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2012年11月23日 (金)

被用者年金制度の一元化について

 

今年4月の閣議決定のあとに、整理をしていましたが、その後、

2012810日、社会保障・税一体改革関連8法案が成立し、その中で「被用者年金一元化法案」も成立しています。

 

そこで、再整理しました。青字が更新箇所となります。

+++++

過去、平成18年、ア試験に出題がされています。

これは、平成18年当時に閣議決定がされたためと思いますが、その後、平成217月の衆議院解散に伴い廃案となっています。

今年(2012年)、あらためて、閣議決定まで話がされています。そこで、自分として理解をしておきたいと思います。

下記は、今年の被用者年金一元化法案閣議決定の記事となります。

 

(2012.4.13 より)----------

政府は413、会社員が加入する厚生年金と公務員らの共済年金を平成2710月に統合するための被用者年金一元化法案を閣議決定した。厚生年金より低い共済年金の保険料率は毎年段階的に引き上げ、公務員共済は309月、私立学校教職員の私学共済は394月に厚生年金と同じ18.3%(労使折半)に統一する。

旧恩給部分として共済に投入している税金の「追加費用」は原則27%削減する。 公務員共済の積立金の約半分を共済側が持ち続け、新しい上乗せ年金の補填(ほてん)などに充てる-ことも盛り込んだ。

「職域加算」(平均月約2万円を上乗せ給付する共済独自の制度)廃止後の公務員らへの新たな上乗せ年金制度については、24年中に検討を行い別途法律で定めるとし、対応を先送りにした。

政府は有識者会議を設けて具体策を検討する。 閣議決定した法案は、自公政権が19年にまとめた法案(21年に廃案)をおおむね踏襲した。政府・与党は自公両党の賛成を得て法案を成立させたい考えだが、両党は野党時代に同法案に反対してきた民主党の対応を批判しており、協力を得られるかは不透明だ。

-----------------------------------

 

次に、平成18年の過去問を記載します。

【過去問H18 3 Aより】

平成18428日に「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」が閣議決定され、被用者年金制度の一元化が行われることになっている。

(1)上記の閣議決定に述べられている被用者年金制度の一元化の目的および対象制度について簡記せよ。

(2)被用者年金制度の一元化について所見を述べよ(上記閣議決定の内容に限定しなくてもよいが、「保険料」、「給付」、「積立金」、「職域部分」のあり方については必ず考察の対象とすること)

 

H21. 財政検証結果レポート P359より

これまでの被用者年金の統合は、財政的に危なくなった制度(JRJT、農林年金など)を支援するためとイメージできます。

これからの統合は、どちらかと言えば財政的には良好なところ(但し、公務員となるので、一般企業よりも「公務員削減」が叫ばれている中では、高齢化が加速的となるかもしれませんが・・・)を吸収する方向にあるのだと思います。

 

この解答は、いまにも通じるところが多いと思いました。参考としながら、考えてみました。不十分なところ多いと思いますが、その点は是非ご指摘、ご教示いただけると嬉しいです。

 

(1)

○目的

今後の被用者年金制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展等に備え、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという「公平性」を確保することにより、公的年金全体に対する国民の信頼を高めること。

H13の記載には「安定性」があったが、いま残っている共済は、産業構造、就業構造の影響を受け難いようなので、「公平性」のみの記載となっている。H3 1(5)も同様。

○対象制度

厚生年金保険、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済の各制度

※以下、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合は「公務員共済」と、私立学校教職員共済は「私学共済」と言う。

 

(2) 所見について

<論点は以下の通り>

①制度体系

②給付体系

③保険料

④積立金

Cf. H13 3-Aより、当時、農林漁業団体職員共済組合との統合において「移換する積立金額の考え方」を問うている。ただし、今回にはそぐわないようです。それは、農林年金の特殊性(厚生年金と比べて保険料率が低かったこと、今後、被保険者が急減することが見込まれること)があるためです。また、H16の年金制度改正前であることから、物価スライドのことが言及されていますが、今はマクロ経済スライドがあり、そのままでは扱えないとも思います。

⑤職域部分

⑥追加費用

⑦財源

 

 

①制度体系

・一元化の財政方式の考え方として <H4 3A

1.全被用者年金制度を統合し、財政運営を一本化する方法

国民に対して最もわかりやすい方法だが、各制度の関係者の合意が得られるかという問題がある。また、業務処理に相当な費用と時間を要することや、積立金の移管額の算定方法や移管方法などの問題も解決しなければならない。

2.各制度を統合、整理するも、複数の制度(民間被用者と公務員)とする方法

上記1.と同様の問題を含み、公務員制度を別建てにすることに対する国民の合意が得られるかという問題も残る。

3.各制度は分立したまま恒常的に費用負担の調整を行う方法

関係者の合意、業務処理の負担などは、上記1. 2.の案よりは受け入れやすいと考えられるが、各制度の長期的な財政運営の不安定要因は依然解決されないと言える。

制度の安定性は得られる一方で、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるということを「公平性」と言うならば、その「公平性」は、実現できないことになります。

 

上記は、平成4年の解答となりますが、現在においては、「上記1」になっていると思います。

 

そこで、H21財政検証結果レポートより、3公社統合後の各共済からの支援に基づき、考えてみます。

359P

昭和50年代には、安定した制度運営を行っていくことが困難と思われる制度がでてきたことから、公的年金制度の一元化が課題とされるようになった。昭和591984)年度には国家公務員共済組合と三公社共済組合との間での財政調整措置が導入され、昭和611986)年度には全国民一律の基礎年金制度が導入された。また、平成21990)年度には全被用者年金制度による「制度間調整措置」が導入された。

このような経過を経て、平成81996)年3月に政府は公的年金制度の長期的安定と公平を図るため、「公的年金制度の再編成の推進について」を閣議決定した。その中で、再編成の第一段階として、既に民営化・株式会社化しており成熟化が進行している、日本鉄道共済組合、日本たばこ産業共済組合及び日本電信電話共済組合については、平成91997)年度に厚生年金に統合することとされた。その際、統合前の期間に係る給付費については、費用負担の平準化を図りつつ、被用者年金制度全体で支え合う措置を講じることとされた。この閣議決定を受け、三公社共済組合は平成91997)年4月に厚生年金に統合され、その給付費用の一部に充当するため被用者年金制度全体による支援措置が設けられた。

現在、旧日本鉄道共済組合及び日本たばこ産業共済組合において、世代間扶養部分(物価スライド・再評価に対応する部分)について、各制度から支援されている。

 

Cf. H19 1(4)

次に、現在の被用者年金各制度の財政指標を概観してみると

※上段が平成19年度、下段は平成233月末になります

                                                 
 

項目

 
 

厚生年金保険

 
 

国家公務員共済組合

 
 

地方公務員共済組合

 
 

私立学校教職員共済

 
 

被保険者数

 

(千人)

 
 

34,248

 

3,441万人

 
 

1,044

 

105万人

 
 

2,908

 

288万人

 
 

478

 

48万人

 
 

年金扶養率

 
 

2.47

 

2.39

 
 

1.53

 

1.53

 
 

1.6

 

1.53

 
 

4.32

 

4.19

 
 

積立比率

 

(年)

 

簿価ベース

 

[時価ベース]

 
 

4.3

 

[4.1]

 

4.1

 

[4.1]

 
 

6.3

 

[6.0]

 

6.2

 

[6.1]

 
 

10.0

 

[9.2]

 

10

 

[9.7]

 
 

9.9

 

[9.1]

 

9.0

 

[9.0]

 
 

保険料率

 
 

14.642

 

16.412

 

2

 
 

14.767

 

15.862

 

1番高い

 
 

14.092

 

15.862

 

3

 
 

11.522

 

13.292

 

4

 

 

※「年金扶養率」とは、適用者数を老齢(退職)年金の受給権者数で除した値

※「積立比率」とは、前年度末に保有する積立金が、実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄う部分(国庫・公経済負担(事業主等による負担)を除いた部分)の何年分に相当しているかを表す指標

※ちなみに黄色箇所はちょっと危険?、青色箇所はちょっと安心?としてみています。

 

すると、被保険者数では、厚生年金保険が断トツです。

私立学校教職員共済が、この4制度の中では、財政的に一番良好のようですが、被保険者数は厚生年金保険の約1%程度です。

 

平成24810日の成立「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」より

 

(1) 厚生年金に公務員及び私学教職員も加入することとし、2階部分の年金は厚生年金に統一する。

(2) 共済年金と厚生年金の制度的な差異については、基本的に厚生年金に揃えて解消する。

(3) 共済年金の12階部分の保険料を引き上げ、厚生年金の保険料率(上限18.3%)に統一する。

(4) 厚生年金事業の実施に当たっては、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合や私学事業団を活用する。また、制度全体の給付と負担の状況を国の会計にとりまとめて計上する。

(5) 共済年金にある公的年金としての3階部分(職域部分)は廃止する。公的年金としての3階部分(職域部分)廃止後の新たな年金については、別に法律で定める。

(6) 追加費用削減のため、恩給期間に係る給付について本人負担の差に着目して27%引き下げる。但し、一定の配慮措置を講じる。

≪施行日≫

(1)~(5):平成27年(2015年)10

(6)公務員の恩給期間に係る追加費用削減:公布(822日)から1年を超えない範囲内で政令で定める日

 

「システムまでも一元化しようとすれば、そのシステム開発費用は数兆円規模になるように思います。厚生年金で保有する件数は、国民年金を含めれば、約70,000千件です。これらを日々維持管理する費用は、一般の民間生保ではなかなか想像できませんよね。これらのお金は全て年金保険料等で賄われることになるでしょう。」

 

上記法令(4)で、「厚生年金事業の実施にあたっては、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合や私学事業団を活用する。」とあります。

 

年金制度は一元化されますが、既存の各システムを利用することと推察できます。

 

それでも改修費用は膨大と思いますが、恐縮ですが、厚生年金のシステムよりも、公務員共済、私学共済のシステムは、まだ良好のように思います。改修はこちらの方が大変になると思いますが、がんばるしかないですかね。

 

②給付体系

・一元化の対象給付 <H4 3A

一元化を実現する場合は、すべての被用者に共通な部分とすべきであり、厚生年金保険相当の水準とするのが妥当であるように思います。

・在職老齢年金や遺族年金の転給等、各共済年金と厚生年金保険の制度上の差異は厚生年金保険に合わせていくこととなっているが、受給権の保護の観点から問題はないか。

(論点) <H18 3A

⇒一元化を実現する場合は、「公平性」の視点から、例外措置は極力避けるべきと思います。例外措置は、「公平性」を欠く措置になることが多いと思えています。

・定額、所得比例、定額+所得比例どのようなものが考えられ、それぞれのメリット・デメリットはどうか。

⇒保険料と合わせて考える必要があるように思います。保険料を原則、所得比例としている以上は、費用負担の公平性から見た場合、ある程度の所得比例となる給付が求められると思います。

 <H18 3A

 

③保険料

 

・一元化を実現する場合、その財政運営は現在の厚生年金保険で実施している「保険料水準固定方式」、「有限均衡方式(財政均衡期間の最終年度の積立水準は支出の1年分)」で、よいか。

 

「保険料水準固定方式」は、平成16年改正により、最終的な保険料(率)の水準を法律で定め、その負担の範囲内で給付を行うことを基本とする制度となった。これは、急速に進展する少子高齢化に対応するために負担の上昇が避けられない中、若年層を中心として、負担がどこまでも上昇してしまうのではないかとの不安が大きいことから、将来にわたっての保険料水準を法律に明記することによって固定したものである。

H21 財政検証P15

この考え方を前提としているのであれば、賛成である。

一方で、同じく平成16年改正により導入された「マクロ経済スライド」。これは、「保険料水準固定方式」で、最終的な保険料水準及びそこに到達するまでの各年度の保険料水準を固定して法定化し、社会全体の年金制度を支える力の変化と平均余命の伸びに伴う給付費の増加と言うマクロでみた給付と負担の変動に応じて給付水準を自動的に調整する仕組みとして、「マクロ経済スライド」が導入された。

H21 財政検証P105

しかし、この「マクロ経済スライド」がH16年導入以降、一度も実行がされていない。

これは、平成16年改正における給付水準調整は、賃金や物価が上昇し、それに応じて年金額が増額改定されるときに、その改定率を抑制することにより行うこととされたためです。

従って、賃金水準や物価水準が低下した場合には、賃金や物価に応じた年金の減額改定は行うが、マクロ経済スライドによる給付水準調整は行わないこととされている。

また、賃金水準や物価水準が上昇した場合でも、機械的にスライド調整率を減ずると年金の改定率がマイナスとなる場合には、年金の名目額を引き下げることはしないこととされている。

これが、現在の保険料収入、国庫負担、積立金からの妥当な給付額なのであれば、よいと思うのですが、おそらく毎年予定以上の支払が生じているのであれば、少なくとも「マクロ経済スライド」を機能するようにする必要があると思います。

 

④積立金

 

・各共済年金の積立金のうち、厚生年金保険の積立金の水準に見合った額を12階部分の共通財源に供することになっているが、その額の算出に当たってはその過程等を十分に開示し、理解をえられるものとする必要があるのではないか。また、その他(例えば、職域部分への持込を増やすなど)の考え方はないか。 <H18 3A

・今回の成立法案では、

現在の共済年金の積立金については、12階部分と3階部分の区別がないため、被用者年金一元化に際しては、共済年金の積立金のうち、12階部分の給付のみである厚生年金の積立金の水準に見合った額を一元化後の厚生年金の積立金(=共通財源)として仕分ける必要がある。

具体的には、共済年金の積立金のうち、一元化前の厚生年金における積立比率(保険料で賄われる12階部分の年間の支出に対して、何年分を保有しているかという積立金の水準)に相当する額を、共通財源として仕分ける。

ここで、この方法を踏まえて、ニッセイ基礎研究所では、被用者年金一元化の財政検証を実施されている。それによると、一元化しなかった場合、2105年度の積立度合(前年度末の積立金額が当年度の支出の何年分に当たるかを示す値)をみると、厚生年金は財政健全化のルールどおりに1.0であり、公務員共済や私学共済では1.0を上回っている。しかし、今回の法案を反映した試算では、被用者年金全体でみて費用が財源を上回り、2009年度末の現在価値で2兆円の財源不足が発生する結果を得られている。

一元化後の被用者年金全体の財政バランスの悪化は公務員共済や私学共済の財政悪化が原因であり、発生もとの財政単位が責任を持って対処すべき、という考え方に立てば、積立金の仕分けの見直しが必要になるかもしれない。

 

⑤職域部分 <H18 3A

・給付水準をどの程度とすべきか。わが国における公務員の位置づけ、処遇の考え方を十分踏まえた上で検討し、その過程については十分な開示を行う必要があるのではないか。

・保険料負担として国、公務員の負担割合は折半とするか。

・財政方式は現在のような賦課方式か、それとも積立方式とするか。積立方式とした場合に発生するPSLを誰がどのように負担するか。

H18年当時、積立金については、12階部分の共通財源に供する積立金を仕分けた後に各共済年金の財源として残る積立金を、現行の職域部分(3階部分)の廃止前の期間に係る給付費(既裁定年金及び未裁定の過去期間分に充てる、としている。

現行の公的年金としての職域部分(3階部分)は、廃止としている。そこで、新たに制度としての仕組みを設けることとしている。公務員共済については民間の企業年金・退職金等を踏まえた制度を設計し、私学共済については、別途新たな年金を設ける予定であった。

積立方式を前提にしていることになると思います。

⇒今回は、公的年金としての3階部分(職域部分)廃止後の新たな年金については、その在り方について、平成24年中に検討を行い、その結果に基づいて、別の法律に定めるところにより、必要な措置を講ずるという趣旨を規定。また、施行日において受給権を有しない共済年金加入者がそれまで保険料を払い込んだ職域部分の取扱いについては、別に法律で定める趣旨を規定している。

 

Pass!です。

 

⑦財源 <H18 3A

・社会保険方式がよいか、税方式がよいか、その他、最低保証部分とそれ以外で分けるか。また、それぞれの方式のメリット・デメリットはどうか。この点は、現在の厚生年金保険の論点と同じように思います。結論としては、社会保険方式がよいように思っています。

http://life-insurance2.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-62b2.html

http://life-insurance2.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/19-57b6.html

 

長くなりました。失礼致しました。m(_ _)m

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