ)
うゐのおくやま けふこえて (有為の奥山今日越えて)
あさきゆめみじ ゑひもせず (浅き夢見じ酔ひもせず)
「その2」へ、つづく・・・
m(_ _)m
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