「冬の水練」 (南木佳士著) を読んで
南木氏のついに7冊目!
「医学生」(1993年頃)、「冬物語」(1995年~1996年末まで)の頃から、2002年までに書かれたエッセイ集となります。25のエッセイで構成されています。
著者の南木氏が、少しずつ普段の生活をとり戻されてきているころのエッセイなのかな、と思いました。
その中で、“生命保険”について、的をえた記述がありましたので、ご紹介します。
*****
「生命保険というものは、掛けている間に死んだら妻や子供たちにこれだけの金が支払われるんだという安心を買うものなんじゃないですか。それだけ大事な安心を買っておいて、さらにおまけの満期金まで欲しいなんていうほど欲張りじゃありませんよ」
と、言って、掛け捨て保険を選びました。
(中略)
簡易金庫を開けて保険証書を確認してみたら、たしかにこの20年間、合計するとかなりの額の掛金をかけてきたことになる。でも、とりあえず死なないで今日までこられた代償だと思えば安いものだ。
*****
「保険期間20年の定期保険」に入られていたようです。
ある生命保険会社の経営者の言葉となります。
『生命保険を売ることはとても難しいことです。
なぜなら、お金を捨てさせることだからです。自分にはお金が返ってきません。自分以外の人のために入るものだからです。だから皆、生命保険を勧められると躊躇するのです。
「あなたが払うお金はあなたのところには返ってきません。あなたの愛する人のところに行くのです」ということを言わなくてはいけないわけです。ですから生命保険を売るのは難しいのです。
いくら家族を大事にしているといっても、保険料という意味でお金を捨てるのは難しいことです。自分に戻ってこないのですから。
しかし、この難しい仕事が難しいからといって放棄してしまっては、日本のセーフティネットが無くなってしまうと思います。』
つまり、生命保険を売るには、“ニード喚起”が必要になると言われていますが、少なくとも南木氏は、生命保険のニードを理解されているのだと思いました。
さいごに、「麻雀」というエッセイより
人生に無駄なことは一つもない。
近ごろ私はそう確信するようになってきている。病むことだって、老いることだってまぎれもないその人の年輪の一輪なのだ。その一輪がなければ木の幹はそこから腐って空洞になってしまうのだ、とまあ、それほど力む必要はないのだが、麻雀はそれなりにいろんなことを教えてくれた。
(中略)
他人がツイているときに無理に勝負をしかけると振り込んでしまって負けを重ねる。だから、黙って降り続ける辛抱も学んだ。「禍福はあざなえる縄のごとし。」この格言の真の意味を私は麻雀に教えられたのである。
医者として患者さんや己の人生をよくよく検証してみると、良かったことと悪かったことの収支はおおむねバランスが取れているような気がする。
(中略)
生きていればいいときもあるし、悪いときもありますよ。運を天にまかせるっていうのは、とりあえず死なないでいればなんとかなるってことなんだと思いますよ。
ではでは、ありがとうございました。
m(_ _)m
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