「三昧力(ざんまいりき)」 玄侑宗久著 を読んで その2
読んでよかったナ~と、とくに印象に残ったところを書き留めておきたいと思います。
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「未来を生きる」なんて云うけれど、君たちが生きるのは常に「いま」だ。「いま」は、感じ、味わうことで君のものになる。思考を始めた君は、すでに「いま」にはいないのだ。
とにかく何も考えずに没頭でき、しかも体を使うことを何か一つ、継続的にしてほしい。継続は習慣になり、習慣が体に染みつくと、やがて品格が生まれる。君たちの未来を拓くのは、その品格なのである。
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「聊(いささ)か化に乗じて以て尽くるに帰し、夫(か)の天命を楽しんで復(ま)たなんぞ疑わん」(荘子)
“変化に乗じ、寿命が尽きるまで自然に任せ、疑うことなくその時々の天命を楽しむ”と宣言をされているのだ。この考え方をベースに、ときどきは孔子の言う“志”も抱いたりしながら、ゆらりゆらりと暮らしているのだと思う。また、孔子は論語に、
「五十にして易を学べば大過無かるべし」とある。
孔子も、世界の変化を見据え、変化に乗ずるべく易経(変化)の研究にのめり込んでいったようである。
※易経とは、古代中国に生まれた儒教の書、五経(「詩経」「書経」「易経」「礼記」「春秋」)の一つ。森羅万象の変化と人間のモラルを結びつけて説いたもの。
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偉大な発見や発明は、案外予定外のプロセスで起こることが多い。濁り酒ばかりだった酒に清酒が登場したのも、鴻池の酒蔵に勤めていた職人が、怒って辞める際に、商品を台無しにしてやろうと酒樽に灰をいれたことがきっかけだった。また、エサキダイオードの発明も、実験材料に予定外に混じってしまった不純物のおかげだったと聞く。
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「少にして学べば則ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば則ち老いて衰えず。老いて学べば則ち死して朽ちず」
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仏法は障子の引き手峰の松火打ち袋に鶯の声
障子の引き手も峰の松も、べつになくたって生活に困るというものではない。火打ち袋というのは火打ち石を持ち歩くための袋だろうか、それだって大事なのは本体の方だと普通は思う。鶯の声だって、風流だし春を感じさせてくれるが、なくても困りはしないだろう。
しかしそう思っているうちに、じつは障子そのものが傷み、峰に登る道を見失い、火打ち石を落とし、季節も分からない、ということになる。生活には関係なかろうと油断していると、いつもまにか生活にも困る事態になる、ということだ。
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『老子』に「大怨を和すれば、必ず余怨有り」とある。つまり大いなる怨みをもってしまった者どうしを和解させたとしても、必ず怨みは後々まで尾をひくものだと言うのである。
老子は、だから怨みをもたないように努力するに越したことは無いというのだが、しかし持ってしまった怨みは和解させた方がいいだろう。ところが人は、たとえば喧嘩の仲裁というような場面でも、「平和のために戦う」姿勢をとろうとする。だから“余怒”を残すことになるのである。
老子はまた「慈しみ」を挙げ、慈しみ溢れる存在は人々の心服が得られているから本当の意味で勇敢になれるのだとも言う。
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あなたの心には、「もったいない」虫が生き残っているだろうか。
昨年残念ながらご逝去をされましたが、ノーベル平和賞を受賞されたケニアのワンガリ・マータイさんは、日本を訪れたときに、「もったいない」という日本語に感動されています。
謙虚で慎ましい虫は、長年の大量消費社会を生き抜いてきたのだろうか。
紙は木でできているし、神にも通じるから踏まない。物は投げない。まだ使える物は捨てない。捨てる前に再利用法を考える。神仏には感謝をこめて祈る。太陽を拝む。植物にも挨拶する。なんでもいい。とにかく合理的な対価に換算されない行為を、あなたはなにか続けているだろうか。世界に「もったいない」を発信する前に、自分の生活の中にそれを確認し、しっかり育てる必要があるだろう。
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「学道の者、先ず須らく貧なるべし」 (道元禅師)
風流に生きる=「ゆらぎ」を楽しむ
春は花夏ほととぎす秋は月冬雪冴えて涼しかりけり (道元禅師)
なかなか見習うことは難しいのですが、この“思い”は好きですネ!
ありがとうございました~!
m(_ _)m
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