厚生年金保険 所得代替率の遷移
平成元年の年金2の過去問、3-Bに “厚生年金の財政安定化の方策について述べよ”、というのがありました。
解答の一つに、「給付額の引下げ、給付水準の見直し」があります。
そこには、次のような当時の状況が記されています。
*****
昭和61年の法改正では、制度の成熟化に伴う加入期間の長期化から将来の年金額が現役男子平均標準報酬の68%から83%に達するため、40年加入で現役男子平均標準報酬の69%(夫婦モデル)になるように給付率が引き下げられたものである。
この69%という水準は法改正時の年金受給者の給付水準が低下しないことを基準に設定されたものであり、将来的には60%位を基準にするという考え方がある。
将来、現在の69%という水準を60%に向けて見直す場合は、まさに給付額の切り下げにつながることになり、十分な検討と国民の「合意」が必要となる。
給付額の見直しにあたっては、老齢者の必要生計費、現役世代との可処分所得のバランス、企業年金・自助努力部分との関係等様々な観点から検討が必要である。
*****
今から、約四半世紀前のお話・・・
その後、給付額(年金額)は、伸びないように抑えられています。
平成元年、平成6年の改正では、新規に年金をもらうとき(新規裁定者)は、可処分所得スライド、その後(既裁定者)は物価スライドとなり、通常、長期の経済の運用利回りは、「物価」、「賃金」、「金利」の変動の和となるようですが、その一つのみにスライドするため、伸びが抑制されることになります。
さらに、平成12年の報酬比例部分の給付水準が5%適正化(つまり5%の引下げ)
平成16年の年金制度改正(※年金制度改正の解説より)では、支払う保険料水準を固定する、保険料水準固定方式の導入に伴い、給付額の延びを抑えるマクロ経済スライドの導入(これは、あまり機能していないところですが・・・)
それらを踏まえて、いま、
「合意」した記憶は無い?のですが、およそ60%の水準であり、そして、私たちが実際にもらえる頃には50%の水準と言われていますよネ。
さらに、年金開始後となる受給者の方のその後の年金額。それは、「物価スライド」のみでスライドし、さらに「マクロ経済スライド」が機能すれば、所得代替率は年々下降し40%程度まで下降していくと言われています。
平成21年財政検証結果レポート(P17)における「所得代替率」とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における、厚生年金の標準的な年金額の現役世代の平均手取り収入額(ボーナス込み)に対する比率のことを言う。
約四半世紀前は、「現役男子平均標準報酬(夫婦モデル)」とありますが、ほぼ同意と思います。
以前は、所得代替率約70%、いまの試算では、老後は40%まで下降予定。
不思議に思うのは、どれが適正水準といえるのでしょうか?というところです。
ちょっと開きが(幅が)大きすぎるように思うのは自分だけでしょうか。
もう少し安定的であってもよいように思いました。
失礼しました。
m(_ _)m
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