「退職給付会計」について
退職給付に関する会計基準等の見直しについて、財務報告を改善する観点及び国際的な動向を踏まえ検討され、平成24年5月17日に公表された。
日本基準が国際会計基準のコンバージェンス(収斂)を目標としていることから進められている。この“背景”は「退職給付に関する会計基準」P11-12に書かれている。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/taikyu-4/
そこで、日本でも見直しが行われた。それに対する「退職給付制度」への対応策と共に所見を述べられるようにしておきたいと思う。
先に、会計基準改正の主なポイントは、次の通り。
(1) 未認識項目の即時認識
(2) 退職給付債務及び勤務費用の計算方法の変更
① 退職給付見込額の期間帰属方法の見直し
A) 期間定額基準
B) 給付算定式基準
② 割引率の見直し
③ 予想昇給率の見直し
(3) 開示の拡充
(4) 複数事業主制度の取扱いの見直し
(5) 長期期待運用収益率の考え方の明確化
適用時期は、
上記(1), (3), (5)は、平成25年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から
上記(2), (4)は、平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する
↑ココ、言い回しが少し違いますが、財務諸表は四半期毎に作成されるものもあるから、「期首から適用」という言い方もするのですね。しかも、適用時期については、年金法令・制度運営H24試験に出てましたネ。
とくに上記(1)について、未認識債務がBSに即時認識されることとなる。BSが退職給付債務の変動を直接反映されるため、退職給付債務に存在する様々なリスクに直接晒されることになる。
ü 金利リスク
ü 昇給(昇格)リスク
ü 脱退リスク
ü 死亡リスク
ü 一時金選択リスク など
退職給付会計改正後は、このリスクをより低減するような制度設計・制度の運営が必要となる。
制度設計による対応
・DC移行
・退職給付債務そのものの減額
・CB移行
・リスク回避策の実行/リスクの少ない退職給付制度の設計
例えば、こちらに、長寿スワップ、バイアウト、バイインについて
http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2010/2010spr10web.pdf
資産運用による対応
・リスク重視の資産運用
これは、退職給付会計では、長期期待収益率と運用実績との差が数理計算上の差異となりBSでの即時認識が求められる。重要なのは差異の発生確率ではなく、差異の発生額を一定確率以下にするという考え方である。これをリスク重視の資産運用という。
・マッチング戦略
・債券比率の増加
ここでは、金利上昇時には退職給付債務が減少するため財務上のリスクは小さくなるが、債券シフトをしていなければ得られたであろう財務上の利益も失うことになる。従って、実際に債券シフトを行う場合には、その時点における金利及び将来の金利動向も考慮する必要がある。
「制度設計による対応」、「資産運用による対応」について、より詳しくは『リスク回避の企業年金設計』を参照されたい。
今後は、DC(確定拠出年金)制度の採用率が高まることになると思う。その上で、DCをより魅力あるものとしていかなければならないと思う。
結果、「退職給付会計改正」を突き進めると、DCへの加速へとつながるようですネ~!
ちょっとまとまりきれませんが、以上となります。 m(_ _)m
≪参考文献≫
・第1分冊 我が国の年金制度(H25/6改訂版) P93-105
・リスク回避の企業年金設計-JPAC 第2章、第3章
・企業会計基準第26号 退職給付に関する会計基準
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