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2012年12月 3日 (月)

「医学生」 (南木佳士著) を読んで

「阿弥陀堂だより」、

「ダイヤモンドダスト」、

「からだのままに」、

「ふつうの医者たち」につづき、南木氏のいよいよ5冊目です。

 

平成元年(1989年)に、「ダイヤモンドダスト」で、芥川賞を受賞。

翌年の平成2年(1990年)にご病気(うつ病)になられて、それから2年が過ぎて、再び書きたい欲が芽生えたそうです。

ただ、これまでのように内向するだけの、深刻ぶった、いわゆる“純文学”らしい“純文学”は書きたくなかった。肩の力を抜き、己を救うためのユーモアを交えた小説を書きたかった。

そんなのとき、ふと頭に浮かんだのが「医学生」の頃の想い出だった、と。

 

書き下ろしで、単行本として出されたときのキャッチコピーは「必死のユーモア、誠実な青春」だったそうです。それと、表紙の「憂い」に満ちた青年の肖像画、この小説の中身を上手に表現されているように思います。

 

この小説には、医学生として、

車谷和丸、

桑田京子、

小宮雄二、

今野修三の4人が登場します。

ほかに、

解剖学教室の講師の依田、

京子の夏期病院実習先、信州の総合病院で内科医長を勤める上田

 

どの人物にも、南木氏の分身が入っているように思います。

どの人物も優しい人たちでした。

 

ここで、「」と「」について、少し調べてみました。

 

人間はえなければ物が出来ない。

何の心配もなく、平々凡々幸福に暮らしたのでは、という文字の真義からくる“優秀”とは言い難い。

憂患を体験し、悩み抜いてきて初めて、物も余裕も出来てくる。   【安岡正篤】

 

(ゆう)は(うれ)うで、(ゆう)は(すぐ)れている・しい・役者(俳)という意味を持つ言葉ですが、ここで安岡氏の言葉通り、からが発生したようです。

***

は、頁(あたま)++(足を引きずる)」で、頭と心とが悩ましく、足もともとどこおるさま。かぼそく沈みがちな意を含む。

は、「人+憂」で、しなやかにゆるゆるとふるまう俳優の姿とあります。

心が沈んでいる時の身のこなしが、しなやかでゆるゆるとしている所から、俳を表わすようになり(今の俳とは違い能などと近い動きとのこと)、また、その身のこなし方からしいともなり、またその動きの美しさから、れていること(優秀)にも使われるようになったそうです。

***

 

憂患を体験し、悩み抜いてきて初めて、人物も余裕も出来てくる。

 

そんな「い」の頃の学生時代を描いた物語、そして、それが今のしい医者たちへとつながるように思いました。

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ではでは、また。ありがとうございました。m(_ _)m

 

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