確定給付企業年金制度等における「基礎率」について
確定給付企業年金制度において、それぞれに関し使用する予定利率・予定死亡率について簡記しなさい。 【H22 2(1)改題】
(先週より、少し加筆しました)
①確定給付企業年金法第57条に規定する掛金の額の計算 【H23 2(4)①、H20 4(1)①/③】
(確定給付企業年金法施行規則第43条第2項第1号、第2号)
予定利率は、積立金の運用収益の長期の予測に基づき合理的に定められるものとする。ただし、国債の利回りを勘案して厚生労働大臣(法25版P190より、毎年定められている)が定める率を下回ってはならない。
この厚生労働大臣が定める率(下限予定利率)は、直近5年間に発行された10年国債の応募者利回りの平均又は直近1年間に発行された10年国債の応募者利回りの平均のいずれか低い率を基準として設定されたものであること 【法令解釈P205、4-55】
予定死亡率は、加入者等(加入者及び加入者であった者を言う。以下同じ)及びその遺族の性別及び年齢に応じた死亡率として厚生労働大臣が定める率(以下「基準死亡率」という。)とする。ただし、当該確定給付企業年金の加入者等及びその遺族の死亡の実績及び予測に基づき、次の各号に掲げる加入者、加入者であった者又はその遺族の区分に応じ、当該各号に定める範囲内で定めた率を基準死亡率に乗じたものとすることができる。
イ.加入者 零以上
ロ.男子であって、加入者であった者又はその遺族(ニに掲げるものを除く)
0.9以上1.0以下
ハ.女子であって、加入者であった者又はその遺族(ニに掲げるものを除く)
0.85以上1.0以下
ニ.障害給付金の受給権者(イに掲げるものを除く)
1.0以上
②確定給付企業年金法第60条第3項の厚生労働省令で定めるところにより算定した額(最低積立基準額)の計算 【H23 2(4)③、H20 4(1)②】
(確定給付企業年金法施行規則第55条第1項第1号、第2号)
予定利率は、当該事業年度の末日(当該事業年度の末日が1月1日から3月31日までの間にある場合にあっては、前事業年度の末日)の属する年前5年間に発行された国債(期間30年のものに限る)の利回りを勘案して厚生労働大臣が定める率とする。 【4-56、4-80】
予定死亡率は、基準死亡率に、加入者等が男子である場合にあっては、0.95を、加入者等が女子である場合にあっては、0.925を、それぞれ乗じて得た率とする。 【4-80】
③確定給付企業年金法第64条第2項に規定する積立上限額の計算 【4-80】
(確定給付企業年金法施行規則第62条第1号イ、ロ)
予定利率は、当該事業年度の末日における下限予定利率とすること。
予定死亡率は、「基準死亡率」に、次に掲げる加入者、加入者であった者又はその遺族等の区分に応じそれぞれ定める率を乗じた率とすること
(1) 加入者 零
(2) 男子であって、加入者であった者又はその遺族((4)に掲げる者を除く) 0.9
(3) 女子であって、加入者であった者又はその遺族((4)に掲げる者を除く) 0.85
(4) 障害給付金の受給権者 1.0 ((1)に掲げる者を除く)
④確定給付企業年金法並びにこれに基づく政令及び省令について(法令解釈)第一 二(2)に規定する給付の額の減額判定に用いる給付現価の計算に用いる指標の予測値の算定方法
【H23 2(4)②】
当該指標の直近5年間の実績値の平均値
↑当該資料とは、規則第28条第1項に規定する指標を用いている場合、とあり
確定給付企業年金法施行規則第28条とは、給付の額の再評価等の方法で、
その「指標」は、施行規則第29条に定められている。
一、定率
二、国債の利回りその他の客観的な指標であって、合理的に予測することが可能なもの
三、前二号に掲げる率を組み合わせたもの
四、前二号に掲げる率にその上限又は下限を定めたもの
前項各号の率は、零を下回らないものであることとする。
⑤確定給付企業年金施行規則第24条の3に規定する給付の現価相当額の計算方法
【4-35】
予定利率は、次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、それぞれイからハまでに定める率
イ.一時金としての老齢給付金の額の現価相当額を計算する場合
次に掲げる率のうちいずれか低い率
(1)前回の財政計算の計算基準日以降の日における下限予定利率のうち、最も低い下限予定利率
(2)老齢給付金支給開始要件を満たしたときにおける(1)に掲げる率
ロ.脱退一時金の額の現価相当額を計算する場合、原則イ(1)に掲げる率
ハ.障害給付金の額、遺族給付金の額の現価相当額を計算する場合、イ(1)に掲げる率
予定死亡率は、前回の財政計算において用いた予定死亡率とすること
⑥キャッシュバランスプランの場合の規約に定める数値は、支給する給付ごとの給付額算定基礎に応じて定めなければならない。 【4-38】
予定利率は、前回の財政計算の計算基準日以降の日における下限予定利率のうち、最も低い下限予定利率を下回らないものを使用すること
予定死亡率は、前回の財政計算時に用いた予定し号率を使用すること
⑦確定給付企業年金法施行規則第52条に規定する「簡易な基準」に基づく確定給付企業年金の掛金の額の算定 【4-96】
予定利率は、下限予定利率以上4.0パーセント以下の範囲内とすること。
予定死亡率は、第62条第1号ロに規定(積立上限額を算定する際に使用)する予定死亡率とすること
⑧退職給付会計における退職給付債務の計算に用いる割引率 【H20 4(1)④、H18 2(3)】
割引率の基礎とする「安全性の高い長期の債券の利回り」のうち、「長期」とは退職給付の支払時までの残存期間を対象にする。
(注)
会計上の割引率とは現価計算を用いる利率のことをいう。
【退職給付会計に係る実務基準 H20改定版 P3より】
退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定する。
割引率の基礎とする安全性の高い債券の利回りとは、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。
【退職給付会計に関する会計基準 H24改定版 P5より】
退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定するが、この安全性の高い債券の利回りには、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りが含まれる。
優良社債には、例えば、複数の格付機関による直近の格付けがダブルA格相当以上を得ている社債等が含まれる。
割引率は、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければならない。当該割引率としては、例えば、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれる。
【退職給付会計に関する会計基準の適用指針 H24改定版 P10より、H24 2 (1)】
割引率変更の要否
割引率は期末における安全性の高い債券の利回りを基礎として決定されるが、各事業年度において割引率を再検討し、その結果、少なくとも、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直し、退職給付債務を再計算する必要がある。
重要な影響の有無の判断にあたっては、前期末に用いた割引率により算定した場合の退職給付債務と比較して、期末の割引率により計算した退職給付債務が10%以上変動すると推定されるときには、重要な影響を及ぼすものとして期末の割引率を用いて退職給付債務を再計算しなければならない。
【退職給付会計に関する会計基準の適用指針 H24改定版 P12より、H24 2 (1)】
<役割・目的> 【H20 4(1)より、テキストには記載無いようである】
①予定利率:収支相等を前提とした掛金率の算定や長期的に健全な財政運営を可能とすること
②非継続利率:制度終了時における最低保全給付の市場価格(超長期のリスクフリー資産の利回り)による現価の算定を行うこと。
③下限予定利率:中長期的なリスクフリー資産の運用における利回りを下限とすることで、掛金の過大な損金算入を防ぐこと
④割引率:比較可能性を前提とした適正な債務及び費用の測定を行うこと
参考:基礎率の合理的な設定についての考え方 【退職給付会計に係る実務基準 2頁より】
・経済変数的な基礎率
・人口統計的な基礎率
それにしても種類が多いですネ。不足・不備がございましたら、ご指摘願います。
よろしくお願いいたします。
m(_ _)m
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