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2012年10月 7日 (日)

年金2 厚生年金基金に関する論文予想 その4

2.財政運営の在り方

 

先に、厚生年金基金等の企業年金の現状 (平成22年度末時点) 
※第
1回有識者会議資料より

 

                                       
 

 

 
 

現在加入者数

 
 

件数

 
 

資産残高

 
 

厚生年金基金

 
 

450

 
 

595基金

 
 

28兆円

 
 

確定給付企業年金

 
 

730

 
 

1万件

 
 

42兆円

 
 

確定拠出年金

 
 

400

 
 

3705

 
 

5.5兆円

 
 

合計

 
 

1700

 
 

 
 

 

ü 上記595基金のうち、中小企業が集まって作る「総合型」が8割を占めている

ü 上記595基金のうち、最低責任準備金未達(代行割れ)が約4割の213基金。不足額は、6289億円。さらに指定基金が81基金

昨今の経済、金融情勢の悪化によって、積立不足が増大して、非常に厳しい財政状況にあります。とくに母体企業の多くが中小企業である厚生年金基金、この厚生年金の代行部分に必要な積立金がない、いわゆる「代行割れ」が全体の約4割を占めている状況にあります。

20123月末現在では、全576基金のうち、最低責任準備金未達(代行割れ)が約5割の286基金までに増加、不足額は総額11千億円にのぼる。(朝日新聞、2012/9/28

ü 上記595基金のうち、基本プラスアルファ部分の予定利率が5.5%のままが9割、加算部分に関しては6割を占めている。

ü 過去10年間、厚生年金保険本体の平均運用利回りを上回った基金は、595基金中4基金のみ

ü 現在の基金の給付の約8割は代行給付(型)

ü 全体として、こうした企業年金への加入者数は、10年前は約2000万人程度でしたが、直近では、1700万人ということで、概ね厚生年金被保険者の4割ぐらいが加入している状況です。

ü 厚生年金基金では、10年前、加入者数は約1000万人程度でしたが、直近では半減しており、約450万人ということになります。

ü 現在ある厚生年金基金の約8割は総合設立となっている。

 

総合設立の基金の財政運営悪化の原因 

多くの総合設立の基金では、プラスアルファ部分が総じて小さく、代行部分からの給付の多くが占めている状況にある。平成16年の法改正にて示された代行部分の「財政中立化」により、厚生年金本体と同様の実績利回りを確保すればよいことになっているにも関わらず、予定利率を依然として高めに設定していることが多く、必要以上のリスクを伴った運用を行っていると言える。

ハイリスクな運用となっており、下方リスク顕在化時に大きく財政が悪化する状況にある

加えて、プラスアルファ部分についても予定利率を高めに設定したまま据え置いた基金が多かったことから、近年の運用利回りがこれを下回り、積立不足を発生させる一因となっていた。

基金の加入員・受給権者の構成をみてみると、多くの基金で団塊の世代の年金受給が始まっているにもかかわらず、掛金の払い手となりうる新規の加入員は少子高齢化と相まって減少傾向にあり、「制度の成熟化」が進んでいる。また、加入員数の減少による掛金の上昇を原因として、“設立事業所の任意脱退”※が進行するという悪循環にも陥っている。

このように、現在の総合設立基金をとりまく環境においては、資産運用面や人員構成面において積立不足が発生しやすい状況にあるが、もともと総合設立の基金は単独で企業年金を実施することが困難な中小企業が多くを占めており、同一業種・同一地域内の事業所が集まって運営しているため、産業構造の変化の影響をとくに受けやすい。ことため、各事業所による掛金負担能力に差があることから、掛金を引き上げて積立水準の回復を図ることが困難であり、結局のところ、財政弾力化措置の適用等による必要な掛金の引き上げを先延ばしせざるを得ない基金が多く見受けられる。

 

では、今後の「財政運営の在り方」はどうすればよいのか?

 

現在までの厚生年金基金の特例解散について  

ü 厚生年金基金は厚生年金の一部を国に代わって支給(代行給付)しているため、解散するときには、厚生年金基金が支給することとなっていた代行給付に要する費用を一括して返還することとされている。 

ü 今般、運用環境の悪化により厚生年金基金の財政状況が厳しくなっていることを踏まえ、代行給付に要する費用に相当する資産を保有していない基金について、当該返還額の分割納付・返還額に関する特例を設けることとする。

前回の特例措置 

(平成17年~平成20年)〈3年間〉、返済期間:最長10

今回の特例措置 

(平成23年~平成28年)〈5年間〉、返済期間:最長15

 

※自主運用できる保険料、いわば国に納めずに基金に納めるということで免除保険料といわれています。

基本的に代行しているのは老齢厚生年金の一部、報酬比例部分のうち、物価スライドや再評価を除いた部分です。免除保険料率の算定に用いる予定利率というのは、厚生年金本体の長期の予定運用利回りに合わせておりますが、平成16年の財政再計算で3.2%になりましたので、これに合わせて3.2%となっております。その後、平成21年の財政検証で、現在も続いていますが、長期の予定運用利回りが4.1%となっておりますが、多くの基金は経過措置によりまして現在3.2%で免除保険料率を計算しています。

 

厚生年金基金における解散手続きについて 

厚生年金基金は、次のいずれかに該当するとき、厚生労働大臣の認可を受けて、解散することができる。 

<法律> 

1. 代議員の定数の4分の3以上の多数による代議員会の議決。 

2. 基金の事業の継続が不能のとき(この場合は同意・代議員会の手続きを要しない)。 

 

<通知> 

ただし、上記1については次の解散理由及び解散手続きに関する基準を満たすときに限る。

〈解散理由〉 次の①~⑤にいずれかに該当する場合。 

 経営状況が債務超過の状態が続くなど、著しく悪化していること(連合・総合は大半が悪化)。 

 加入員数の減、高齢化等により、今後、掛金が著しく上昇し、掛金負担が困難であること。 

 加入員数が、設立認可基準に比べ著しく減し、基金の運営が困難であること。 

 残余財産を確定拠出年金に移換し、基金の運営が困難であること。 

 その他、設立の事情変更等により基金の運営が困難であること。 

 

〈解散手続〉 代議員会における議決の前に、①~④の全ての手続きを終了していること。 

 全設立事業所の事業主の4分の3以上の同意。 

 加入員総数の4分の3以上の同意。 

 全受給者への解散理由等に係る説明。 

 設立事業所に使用される加入員の3分の1以上で組織する労働組合の同意。

 

確定企業年金への移行(代行返上) 

確定企業年金への移行認可申請についても「解散」の認可申請同様となります。

 

公的年金である代行部分の毀損を防ぐという観点から、「解散」を促していくことも必要となる。

現在、基金の約8割は中小企業が母体となって設立されている総合型基金であり、最近の経済金融環境などの変化により各基金の財政悪化が進む中で、解散基準の緩和(「指定基金制度」と組み合わせつつ、一定の要件を定めて解散命令を発動していくことなど)を考えていくことが必要。

また、確定企業年金などの他の企業年金制度への円滑な移行への配慮も必要。

 

他に、以下の取り組みも想定されますが、これらは、「厚生年金基金廃止(解散)/移行」を前提に進めていく上で、解決策ではなく、猶予策まで、となるように思います。

 

予定利率引き下げ時の特例措置

継続基準においては、依然として高い予定利率を採用していることが問題である。

現状、継続基準よりも非継続基準の方が厳しくなりがちなのは、継続基準の予定利率を高く設定しているためであり、基金が過大な運用リスクを負っていることも高い予定利率を採用していることに一部起因していると考えられることから、速やかに予定利率を引き下げる政策的誘導が必要である。

例えば、予定利率を引き下げによる後発債務は20年以上での償却を可能にしたり、当該後発債務のうち一定水準までは不足金として留保することができるようにしたりするなど、予定利率の引き下げのインセンティブが働く措置が求められる。

そこで、

給付設計の変更について、下記現状規制の緩和か  

給付設計の変更にあたっては、給付水準が下がらないことが原則であるが、予定利率引き下げを含めて、やむを得ず給付水準が下がる場合にあっては、設立認可基準により、「5つの要件」を全て満たしていることが必要である。

とくに、

当該変更について、次の(ア)および(イ)に掲げる同意をえていること。

() 基金の設立事業所に使用される加入員の3分の1以上で組織する労働組合がある場合は、当該労働組合の同意

() 全加入員の3分の2以上の同意

更に、

基金の存続のため受給者等の年金の引き下げが真にやむを得ないと認められる場合、事業主、加入員および受給者等の三者による協議の場を設けるなど受給者等の意向を充分に反映させる措置が講じられた上で、次の(ア)から(ウ)の要件を満たしていること。

() 全受給者等に対し、事前に給付設計の変更に関する十分な説明と意向確認を行っていること

() 給付設計の変更について、全受給者等の3分の2以上の同意を得ていること

() 受給者等のうち、希望する者は、当該者に係る最低積立基準額に相当する額を一時金として受け取ることができること。

 

給付現価負担金の交付基準の緩和 

基金は代行部分の債務として「最低責任準備金」を認識すればよいが、実際に代行部分の給付を賄うためには「過去期間代行給付現価」に相当する年金資産が必要であり、この差額は「給付現価負担金」として交付が受けられることになっているが、現在は、「最低責任準備金」が「過去期間代行給付現価」の2分の1を下回ったときに、はじめて、その下回った額の5分の1が交付される仕組みとなっており、「給付現価負担金」が適切な時期に適切な金額だけ交付されていない状況である。

「給付現価負担金」は「最低責任準備金」のころがし計算においても加算されるため、基金の財政に直接的に影響するものではないが、現在のように給付現価負担金が遅れて交付される仕組みであると、とくに成熟度の高い基金は年金資産の大幅な減少がさけられず、運用環境改善時の回復力を低減させてしまう恐れもあるため、給付現価負担金の交付基準の緩和が必要である。

 

部分的な代行返上を認めるこ  

現行の財政検証においては、基金の資産構成において、リスクの大きさに関わらず同一の基準で行っている。しかし、リスクが高い資産構成を採用している基金に対しては、財政検証時のハードルをリスクバッファに相当する分だけ高めに設定するよう求めてはどうか。逆に、あまりに高い水準を要求すると制度の存続が危ぶまれることにもなりかねないため、その水準の決定にあたっては制度の存続性とのバランスをとりながら検討する必要がある。

代行部分の財政中立化(平成16年の法改正により、厚生年金本体と同様の実績利回りを確保すればよいことになっている)が達成されたとはいえ、最低責任準備金に相当する資産をも保有していない等大きく積立不足が拡大した基金においては、依然として代行部分が財政運営上の負担となっている。代行部分の負担を軽減するための手段として、代行返上や解散の選択肢が考えられるが、大幅な積立不足がある状況ではこれらの選択肢は採択できず、加入員や受給権者にとっても厚生年金基金制度そのものが持つ福利厚生機能が喪失するデメリットが大きい。

そこで、例えば脱退事業所の受給権者のみ代行部分に相当する給付を国に返上する取り扱いを認める等、部分的な代行返上を認めることを検討すべきである。脱退事業所の受給権者がもたらす積立不足の問題を解消させ、残存する事業所の掛金負担を緩和する効果がある。

基金の代議員会等の意思決定の場においてはあくまでも基金の自主性を重んじる必要があるが、専門家である指定年金数理人が参加することを義務付け、基金の内部から積極的に基金の財政運営に関与するよう指定年金数理人の役割と責任を強化することはどうか。近年の基金をとりまく運用環境の悪化および母体企業の掛金負担能力の低下は、基金の財政運営に重大な影響を与えるものであった。基金が将来にわたり安定的な財政運営を持続させるためには、適切な指定年金数理人のサポートが従来以上に必要であると考える。

 

基金の合併 

基金の合併により、スケールメリットを確保できることはメリットの一つといえる。
ただし、いまとなっては、「合併」のいろいろな負担を考えれば、解散/移行だと思います。

 

次は、「厚生年基金制度等の在り方」 その5へ続く・・・

ただし、これは、先日(2012/9/28)に厚生労働省「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」から、なんと「決定事項」として、

“厚生年金基金の代行制度については、ほかの企業年金制度への移行を促進しつつ、一定の経過期間をおいて廃止する方針で対応する”と出ていたんですね。( ̄Д ̄;; 

「決定事項」としての認識がありませんでした・・・・そうなると、「在り方」というよりも、円滑な「無くなり方」となりますね。
長くなりすぎました。失礼しました。 m(_ _)m

 

 

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