「あん」 ドリアン助川/明川哲也著 を読んで
「誰にも、この世に生まれてきた意味がある」。
「どんな人も、どんな人生にも、この世界に生まれてきたことに意味がある。」
禅の哲学でも、どんなことがあっても(もう体力も気力も失せた、不幸のどん底にあっても)「乞食をしても、生きる」がありますが、それにも通じているように思いました。
そして、人は「生かされている」と言うことにも通じているように思いました。
とてもよかったと思います。半日で読了!感動でした!
自分にとっての “こころの4部作” ができました!
どれも「生きる」ことの大切さを示唆してくれています。ありがとうございました!
フランクル氏の「夜と霧」。
37歳から40歳までの約3年間の強制収容所でのフランクル氏自身の体験から記された本。
“生きる”こと、そして、「それでも人生にイエスと言う」へつながるように思っています。
石原吉郎氏の「望郷と海」。
終戦のはずの1945年から1953年までの約8年間の強制収容所での石原氏自身の体験から記された本。
残念ながら、石原氏は1977年に自宅の浴槽の中で亡くなられています。大量のアルコール摂取後の入浴による急性心不全といわれており、自殺行為に近かったのかもしれません。
また、本自体も絶版本となり、公営図書館等から借りる道のみと思います。自分も図書館で借りて読み、そしてコピーしちゃいました。
と、ここまで書いて、調べたところ、みすず書房から、単行本になって昨年再版されているようです。
北条民雄氏の「いのちの初夜」
「あん」と同じく、ハンセン病による世間からの隔離を通じてハンセン病患者でもある北条氏が記された本となります。北条氏はハンセン病で、1937年に24歳の若さで亡くなられています。
「いのちの初夜」は青空文庫から入手可能です。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000997/files/398_42319.html
そして、今回のドリアン助川/明川哲也氏の「あん」となります。
「あん」、主な登場人物、
・どら焼きや「どら春」の雇われ店長、辻井千太郎。若い頃には、大麻の売買に関わり塀の中に2年間入っていたという過去に傷を持つ、生き方下手の中高年。
・14歳から亡くなられるまでハンセン病施設で生活をしてきた吉井徳江おばあちゃん。そして、親孝行できずに亡くなった店長の母親と同じ世代になります。
・アパートに母親と二人で暮らす貧乏中学生のワカナちゃん
ハンセン病による差別の歴史は古く、鎌倉時代まで遡るようです。ただし、差別がエスカレートするのは昭和に入ってからとなるようです。そして、途中、新薬プロミンの発明(アメリカ 1943(昭和18)年)により、それが、日本では、終戦後の1947(昭和22)年に使用できるようになり、治る時代へと進みながらも、「『らい予防法』廃止に関する法律」の成立する1996(平成8年)4月1日まで、差別は続いたと言えるのではないでしょうか。なんとなく、さみしくなりますネ。
そんな中でも、たくましく生きてこられた、徳江おばあちゃん。
千太郎店長、ワカナちゃんと同じく、とても元気づけられました!
ありがとうございました~!
これまで適当なところが多かった千太郎が徳江おばあちゃんと一緒に“一生懸命”どら焼きやの仕事をした後に、
「望んで就いた仕事ではない。早く自由(早く借金を返して、この仕事を辞めたい)になりたい。そればかり願っている。なのに、ひとつの峠を越えたような達成感があった。そこに千太郎は戸惑いを覚えた。小さくばんざいをしたいような、なんだかややこしくなってきたような・・・
千太郎と徳江おばあちゃんの会話で、
「恥ずかし話ですけど、俺、きちんと生きてきたわけじゃないんです。どうしたらいいのか分からないまま来ちゃったというか。昔は物書きになろうなんて思ったこともあったのに。なにをしてもだめで。もっとも、このところは文字すらも書いていないんで、ただの怠け者だってことが分かりました。それでいて、どら焼きの方でプロになったわけでもない。」
「でも、休まずにやっているじゃないの!」
徳江おばあちゃんが千太郎店長に宛てた手紙をドリアン助川氏が朗読をされています。「あん」のエッセンスになると思います。コチラです。
愛知県新城市の桜 ドリアン助川 小説「あん」朗読
http://www.youtube.com/watch?v=FPgWjG52ePA
ほかの方の感想もご紹介!
*******
私は『あん』を読んで、氏のエッセイ『ゲーテのコトバ (ゲーテビジネス新書)の中のフェデリコ・フェリーニの『道』を引用した一節を思い出した。
「この石がなんのためにここにあるのか、ぼくらには、わからない。でも、なにかのためにあるんだよ。神様だけが知っている」…勢いのある者たちがついつい見落としてしまいそうなもの。権力を持つ者たちが踏みつぶしてしまいそうなもの。そうしたもののなかに、人の物語がある。…たとえ今のあなたが、誰も振り向いてはくれない石ころのような存在であったとしても、あなたのなかに人類のすべてがあるのだから、自らを卑下する必要はない。あなたに宿る普遍的なものとともに、そっと息を合わせるだけでいい。
千太郎、徳江、ワカナの3人のように、誰しもそれぞれ「事情」を抱え、時には悩み、苦しみながら生きている。でも、満月の光は皆に届いている。決して希望を失ってはいけない。そんな勇気と優しさをもらった気がする。
今夜は、どら焼きを食べながら散歩をしようと思います。
*******
さいごに、
ドリアン助川『あん』発売記念イベント「トーク×人生相談×朗読LIVE」
http://www.youtube.com/watch?v=OIws5RG-CF8
ありがとうございました!こころが満足です!
m(_ _)m
« 「純愛小説」 篠田節子著 を読んで | トップページ | 利回りや株式相場に影響されない・リスク回避の企業年金設計 JPアクチュアリーコンサルティング(株) を読んで »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 瀬戸内寂聴さん(1922年5月15日~2021年11月9日、享年99歳)が51歳で得度される前年に出版、40歳から50歳までに書きためられたエッセイ「ひとりでも生きられる」を読んで(2025.03.16)
- 瀬戸内寂聴さん、70歳のときのエッセイ「孤独を生ききる」を読んで(2025.02.01)
- 瀬尾まいこ氏の著書は「あと少し、もう少し」、「図書館の神様」に続く、約6年ぶりの3冊目、2019年の本屋大賞にも選ばれた「そして、バトンは渡された」を、試験後の癒しとして読んでみました~!(2024.12.21)
- 岩波文庫「読書のすすめ」第14集、岩波文庫編集部編。非売品。最近、読書量が減っているので、薄いけど面白そうでしたので、古本屋さんで200円でしたので、買って読んでみました!うん、面白かった!!(笑)(2024.12.01)
- 新型コロナ禍の2020年6月から2021年6月末まで、朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載された、小池真理子著「月夜の森の梟」が文庫化されたので、一気に読んでみた~!(2024.02.16)
« 「純愛小説」 篠田節子著 を読んで | トップページ | 利回りや株式相場に影響されない・リスク回避の企業年金設計 JPアクチュアリーコンサルティング(株) を読んで »
コメント