「風化病棟」 帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)著 を読んで
こちらも「阿弥陀堂だより」に続いて、ご紹介、教えていただきました。ありがとうございました。
m(_ _)m
この「風化病棟」は、1998年~2008年までの10年間に亘って、著者が書きあげた短編集となります。
1.メディシン・マン
2.藤籠
3.雨に濡れて
4.百日紅
5.チチジマ
6.顔
7.かがやく
8.アヒルおばさん
9.震える月
10.終診
どれも素晴らしい作品でしたが、ここでは、歴史にも繋がる「震える月」と「チチジマ」について。
じつは、「震える月」は、先日のブログ、「ベトナム戦争」と今を舞台にした物語となります。
ベトナム戦争でのタム少年とその少年を助けた大森医師から始まる物語です。
そして、「チチジマ」は、太平洋戦争と今を舞台とした物語となります。
太平洋戦争中での「父島」は、南方戦線への物資輸送の中継点であった。
1944年6月にアメリカ軍のサイパン攻略が始まると、「硫黄島」の防衛力増強が必要となった。
1944年7月にマリアナ諸島を失陥、翌1945年2月、米軍は「硫黄島」を攻撃、激戦地となり、3月に守備隊は玉砕。
「父島」、「母島」は、空襲や艦砲射撃を浴びたが、激しい攻撃を受けることはなかった。
その後、「父島」は敗戦まで守備を続けたが、敗戦により小笠原諸島・南鳥島は米軍が占領、そして統治された。
昭和43年6月、小笠原諸島全域の日本返還。その後も、「硫黄島」については、島民の帰島の夢が叶わぬまま現在に至っている。
現在の「硫黄島」は、施設区域が「硫黄島通信所」としてアメリカへ提供されている。また、西海岸沖及び南海岸沖には、揚陸進入海面として「硫黄島通信所水域」が設備・提供されている。
城山三郎氏の「硫黄島に死す」にもあるように、硫黄島の悲惨さはこれまでも聴いていましたが、「父島」も違う意味で悲惨であったことを知りました。
「戦争」は絶対に否定しなければならないことですね。
1945年2月19日から始まった「硫黄島」攻撃は、約1カ月続く。大本営が陥落を公表したのが3月21日で、栗林中将以下2万人からなる硫黄島守備隊は玉砕。その1カ月後には「沖縄」の悲劇の幕が切って落とされる。
それから終戦までの5カ月、「チチジマ」では、激しい攻撃は避けられたが、食糧路を断たれた兵糧攻めの状態で、「飢え(栄養失調)」、「アメーバ赤痢」、そして、全身虱(シラミ)に苦しめられることになる。
降伏調印後、米軍が最初にとった行動は島全体の消毒で、飛行機がDDTを散布。アメーバ赤痢の治療薬も手渡され、患者は回復できた。戦いがまだ続いていれば、何人もの病気による死者や餓死者が出たといわれています。降伏はまさに旱天の慈雨となったそうです。
「チチジマ」は、そこでの米国と日本の戦友(fellow soldier)同志の物語となります。
最後に心に残った言葉です。
「阿弥陀堂だより」、「風化病棟」とも、著者は共に作家であり、医師でもあります。
・待合室での様子を覗いてみる癖は、研修医のころ、指導医に口すっぱく教えられたことだ。柱の陰や後ろの方の椅子に坐っていれば対人緊張の傾向があり、手前の方であれば受診動機も強く緊急性が高い可能性がある。夫婦や親子で離れて座っていれば、その距離がそのまま家庭内の心理的距離をあらわしている。
・きみたち、何が効くったって、処方薬の中で一番聴効くのは『希望』だよ
・患者との面接で話題がなくなったら、本人が一番輝いていた時期のことを聞く。そうすれば、治療は決して悪い方にはいかない。
・実際の医療現場を担うのは、名医でも悪医でもなく、「普通の良医」なのだ。
また、医者は「逃げずに踏みとどまり、見届ける」
ありがとうございました。
m(_ _)m
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