道元 「禅」の言葉 (境野勝悟著) を読んで
道元は、鎌倉時代に生きた、わが国最高の宗教者であり、曹洞宗を開山した宗教哲学者として知られている。
彼は、比叡山の仏教教理には満足できなかった。そこで、24歳のとき、中国・宋に渡った。26歳、ついに生涯の大師、天童山の如浄禅師に出会い、「仏」とは、まさに日常生活の自分の中に生きていることを発覚した。
そして、道元が著した「正法眼蔵」は、90余巻におよび、とても難解と言われている。
そこで、境野氏により、とても分かりやすく、一冊にまとめられた本と思います。
道元は、1252年、53歳の初秋、体調をくずした。10月の末にいたって病が急激に重くなった。死期を感ずるや、最後の説法として「八大人覚」を説く。
弟子たちに「八大人覚」は、決して忘れることのないように、と、最終の声を響かせた。
「八大人覚」
1. 少欲
2. 知足
3. 楽寂静(ぎょうじゃくじょう)
4. 勤精進(ごんしょうじん)
5. 不忘念(ふもうねん)
6. 修禅定(しゅぜんじょう)
7. 修知恵(しゅうちえ)
8. 不戯論(ふけろん)
少欲
欲こそが苦しみや悩みの種。欲を持ちすぎないこと
知足
(少)欲とは、まだ来ない“将来”のことについて、欲望を持つことである。
知足とは、いままで得たことに、満足して、心安らかに生きることである。
人生、欲を言えば限りがない。ああ、これでよかったのだと「足る」を知れば、だれもが、簡単に苦痛から解放されるのだ。
人生悩みを消すのは、簡単なのだ。
将来に欲を張らず、いままでの人生の何か一つでも満足して感謝すれば、心はすぐ安らかになる。
楽寂静
世の中の雑音を離れて、静かな所へ行って、自分が生きていることを、しみじみと味わってみたらどうであろうか。静かな時間を楽しんでいると、自分がしゃくに障ったり、頭に血を上らせたりして悩み苦しんでいたことが、いつの間にか、サアッと消える。
自分に対する周囲の反撃が甚だしいために、その重圧の苦しみで、ついに、身を滅することさえある。世の中は沼である。入りすぎると、溺れる。
勤精進
いつでも「精進」という徳を心がけつとめよ。
少水の常に流るれば、よく石を穿つが如し。
一気に進め、とはいわない。少水とはポツポツと落ちる水だ。ポツポツではあるが、絶えることなく落ちていれば、いつかは石にも穴をあける。
不忘念
正念を守って生きること。正念を忘れないで生きること。
正念とは、自分の生命の根っこは宇宙の生命であることを自覚していることだ。
自分の生命は世の中だけにお世話になって生きているのではないだろう。自分の生命は、宇宙の力に支えられているのだ。それこそが自分の生命の「あるがまま」の姿なのだ。
自分の「あるがまま」を受け容れる。
修禅定
宇宙の生命には、苦しみや悩みがない。この澄みきった心で、世間の出来事を静かにゆっくり観る。すると、世間というものが、いかにプラス・マイナスの考えで狂い、欲望の戦いに燃え盛っているのかがわかる。
「禅定」とは、宇宙の生命の目で、世間の混乱の状況を静観・静慮することだ。
修知恵
自分が幸福に生きるために必要な知恵の第一番に、「聞」をあげている。いくら経済的に恵まれていても、いつもいやなことばかり聞いていては、心は晴れない。逆に、それほど経済的には恵まれていなくても、常にやさしく思いやりのある言葉を耳にしていれば、心は秋空のように澄んで明るくなる。
不戯論
相手を傷つけあう話し合いが、戯論である。戯論はしてはならぬ。
言葉は、恐ろしい一面を持つ。
おごりたかぶって発言された一言が、たとえどんな軽々しい口調でいわれたにしても、胸にぐさりと突かれ、動けなくなってしまう。
個人の我意だけを振り回して戯論ばかりしていたのでは、幸福で平和な世界は消失する。
さいごに、
「周りのすべてのものに感謝する。」
四季は、宇宙がくれた最高の贈り物
春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪さえて、冷(すず)しかりけり
道元は、峯の新緑も紅葉も谷川の響きも、すべて宇宙の声と姿である・・・・と。
とてもボクにはよかったです。ありがとうございました!m(_ _)m
境野氏の本、読破してしまいそうダ・・・(^-^;
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