株価と金利の相関関係について
「すべては統計にまかせなさい」を読ませていただいて、ふと思うところがありましたので、書きとめておきたいと思います。
「一流の決断力」(植田兼司著)の中に次の記載がありました。
(前略)
これまでの日経平均株価の歴史的高値は1989年12月の38,915円です。私はその年の2月、日経平均が31,000円台のとき、講演会のレジュメに
「雲ひとつ なきぞ悲しき 平成の 相場にありて 落日を知る」という副題をつけました。
なぜなら、それまでの経験からいって、株式相場の反転下落をもたらす可能性の高い公定歩合の第一次引き上げが近いと見通していたからです。当然ながら金利が上がれば株価は下がる、逆相関の関係にあるのです。実際、公定歩合はその年の5月に2.5%から3.25%へ引き上げられ、年が明けると予想通り、バブル崩壊で株価は下落の一途をたどりました。その後日経平均は2008年10月に6,994円まで下落し、株価の下落目途として言い慣わされていた「半値、八掛け、二割引」(ピークの32%)のレベルを大きく割り込んだのです。個別銘柄を見ても、東京電力が9,420円(1987年)から120円(2012年)、野村證券が5,990円(1987年)から223円(2011年)というようにすさまじい暴落を経験した。
物事を注意深く観察し、さらに現状を確認することがまず基本です。その結果、自分の中に「大丈夫」(楽観)と「危ない」(悲観)が交錯し、決断に迷ったときは、悲観的な見方をベースにおいて考えて間違いありません。
確かに一般的には、「金利」が上昇すると「株価」は下がるといわれているようです。日本証券業協会のHPにも次の記載がありました。
理由の一つは、金利が上昇すると、株価の上昇要因である会社の業績に陰りが出てくるからです。会社の借入金の支払利息の増加が収益を圧迫したり、借入金を前提にした設備投資を見直したり抑制するようになるため、生産活動が停滞し、業績が伸びなくなるからです。
また、投資家サイドでは、住宅ローン等の金利上昇で支払利息が増え、消費が手控えられる一方、預貯金金利が上昇し、消費や株式投資より貯蓄の魅力が相対的に高まるため、株式を売却して預貯金にお金を移す動きが出てきて株価が下がることになります。
反対に、金利が下がると株価は上昇するといわれます。預貯金金利が低くなり魅力が薄れ、株式市場に資金が流れてくると考えられるからです、と。
ところが、生保1の「商品毎収益検証」のテキストを開くと、
『株価』と『金利』との相関関係については分からない、とありました。
【10章-12頁において】
・株式等の価格と金利の相関関係は正確にはわからないこと、株式等の価格の変動のリスクは、価格変動準備金を含むソルベンシー・マージンで別途担保されていることから、日本の実務基準では、原則として株式等の価格の変動は金利のシナリオに含めなくてもよいことになっている。つまり、日本の実務基準にしたがって責任準備金の積み立てが可能かを検証する場合、別途、財務諸表上のリスク準備金がなされているので、原則として、株式等の価格の動向を金利のシナリオの一部として設定する必要はない。
【10章-98頁において】
・実務基準において、株式等の資産の価格変動による損益を除外しているのは、これが必ずしも市場金利に連動していると実証されたものではないこと、これらの価格変動は、別途、ソルベンシー・マージンで考慮すべきもの、と考えられるからである。
また、2000年以降は、逆相関というよりも正の相関を示している、とも言われてもいるそうです。
金融の自由化以降、政策的に金利が設定されるというより、例えば、先行きに対して強気の見方があるときは、株式に期待が持てるので、売買が活況になり、株式相場は上昇。企業経営者は設備投資を増やしますので、金利も上昇していくと。
実際に、現在の日経平均株価と10年国債金利は正の相関で約0.7となるようです。
さて、今後はどうなるのでしょうか?
アベノミクスにより、お金をいっぱい刷っているのでしょうから、貨幣価値が下がり、インフレとなって、金利が上がるのか。
それとも、現在、日経平均株価が上昇傾向にある中で、“一般論”として、逆の相関となり金利が下がる(下がったまま)となるのか。
ここで、世界ランキング統計局によると、世界5大陸214都市を対象に最も物価の高い都市は「東京」だそうです。世界一物価の高い都市だそうです。
ベスト10には、大阪(3位)、名古屋(10位)も入っています。
インフレにして金利を上げ、いま以上に物価を上げる必要があるのでしょうか?
日本の国の1000兆円を超える借金の支払利息も増えます。かたや、
公的年金のことを考えると資産運用利回りを出す必要があり、複雑なところもありますが・・・
引き続き「株価」と「金利」の相関関係は、注意深く観察をしていきたいと思います。
m(_ _)m
参考:世界ランキング統計局
http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-167.html
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