「老いを生きる仏教の言葉100」 (ひろ さちや著)を読んで
自分の老いを生きましょうヨ!
元気なんかなくても、お金なんかなくても、老後を楽しむことはできます。どう老いるかは私たちの自由です。仏教の言葉をきっかけに、自由に老いを生きるためのヒントを100の項目にわたって紹介をしています。
おもしろく、興味深く読ませていただきました!
こころに残ったところを書き留めておきたいと思います。
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私たちは歳をとり、力の衰えを感じるにつれ、自分の「咲き時」は終わったものと考えてしまいます。
しかし、人生という花はいくつになっても咲き続けます。それは青年期のような華々しいものではないかもしれません。しかし、山水画のように滋味溢れる、心にしみいる花をずっと咲かせることもできるのです。
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「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷(すず)しかりけり」 (道元 「本来の面目」より)
ありのままの姿、あるがままが、素晴らしい。物事はありのままの姿が真実であり、そのままで素晴らしいのです。
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肩書はどうか。どんな仕事をしているか。お金は持っているか。健康かどうか。
世間が価値判断をする。そうした細かな情報が、「自分」という存在をつくっています。だから、リストラに遭ったり、お金に困るような状況に遭うと、生きる価値がなくなってしまったように感じるのです。
しかし、本来の自分というのは、世間的な位など持たない“自由な”存在です。世間の奴隷になって、自分で自分を苦しめることは、この際やめてしまいましょう!
世間を飛び出して、本当の自分になりましょう。老いとはもともとそうした時間なのです。
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明日の不安を解決するために、荷物を抱え込みすぎてはいないでしょうか。そんなふうに緊張しながら生きるより、のんびり適当に生きて、いい加減に死んでいく。「何がよくて、何が悪い」といった世間の物差しなんて捨ててしまいましょう!
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75歳の法然に襲ったのは土佐(実際には讃岐)への流刑でした。この年齢になってなぜこんな目に、と普通なら思うところですが、法然は「これも地方に念仏を広めるいい機会だ」と誰かを怨むことなく、いまを生きることに徹しました。
もちろん、誰にでもできることではありません。
ただ、視点を変えることを知っておくだけでも、老いの時間は変わってきます。
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誰が何と言おうとも、どんな人生にも生きる意味はあります。
そして、どんな老いにも意味があり、かけがえのない価値があるのです。
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喫茶去(きっさこ)
唐代の禅僧として知られる趙州和尚は、禅を学びにやってきた僧たちに必ず「お茶でもどうぞ(喫茶去)」と言っていたそうです。
僧たちはまじめです。悪いことではありませんが、人はまじめであれがあるほど、自分と他人を比べてしまいます。それこそ「こんなにも私は頑張っているのに」と考えて、自分から人生を苦しくしてしまいかねません。
趙州和尚はそれが分かっていたから「お茶でも飲んで、心をのびのびさせなさい。それじゃ禅は学べないよ」と教えたかったのです。
自らの老いが不安に思えるときは、まずお茶でも飲んで心をほぐしてみる。とらわれのない心から、あるがままの老いが見えてきます。
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仏教は努力することを大切にしていますが、それは幸せになるためにする努力ではありません。努力そのものを楽しむ、そうした努力です。
頑張らなきゃいけないと思うがあまり、大事なものを見失ってはいないでしょうか。かえって心に荷物を背負っていないでしょうか。何歳になろうが、私たちの心はもっと自由であっていいのです。
精進とは「つとめ励むこと」を意味します。心が自由であるために、つとめ励む。それが仏教のいう努力とも言えるのかもしれません。
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達磨大師は「もし心が不安なら、その不安を探してみてごらんよ。もともと不安なんて、実体のないものさ。お前さんは、現実にありもしないものに翻弄されていないかい」と言っている。
私たちはよく「不安だ」といいますが、何が不安なのかよくわからずにそう感じていることも多いものです。そんなとき、不安に抗うのではなく不安を探してみる。理由がわかれば対処はできますし、見つからなければ不安になる必要がないとわかります。
不安に振り回されがちな私たちに「不安と付き合うヒント」を教えてくれています。
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現成公案
目の前の現実(現成)を問題集(公案)として受け止めなさい。
結婚をしているなら結婚生活を公案として、会社をリストラされてしまったら失業者としての現実を公案として、歳をとったらいまある老後を公案として受け止めて生きる。そうやって苦しみと自分の間に「隙間」をつくると、苦しみも現成の現れであることに気がつきます。私たちの前には常に新しい学びがあるわけです。その学びに感謝しながら生きたいものです。
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和顔愛語
「やわらかな表情、やさしい言葉」
人に接するときにはいつも微笑みを絶やすことなく、やさしく慈悲深い言葉で話しなさいということです。
笑顔は最高の布施であると。
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言葉は鋭い刃である。
言葉は刃のようなもの。扱い方を間違えれば、思いもかけず多くの人を傷つけてしまいます。そして、返す刃が自分自身も切り刻んでしまうのです。だから、大切なこととして、
自分を苦しめず、また他人を害しないようなことばのみを語れ、という心がけが必要です。
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形見とて何かのこさむ
春は花 山ほととぎす 秋はもみじ葉 (良寛)
この世とお別れをするにあたって、形見として何をあなたに残していこう。春は花が素晴らしいし、山はほととぎすが素晴らしい、秋は秋でもみじ葉の美しさに心を奪われる。四季折々の美しさを感じさせる、この自然こそ残しておきたいものだ。
死を迎えるということは、美しい自然の中に帰っていくことです。あるがままに生きてきた結果として、もといた場所に帰っていく。老いとはそれまでの道のりをじっくりと楽しむ時間なのです。
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ありがとうございました~!
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