「保険法」について ※主に数理の視点より
本日、行ってきました!
慶應義塾大学でのセミナーへ
先に謝ります。春風に誘われて、春風の誘惑?、午前中まででぬけでてしまいました。
(*_ _)人ゴメンナサイ
午前中は、生命保険の基礎ということで、「保険法」のお話をしていただきました。
すっかり忘れていたところもありましたので、復習になり良かったです。
ありがとうございました。
そこで、「保険法」について、少し復習をしておきたいと思います。
<目的> 法務省hpより
社会経済情勢の変化に対応して、商法第2編10章に規定する保険契約に関する法制を見直し、(商法から保険法とすることで、)共済契約をその規律の対象に含め、傷害疾病保険契約に関する規定を新設するほか、保険契約者等を保護するための規定等を整備するとともに、表記を現代語化し、保険契約に関する法整備を行う。
² 商法第2編第10章は、明治32年(1899年)より、約100年間、実質的な改正がされていなかった。
² 法律の骨子
ü 保険契約に関する法制の整備
Ø 商行為としての保険契約を規律の対象とする現行商法の規定を改め、保険契約と同等の内容を有する共済契約をその規律の対象に含め、『保険契約一般』について“新たな法典”とする。
Ø 損害保険契約及び生命保険契約のほか、現行商法には規定のない傷害疾病保険契約に関する規定を新設する。
Ø 以下、略
ü 表記の現代語化
² 保険法と保険業法との関係
保険法は契約当事者間における契約ルールについて定めるものであるのに対し、保険業法は保険会社に対する監督(免許の内容、業務の内容の規制、罰則など)について定めるものであり、両者の役割を異にするものです。
² 公布日、平成20年6月6日
施行日、平成22年(2010年)4月1日
<「保険の定義」について> 金融審議会資料「保険法改正の対応について」より
結論としては、保険法に「保険の定義」を定めないこととされたが、保険業法においてもこれを定めないことが適当と考えられる。
主な理由は、次の通りである。仮に、「保険の定義」を狭く解し、例えば大数の法則や収支相等の原則を含めると、内容の悪い実質的な保険(例えば、保険を装った詐欺的商法等)について監視が行われなくなる可能性が考えられる。他方、「保険の定義」が広く解され、例えば、保険デリバティブのようなものが含まれた場合、これらについて保険会社しか販売できないといった問題が生ずる可能性も考えられるため、などが挙げられる。
<第三分野保険の制定> ア第7章巻末、金融審議会資料「保険法改正の対応について」より
歴史をさかのぼると疾病保険の考え方は、明治期のロェスレルによる「商法」草案には、その先駆けを見ることができる。
しかし、実際にはその後、これとは異なる商法典が制定され、保険は商行為編第10章に長くその条文が存続することになった。そこでは、生命保険についても損害保険についても人の健康についての記述はなくなった。
♪すでに日本国内において生命保険会社は設立されているが、第三分野は新しい考え方だったのかもしれませんね。
今般、保険法では、「傷害疾病定額保険契約の意義」として第三分野の契約が明確化される。
ここで、まず、実損填補の考え方による傷害疾病保険については損害保険契約の内部に定義されたと考え、その一方で、生命保険契約では、「生存または死亡」をトリガーとする金銭の支払を定義に残したことから、傷害疾病について内包することができなかった。そこで、傷害疾病定額保険契約の定義が別になされている。
「傷害疾病定額保険契約の意義」
傷害疾病定額保険契約は、当事者の一方が人の傷害疾病に関して一定の金銭の支払をすることを約し、相手方がこれに対して保険料を支払うことを約する契約をいう。
しかしながら、以下の点で保険法と保険業法の間で、第三分野に関する規定に差異が生じることとなった。
² 保険業法においては、傷害・疾病保険契約(定額給付方式、損害てん補方式)、傷害死亡給付契約を第三分野として規定し、疾病死亡給付契約を生命保険として規定している。
² 保険法においては、傷害・疾病保険契約(定額給付方式)、傷害・疾病死亡給付契約を「傷害疾病定額保険」として新たに規定し、傷害・疾病保険契約(損害てん補方式)を損害保険契約として位置付けた上で傷害疾病損害保険として新たに規定した。
この点については、現行の保険業法上の保険種別の分類は概ね定着したおり、また、理論的にも契約当事者間の民事ルールを規律する保険法と、保険契約者等の保護を図るために保険会社に対する監督・規制等を規律する保険業法とは立法目的の差異を踏まえれば、両者が一致していなくとも問題は生じないものと考えられる。
|
商法 (明治32年、1899年) |
保険法 (平成22年(2010年)4月) |
保険業法 (明治33年、1900年) |
傷害・疾病保険 定額給付方式 |
規定なし |
傷害疾病定額保険 (新設) |
傷害・疾病保険 (第三分野) |
傷害・疾病保険 損害てん補方式 |
損害保険 |
傷害疾病損害保険 (損害保険) |
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傷害死亡給付 (定額給付方式) |
規定なし |
傷害疾病定額保険 (新設) |
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疾病死亡給付 (定額給付方式) |
生命保険 |
<保険料不可分の原則>
商法
第1編 総則
第2編 商行為
第10章 保険
第1節 損害保険(第629条~第672条)
第2節 生命保険(第673条~第683条)
第3編 海商
第653条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テハ保険契約者ハ契約ノ全部又ハ一部ノ解除ヲ為スコトヲ得
第654条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テ保険契約者又ハ被保険者ノ行為ニ因ラスシテ保険ノ目的ノ全部又ハ一部ニ付キ保険者ノ負担ニ帰スヘキ危険カ生セサルニ至リタルトキハ保険者ハ保険料ノ全部又ハ一部ヲ返還スルコトヲ要ス
第655条 前2条ノ場合ニ於テハ保険者ハ其返還スヘキ保険料ノ半額ニ相当スル金額ヲ請求スルコトヲ得
(第一生命見解、他インターネットより)
「保険料不可分の原則」とは、保険契約が中途で終了した場合であっても、保険者が保険料期間のすべての保険料を取得することができ、保険料期間のうち未経過期間に対する保険料を保険契約者に返還する必要が無いという原則をいう。同原則によれば、保険料期間が1年の場合、たとえば1ヶ月経過した時点で保険契約が終了したとしても、保険者は1年分の保険料を取得できることとなる。現行商法では、直接的に保険料不可分の原則を規定しているわけではないが、商法655条の反対解釈等を根拠として保険料不可分の原則が認められるものと解されてきた。
近時は、この原則について立法論的に批判されることが多い。
立法論的批判とは、保険技術的な理由があるにしても、契約が解除された時点では保険事故は発生しておらず、保険金の支払が為されない場合には、保険者は残りの保険期間における危険負担を免れることになる。その点をとらえ、保険料不可分の原則を正当化する根拠は薄弱であるとして立法論的な批判が呈されるようになった。
そこで、保険法改正では、保険料不可分の原則は画一的には採用されなかった。
該当条文の削除となった。そのため、保険料不可分を前提とした現行実務は改定する必要がある。
既に、「保険会社向けの総合的な監督指針」においても、「・・・保険料の未経過期間に対応した合理的かつ適切な金額の返還など保険契約に係る制度が改正及び新設されており、当該制度に適切に対応できる態勢を整備しているか。」と規定がされている。
<「現物給付」について> 金融審議会資料「保険法改正の対応について」より
現物給付は、保険法において定めないこととされた。
<保険業法と保険法について> 「改正保険法および監督指針の銀行窓販への影響」記事より
保険業法及びそれに付随する監督指針等の監督規制は、保険会社の財務の健全性や適切な保険募集の実施による保険契約者等の保護等の観点から保険会社に一定の監督を加えるものであるが、特に保険募集の関連の規制においては、保険会社の販売チャネルが増加するにつれて、監督ルールもチャネル毎の特性に対応したきめ細かなものが作られてきた経緯がある。たとえば銀行窓販については、監督指針Ⅱ-3-3-9で独立章が設けられている。
これに対して、保険法は契約法であり、その主な趣旨も、保険契約に関する基本的な事項を定めることによって、保険会社と保険契約者等の権利義務関係を適切に律するところにある。基本的には、保険契約に関連して当事者が有する権利又は負担する義務について、一般的・抽象的な規律を設けているというのが保険法の特徴である。したがって、保険法では、保険会社の販売チャネルに応じてきめ細かい規定が設けられてはいない。
『ロエスレル』という人物について
ヘルマン・ロエスエル(Hermann Roesler、1834年12月18日 - 1894年12月2日)はドイツの法学者・経済学者。明治初期にお雇い外国人の一人として来日したドイツ人である。呼称については、ロエスレル、レースラーとも表記される。
1878年、外務省の公報顧問として来日したが、一顧問にとどまらず、後に内閣顧問となり伊藤博文の信任を得て、大日本帝国憲法作成や商法草案作成の中心メンバーとして活躍した。1881年、明治政府がプロシア流立憲主義に転換し(明治十四年の政変)、井上毅が憲法の草案を作成したが、その草案は多くロエスエルの討議、指導によるものだったとされる。彼の提出した「日本帝国憲法草案」のほとんどが受け入れられ、大日本帝国憲法となった。
彼の思想は保守的で国家の権限強化する方向にある一方で、法治国家と立憲主義の原則を重んじるものであった(これは、彼から深い薫陶を受けた井上毅の思想にも影響する)。彼が来日を承諾した背景には、時のドイツ帝国宰相であるビスマルクの政治手法が余りにも非立憲的である事を批判したことでドイツ政府から睨まれたからだとも言われている(その後、オーストリアで余生を過ごしたのもこうした背景によるものであるという)。経済学者としてはアダム・スミス批判で知られている。
以上、復習です。ありがとうございました。
m(_ _)m
写真は、「春風の誘惑」・・・(^-^;
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