「阿弥陀堂だより」 南木佳士著 を読んで
癒される本だと思います。ご紹介いただきました。ありがとうございました!m(_ _)m
なかなか自分だけで見つたり、広げていくことは難しいですよね。感謝です!
「阿弥陀堂だより」とは、過疎といえる“谷中村”にある阿弥陀堂の堂守おうめ婆さんのインタビュー記事からきています。4ページからなる“谷中村広報”の裏表紙下段左隅に毎号掲載される記事となります。
このおうめ婆さんが最高ですネ!96歳のおばあちゃんです。
それでは、とても印象に残ったおうめ婆さんのことばから!
「目先のことにとらわれるなと世間では言われていますが、春になればナス、インゲン、キュウリなど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふうに“目先”のことばかり考えていたら知らぬ間に96歳になっていました。“目先”しか見えなかったので、よそ見をして心配事を増やさなかったのがよかったのでしょうか。それが長寿のひけつかもしれません。」
「わしゃあこの歳まで生きて来ると、“いい話だけ”を聞きてえであります。たいていのせつねえ話は聞き飽きたもんでありますからなあ」
「畑にはなんでも植えてあります。ナス、キュウリ、トマト、カボチャ、スイカ、・・・。そのとき体が欲しがるものを好きなように食べてきました。質素なものばかり食べていたのが長寿につなかったのだとしたら、それはお金がなかったからできたのです。“貧乏”はありがたいことです。」
~頭にかぶっていた手ぬぐいをとると、96年間笑い続けてきて完成したような、“天然ものの笑顔”が現れた。
~
おうめさんにとって、それがあるために生きていられると言ったものはなんですか?と聞かれて
「そうでありますなあ、こうして毎日南無阿弥陀仏を唱えることでありましょうな。南無阿弥陀仏さえ唱えていりゃあ極楽浄土へ行けるだと子供のころにお祖母さんから教わりましたがな、わしゃあ極楽浄土なんぞなくてもいいと思っているでありますよ。南無阿弥陀仏を唱えりゃあ、木だの草だの風だのになっちまった気がして、そういうもんと同じに“生かされている”だと感じて、落ち着くでありますよ。だから死ぬのも安心で、ちっともおっかなくねえでありますよ」
♪
さて、この本の主人公は、有能なエリート医師 上田美智子43歳、その夫、なかなか売れない作家 上田孝夫 43歳となります。
美智子は、有能であるがゆえの超多忙な毎日、流産、そして、化学療法科という専門分野から、日々多くの死に立ち会うことにより、
「正のエネルギーをすっかり死に吸い取られちゃった私は死のことしか考えなくなって、明日を楽観できなくなってしまったのよ。心の病気だわね」と、のちに話をしている通り、
「パニック障害」になります。
そして、夫の実家になる過疎化した谷中村へ、病気を癒すために戻ってくる。
この美智子について、とても純粋な人なのだろうな、と思いました。
パニック障害となった美智子を、夫の孝夫がつぶやくシーンでは、
「心の病気にとってはプライドの高さも悪化要因の一つでしかないのだ。」
そして、谷中村に来て、病気が癒されたあとに、美智子は、
「最前線こそがエリートの仕事場で、田舎の診療所なんか落ちこぼれ医者にやらせておけばいいって、私も前はそう考えていたの」、でも、
「落ちこぼれてみないと見えなかった風景っていうのがあるのよ。背伸びばっかりしていると視野に入らない竹の低いものの中に、実はしっかりと大地に根をおろしている大事なものがあったのよ。そういうことに気づいてから、落ちこぼれっていうのも悪くないなって思っているんだから」
この本の著者、南木佳士(なぎ けいし)氏も、パニック障害となられており、呼吸器科医として、肺ガンで死んでいく患者を多く看取りすぎた心労が原因だと、本人は書かれているそうです。
「プライド」は高すぎてもよくない。自在に取り外しができるとよいように思っています。
中高年になると、人生は後半戦。
小規模でも良いから、ボクらなりの畑をボクらなりの感性で作っていくことにしましょう。
あまり背伸びせず、ちょっと背伸びする。
この本では、さらに背伸びをすると歩けない。踵を大地にしっかりとおろして歩くことも大切と言ってくれています。
がんばりましょう!
さいごに、著者、南木氏がモチーフとされた、谷中村 阿弥陀堂は、南木氏の故郷、嬬恋村三原だそうです。
コチラです。結構年季が入っていますね~。
ではでは、また。m(_ _)m
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