「社会保障制度改革国民会議報告書」を読んで
今週末のアク研に向けて、考えてみました。(゚ー゚;
平成24年度、「社会保障・税一体改革」に関連して、年金制度では4つの法律が可決・成立した。
公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律
(年金機能強化法)
・基礎年金国庫負担割合を2分の1に恒久化
・年金の受給資格期間の短縮(25年→10年)
・パート労働者への社会保険の適用拡大 等
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律
(被用者年金一元化法)
・共済年金と厚生年金の一元化
国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律
(国民年金法等改正法)
・平成24年度及び25年度の基礎年金国庫負担割合2分の1の維持
・「物価スライド特例分の解消」 等
年金生活者支援給付金の支給に関する法律
(年金生活者支援給付金法)
・新たな低所得高齢者・障害者等への福祉的給付措置(年金機能強化法の附則に基づくもの)
この中で、
「物価スライド特例分の解消」とは、
かつて特例法でマイナスの物価スライドを行わず年金額を据え置いたこと等により、2.5%、本来の年金額より高い水準の年金額で支給している措置について、早急に計画的な解消を図る。今の受給者の年金額を本来の水準に引き下げることで、年金財政の負担を軽減し、現役世代(将来の受給者)の将来の年金額の確保につなげるとともに、その財源を用いて社会保障の充実を図るものとする。
そして、「マクロ経済スライド」の検討
デフレ経済化においては、現行のマクロ経済スライドの方法による年金財政安定化策は機能を発揮できないことを踏まえ、世代間公平の確保及び年金財政の安定化の観点から、デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。
マクロ経済スライドの適用については、物価スライド特例分の解消の状況も踏まえながら、引き続き検討することとなっている。
物価及び賃金が低下傾向である中でのスライド調整率の適用要否を検討する必要はあるのかもしれない。スウエーデンでは実施されているようです。
低所得者・不安定雇用の労働者への対応 (社会保障制度改革国民会議P10-11)
日本の社会保険制度は、低所得者や無職者でも加入できるよう工夫した仕組みであるが、非正規雇用の労働者等が増大する中で、制度的に被用者保険制度の適用から除外されている者が増大し、他方で国民健康保険などでは低所得のために保険料を支払うことが難しくなる者が増加してきた。
グローバル化等による雇用の不安定が、格差・貧困問題の深刻化につながらないよう、働き方の違いにかかわらず、安定した生活を営むことができる環境を整備することが重要である。このためには、まずは、非正規雇用の労働者の雇用の安定や処遇の改善を図ることが必要であり、また、非正規雇用の労働者に対して社会保障が十分機能するように、こうした労働者にも被用者保険本来の姿に戻し、制度を適用されるようにしていくこと(被用者保険の適用拡大)が重要である。
格差・貧困問題の深刻化は、社会の統合を脅かし、社会の分裂を招くとともに、多くの人の能力が発揮されずに終わり、社会的な連帯意識も弱まり、扶助費や行政コストの肥大化を招くことになる。こうした格差・貧困問題を解決するためには、誰もが働き、安定した生活を営むことができる環境を整備するとともに、税制や社会保障制度を通じて、負担できる者が負担する仕組みとするなど所得再分配機能をも強化しつつ、経済政策、雇用政策、教育政策、地域政策、税制など、様々な政策を連携させていく必要がある。
一方で、雇用基盤の変化や家族や地域との結びつきを形成できずに高齢期を迎える者が増加し、低所得で社会的な結びつきの弱い単身高齢者の急増が予測されている。年金、医療、介護における低所得者対策の強化に加え、税制抜本改革法の規定に基づく「総合合算制度」(医療、介護、保育等に関する自己負担の合計額に一定の上限を設ける仕組みその他これに準ずるものをいう。)の創設の検討を進め、貧困リスクの高まりに対応するとともに、必要な社会サービスの利用から低所得者が排除されないようにすることが重要である。
こうした施策を実行していくためには、年金税制等により優遇されている高齢者の問題などを検討し、低所得者をより適切に把握できるような仕組みを目指すことが重要である。
短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大-平成28年10月1日より
現行週30時間以上(所定労働時間の4分の3以上)から
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
②その事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること
③賃金月額が88,000円以上であること
④学生等でないこと
⑤通常の労働者およびこれに準ずる労働者を常時500人を超えて使用する事業所に使用されていること、これらの要件を満たした短時間労働者が対象となります。
また、被用者保険の適用拡大では、所得代替率の改善も見込まれるようである。
一方で、
厚生年金の標準報酬の最低額は9万8000円、保険料月額は労使合わせて約1万5千円、うち労働者側の負担は約7500円である。他方、国民年金の保険料月額も約1万5千円である。厚生年金の負担(使用者側負担もあわせて)がわずかに高く、加入者が基礎年金に加え、厚生老齢年金を受給する合理性があるといえる。
加入要件を緩和して、促進できるのであれば、第3号被保険者の課題、及び年金加入率を促進させるためにも、良いのかもしれない。
ただし、標準報酬月額を今以上に引き下げてしまうと、労使合わせた保険料が国民年金保険料より低くなり、合理性が失われてしまうといわれているので、その点は留意が必要なのかもしれません。
また、対象とする所得を引き下げて、年金はそれなりに支払おうとすれば所得代替率は改善されるかもしれませんが、年金財政は悪化するように思えています。
ここで、念のため「所得代替率」とは、
厚生年金においては、現役世代の平均的なボーナス込みの手取り賃金に対する新規裁定時の年金額の割合を「所得代替率」と呼んで、給付水準設定の基準としています。
標準的な世帯とは、夫が平均的収入で40年間就業し、妻がその期間専業主婦であった世帯をいいます。
高所得者の年金給付の見直し (社会保障制度改革国民会議P43)
例えば、高所得者の老齢基礎年金について、国庫負担相当額までを限度に減額する制度という案もあるらしい。
支給開始年齢の引き上げ
世界一の長寿国である日本。
先進諸国(欧米)の平均寿命・受給開始年齢を参考にして、高齢者の雇用の確保を図りつつ、68~70歳への更なる引き上げを視野に検討することが必要なのかもしれません。
世代間の公平論に関して、給付は高齢世代中心で、負担は現役世代中心という構造から、「全世代対応型」への転換を進めるとともに、持続可能性と将来の給付の確保に必要な措置を着実に進めるメカニズムを制度に組み込んでいくことが求められるところである。
また、少なくとも5年に1度実施することとされている年金制度の“財政検証”については、一体改革関連で行われた制度改正の影響を適切に反映することはもちろん、単に財政の現況と見通しを示すだけでなく、課題検討に資するような検証作業を行い、その結果を踏まえて遅滞なくその後の制度改正につなげていけるようにする必要があると思う。
↓「社会保障制度改革国民会議報告書」となります
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/houkokusyo.pdf
全世代で「少欲知足」に取り組もう!?
難しい問題です・・・・・ありがとうございました。 m(_ _)m
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