「55歳からのハローライフ」 村上龍 著 を読んで
はじめ、あの『13歳のハローワーク』に続く中高年版かなと思い、『55歳からのハローワーク』と読み間違えていましたが“ハローライフ”でした。
なるほど、確かに“ハローライフ”だと思いました。
物語は、次の5編からなる短(中)編集となります。
結婚相談所
空を飛ぶ夢をもう一度
キャンピングカー!
ペットロス
トラベルヘルパー
≪結婚相談所≫
晴れて夫と離婚したものの、経済的困難から結婚相談所で男たちに出会う、紅茶好きの中米志津子58歳が主人公。
今日も結婚相談所へ行く途中の喫茶店で、一人の失恋で泣き崩れている青年と出会う。 その後、一夜を共にするのですが、その時に観た映画が「ひまわり」(女優はソフィア・ローレン、男優はマルチェロ・マストロヤンニ)。懐かしいですネ・・・
その「ひまわり」になぞらえて、中米志津子がその青年に語る言葉が印象的でした。
「うんと遠くにいる相手の所まで行って大切な何かを伝えるって、それだけで、すごい価値がある気がする。誠意がないとだめだし、相手のことを愛していなければできないことだし、でも、そうすることで、気持ちを尽くすことができるでしょう?尽くすって、全部使ってしまうという意味と、相手のために何か努力するという意味があるけど、その両方があなたの彼女にも、ソフィア・ローレンにも、そしてソ連で所帯を持った元夫にも、もちろんあなたにも、その両方がね、必要だったんじゃないかなって思うの」
そう感じて、当時「ひまわり」を観てはいなかったな~、と思いました。
≪空を飛ぶ夢をもう一度≫
私大文学部出身、小さな出版社を54歳でリストラされて4年。今は、派遣社員として、道路工事の交通誘導員をしている因藤茂雄が主人公。その工事現場で、ホームレスとなっている中学時代の同級生福田に出会う。
今回の旅で、おれは、いろいろとわかったよ。実は、おれのほうも、不安だらけで、正直、生きるのが苦しい。しかし、少なくとも家族がいて、まだ生きている。そして、生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかもしれない。・・・
≪キャンピングカー≫
定年後の夢は、妻とキャンピングカーで日本全国を旅することであった。
そして、いざその時になってみると、妻からは断られて、再就職を試みることとなる。その再就職の壁の高さにぶつかり試行錯誤する物語。
≪ペットロス≫
とくに印象に残ったところ
きっと大勢の人が、いったい自分は何のために生きているのかという無力感に襲われることがあることと思う。小生は、ボビー(飼い犬)に教えられたのである。生きようという姿を示すだけで、他の誰かに何かを与えることができるのではないか。ボビーは、末期になると、歩くことも立ち上がることも、座ることさえできなくなった。だが、動物だから当たり前と言えば当たり前ではあるのだが、それでも、生きようとしていたのである。
(中略)
人間でも犬でも、息も絶え絶えになってからでも、死の間際にでも、他の人に勇気と感動を与えることができるのだと、強く実感した。だから、たとえ、どれほどの苦しい状況に追い詰められても、簡単に死を受けいれてはいけないのだ。ボビーが、そのことを、身を持って教えてくれた。生きようと言う姿勢だけで、いや存在するだけで、ボビーは私たちに、力をあたえてくれたのである。
あと、お茶の効用として、次の一文がありました。
「とにかくまずお茶を飲んで気持ちを落ち着かせる。そこが出発点だ。」
≪トラベルヘルパー≫
63歳の元トラックドライバー(今はときどき近距離のトラック便のアルバイトをしている)下総源一と元小学校教師の50代の堀切彩子が主人公。
後は読んでみてください!
下り坂中高年にとっては、とても興味深く、楽しく読むことができました。
物語の主人公に共通している点で、お茶(紅茶)好きなひとが多いこと。そして、自分のできる範囲でがんばっているひと達でした。
下り坂中高年もまだまだがんばりたいと思いました!
m(_ _)m
ソフィア・ローレンです。野生美の魅力ある女性ですよネ。
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