「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野 晶午著 を読んで
「イニシエーション・ラブ」に続き読んでみた「ミステリー小説」です。
2004年のあらゆるミステリーの賞を総なめにしたそうですね。
嫌な場面もあったりしますが、ストーリー(流れ)としては、面白かったです!ありがとうございました!m(_ _)m
最後の20ページは一気に読みましたネ!
「叙述トリック」を使われているそうですが、「叙述トリック」とは、文章上の仕掛けによって読者のミスリードを誘う手法。具体的には、登場人物の性別や国籍、事件の発生した時間や場所などを示す記述を意図的に伏せることで、読者の先入観を利用し、誤った解釈を与えることで、読後の衝撃をもたらすテクニックのこと、だそうです。
ちょっと思ったのは「叙述トリック」の場合、画像化(TV化、映画化)は難しいだろうナ~、と感じましたヨ。
回想シーンで過去に戻ることはありますが、舞台は2002年の8月から秋にかけてとなります。
【主な登場人物】
成瀬将虎(なるせ まさとら):自称「何でもやってやろう屋」。2歳年下の妹・綾乃と二人暮らし。探偵事務所に勤めていたこともあるが、半人前になる前に辞めてしまった。しかし、元探偵とキヨシに見栄を張ったために愛子から依頼を受けることとなる。
麻宮さくら(あさみや さくら):人生に悲観し、地下鉄に飛び込もうとしたが、将虎に助けられる。
芹澤清(せりざわ きよし):将虎の出身高校の後輩。同じフィットネスクラブに通う久高愛子に想いを寄せている。
久高愛子(くだか あいこ):白金台の高級住宅街に住む。聖心女子学院に初等科から通っていたお嬢様。
古屋節子(ふるや せつこ):主婦。何でも買ってしまう癖が直らず、蓬莱倶楽部(悪徳商法詐欺集団。ただの水を1本2万円で売ったり、100万円する布団を売りつける)にカモにされる。借金返済のために倶楽部の犬となり、言うままに行動し、犯罪に加担してしまう。
安藤士郎(あんどう しろう):将虎の友人。将虎は安(やす)さんと呼ぶ。将虎が講師を務めるパソコン教室で生徒として出会った。離婚した妻の子の写真を撮ってきてほしいと将虎に頼む。
蓬莱倶楽部(ほうらいくらぶ):悪徳商法詐欺集団。ただの水を1本2万円で売ったり、100万円する布団を売りつける。
この物語の中では、高齢になっても活躍された方が紹介されています。
『ジョン・グレン』
ジョン・グレンは、1921年7月18日、アメリカのオハイオ州ケンブリッジで生まれました。マスキンガム大学の工学部を卒業し、アメリカの元海兵隊戦闘機パイロット、宇宙飛行士、政治家。
グレンは上院議員になり、最初の飛行から36年後、77歳の高齢で2回目の宇宙飛行に挑戦しました。(日本の女性宇宙飛行士の向井千秋さんがこのミッションの一員として参加しました。)
ディスカバリーは1998年10月29日に打ち上げられました。9日間のミッションの間に、クルーはいろいろな実験プロジェクトを行ないました。213時間44分かけて134回地球をまわり、540万キロメートルの飛行を成し遂げました。
そういえば、
江戸時代、福岡在住の儒学者 貝原益軒も、83歳のときに、実体験に基づいて書かれた 『養生訓』(ようじょうくん)がありましたね。身体の養生だけでなく、こころの養生も説いた、健康な生活の暮し方についての解説で、彼の著作の中でも最もよく読まれたものです。
それと、著者は、社会保障制度(P400)、平均寿命、平均余命(P465)を勉強されていて、
少子高齢化社会における世代間の不公平から高齢者を狙った悪徳詐欺集団を、これをまた、高齢者軍団がこらしめるということで、興味が湧いた物語でした。
あと、覚醒剤が1951年6月に覚せい剤取締法が施行されるまで合法ドラッグであったことは知りませんでした。しかも、戦時中は国家が戦闘意欲と集中力を高めるために配給までしていたようです。(P454)
戦争はやっぱり最低ですよネ!
ここからは、「葉桜の季節に君を想うということ」の少しネタばれとなります。
ご了承願います。m(_ _)m
この物語では、高齢者が活躍します!そう、「葉桜の季節の人たち」ですネ!
成瀬将虎(なるせ まさとら):1931年12月16日生まれ、物語当時70歳! (P409, 464)
妹の綾乃は68歳(P461)
麻宮さくら(あさみや さくら):70歳!また、古屋節子(ふるや せつこ)でもある。(P462)
芹澤清(せりざわ きよし):将虎の出身青山高校の7年後輩なので、63歳!(P20)
久高愛子(くだか あいこ):おばあさん
安藤士郎(あんどう しろう):亡くなられた2年前で72歳!(P231)
将虎おじいさんの言葉より、
「20歳の俺も70歳の俺も、ジャイアンツの勝ち負けに一喜一憂している。相変わらず負けず嫌いで見栄っ張り、車が好きで、つらい時には酒に頼る。女を口説く前にはドキドキし、二人きりになると抱きしめキスしたくなるのも、20歳の頃と何も変わっていない。勃起不全治療剤に頼らなければならないのはご愛嬌だ。20歳のとき俺は探偵で、70の俺も探偵である。フットワークは軽いし、新事実を掴むたびに感情の高ぶりをおぼえた。しかも幾多の障害を乗り越えてきちんと結果を出したのだから、実は自分は探偵にむいているのではないかと、さっきから沈黙が訪れるたびに、警察の向こうを張って活躍する己を想像し、心の中でニマニマしている俺である。」
いやはや、ベンチプレス80キロを上げ、腹筋も6パックの70歳の将虎おじいさん、面白いと思いました。
今は2014年、物語当時から12年が経ち、将虎おじいさんも84歳となりますが、続きとして、
『落葉の季節に君を想うということ』 があると面白いナ、と思いました!
そして、最後のページには、次の言葉が、
『人生の黄金時代は老いてゆく将来にあり、過ぎ去った若年無知の時代にあるにあらず。』
祖父の代から続くキリスト教牧師の家に生まれた「林語堂(りん ごどう、1895年10月10日 - 1976年3月26日、中華民国の文学者・言語学者・評論家)」の言葉です。
ここで、少し林語堂氏の言葉をいくつか紹介!
「ユーモアの重要性を忘れてはならない。ユーモアのセンスは我々の文化生活の内容と性質を変える。現代人は、あまりにも生活を深刻に考えすぎる」
「真の読書法とは何か。答えは簡単である。気分が向けば、書を手にとってこれを読む。ただそれだけのこと。読書を心から楽しむには、どこまでも気の向くままでなければならない」
「民衆が飢えたとき、どのような巨大な帝国も滅びる」
「自分の仕事が自分に適していて好きだということは、われわれの望みうる最上のことである」
「幸せの秘訣は、自分が思う存分、力を発揮できる、仕事をみつけることである」
とても、いいですネ!!!
ありがとうございました!
m(_ _)m
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