« 「中退共」と「特退共」のちがい | トップページ | 「永遠のディーパ」 垣根涼介著 を読んで »

2014年11月30日 (日)

ポータビリティについて

2ヶ月連続で、平日の勉強会にでられず、とてもざんねんでした。

今回、少しは予習をしていたのですが、それでも勉強不足は免れず、とても「所見」とは言えませんが、整理をしておきます。

設例

『現在の”ポータビリティ”の仕組みを述べ、国民全体の老後所得の確保という観点からあるべき”ポータビリティ”について所見を述べよ。』

 

ポータビリティとは、複数の年金制度間で給付算定期間を通算し、その通算を前提に年金制度間で年金資産を移換することを指す。給付算定期間を通算することにより、年金の受給資格を取得しやすくなり、また年金資産は非課税で年金制度間を移換できるため、加入者の利便性向上にも寄与する。

このポータビリティは、従来は厚生年金基金から企業年金連合会への移換等、一部限定された取り扱いであったが、平成1710月より大幅に拡充された。

ただし、確定拠出年金から他の制度への移換はできず(確定拠出年金への移換は可能)、また適格退職年金制度は上記制度の対象外である。 

 

ポータビリティの方法は具体的には以下の2つに区分される。

脱退一時金相当額の移換

 移換元で一時金の受給資格を取得した脱退者について、将来の年金受給を目的に、脱退者の申し出により移換元の脱退一時金(移換先の規約に基づいた給付額が上限)を移換し、移換先の年金制度に基づき給付を行うもので、移換元の給付内容を引き継ぐ必要はない。(ただし、移換元の加入期間を移換先の加入期間の一部とすることは可) 通常は企業年金連合会や確定拠出年金に移換して、当該年金制度より年金受給することとなるが、移換先の規約に定めがある場合は、厚生年金基金・確定給付企業年金への移換も可能である。なお、移換対象者は「中途脱退者」(資格喪失時点で年金の受給資格を持たず、加入員期間20年未満の者)に限られる。

 

権利義務の移転

合併・企業再編等により他の制度に移転する場合の不利益を抑止するため、継承先制度において移転元制度の給付内容を引き継ぐものであり、基本的に事業所単位で移転を行う(個人単位でも可)

移転元の義務を引き継ぐため加入期間は原則として全て通算することとなる。また移転先の制度に給付水準を合わせた結果、給付減額となる場合には減額手続きが必要となる。権利義務の移転を行う場合、対象者から同意を得る必要があり、同意を得られれば年金受給権者についても行うことができる。

移換額は継続基準・非継続基準に基づいた合理的な方法で年金資産を按分した額とすることが一般的であるが、その算出方法は双方の制度間で取り決める必要がある。

 

(補足)「中途脱退者」について

中途脱退者とはポータビリティ制度の対象者となる者である。平成1710月のポータビリティの拡充に伴い、「中途脱退者」の定義は一部見直され以下の通りとなった。

「中途脱退者」の定義

・資格喪失者であること(従前は確定給付企業年金については、代行返上前の厚生年金基金の加入期間を有する資格喪失者に限定されていた)

・資格喪失日時において、老齢年金給付の受給権が無いこと

・加入期間が20年未満であること(従前15年未満であった)

上記要件を満たす範囲で厚生年金基金、確定給付企業年金においては、加入期間20年未満の範囲で、それぞれ規約で定めることとなっている。(加算年金(老齢給付金)の受給資格を満たない者など。)

また、厚生年金基金においては、加入員期間10年未満の加入員は必ず中途脱退者とする必要がある。  【第1分冊 P55-58より】


企業年金等の通算措置(ポータビリティの拡充)の細部について、「企業年金等の通算措置に係る事務取扱準則」、平成17101日から施行された。  (年金2 H18 14)で出題)

 

厚生年金基金又は確定給付企業年金の資格喪失者の選択肢、(ア)~(エ)

 

(ア) 資格を喪失した日から1年以内に再就職した場合であって、再就職先の事業所が基金又は確定給付企業年金を実施しており、かつ当該制度の規約に脱退一時金相当額の移換を受ける旨の定めがある場合又は当該事業所が確定拠出年金を実施している場合

当該事業所が実施する企業年金制度又は企業年金連合会への脱退一時金相当額の移換及び脱退一時金の受給

 

(イ) 資格を喪失した日から1年以内に再就職した場合であって、再就職先の事業所が基金又は確定給付企業年金を実施しており、かつ当該制度の規約に脱退一時金相当額の移換を受ける旨の定めが無い場合

  企業年金連合会への脱退一時金相当額の移換及び脱退一時金の受給

 

(ウ) 資格を喪失した日から1年以内に再就職した場合であって、再就職先の事業所が企業年金制度を実施していない場合、資格を喪失した日から1年以内再就職しなかった場合又は国民年金の第1号被保険者になった場合

  次の場合に応じ、それぞれ次の選択肢

個人型確定拠出年金の加入者になった場合

企業年金連合会又は国民年金基金連合会への脱退一時金相当額の移換及び脱退一時金の受給

 個人型確定拠出年金に加入しない場合(個人型確定拠出年金の運用指図者である場合を含む)

企業年金連合会への脱退一時金相当額の移換及び脱退一時金の受給

 

(エ) 資格を喪失した日から1年以内に基金の老齢年金給付の受給権を取得することとなるものである場合にあっては、その旨及び受給権を取得する日までの間に他の企業年金制度、企業年金連合会若しくは国民年金基金連合会への脱退一時金相当額の移換又は脱退一時金の受給が行われなかった場合は、当該基金から老齢年金給付又は一時金たる給付を支給することとなる旨

 

制度間のポータビリティの現状と論点    【企業年金部会2014/10/31より】

 

転職等をした場合の企業年金の年金給付

企業年金加入者が転職等をした場合には、将来の給付は、各々の企業年金に加入した期間等に応じて、それぞれの企業から別々に支給が行われる。

この場合、転職等をしたことにより、例えば、年金として支給を受けるための加入者期間を満たさず、将来年金としての支給を受けられなくなる可能性がある。

そこで、同じ期間働いたとしても、転職したかどうかによって、将来年金としての支給を受けることができなくなる可能性があるなど、企業年金としての役割が十分に果たせない可能性がある。

 

制度間のポータビリティと加入者の選択肢の拡大

制度間のポータビリティとは転職時等に制度間(例:DBDC)の資産移換を可能とするもの。

※例えば、企業DBで積み立てた資金は、転職時に転職先の企業年金(DC等)に資産を移換し、当該移換資金も合わせた形で転職先の企業年金を実施することができる。

より多くの制度間のポータビリティを拡充することで、個々人の選択肢が広がるなど、継続的な老後の所得確保に向けた自助努力が行いやすい環境となる。

 

転職時等の制度間のポータビリティの範囲については、全ての転職に対応できていないのが現状。

※例えば、DB実施企業の従業員ABが転職をする場合、転職先の企業や、職種等によって、資産の移換が行えない場合がある。例えば、DBから中退共実施企業は不可、DBから自営業者となる場合に国民年金基金への移換も不可である。

(注1)移換できなかった資産については、個人別管理資産として個人型DCに移換され、積み増しができなくなる。

(注2)DB間、DC間等、同制度間のポータビリティは確保されている。

※DBの脱退一時金については、本人の申出により、支給に代えて脱退一時金相当額をDCに移換可能。

 

制度間のポータビリティの「論点」

 制度間のポータビリティについては、離転職時に資産移換できない制度間で移動した場合に、それぞれの制度から将来の給付を受け取らざるをえないなど、老後所得確保という視点で見ると、加入者の選択肢を制約している状況にある。

 就労形態が多様化する中、加入者の選択肢を拡大し、老後所得確保に向けた自助努力の環境を向上させるため、現在、制度間のポータビリティがない部分について、現場のニーズを踏まえつつ、原則として認めていく方向で検討してはどうか。

 現在それぞれの制度において、制度固有の考え方に基づき税制上の恩恵が与えられており、制度間で資産移換を認める場合については、それぞれの制度で税制優遇を引き続き受けることができるような移換の仕組みとなるよう検討が必要。

 中小企業退職金共済制度とのポータビリティの拡充については、労働政策審議会の議論が必要。

【確定拠出年金の課題について(H24 4B)、中小企業への普及策(H25 4B)より】

現行ではDBからDCへの移行のみ可能であるが、まず、DBからDCへの移行について、移換相当額の算出方法と、移換の際の加入者拠出分の2点に関して問題があると考える。

1点目の移換相当額の算出方法であるが、現行では減額前後の最低積立基準額の差額として算出される。最低積立基準額は、若年齢層では自己都合事由分が減額されるうえ、割引期間が長いので高年齢層と比較して移換相当額が小さく算出され、不公平感がある。

そこで、数理債務や給付現価等で按分する方法も認められてよいのではないだろうか。労使間で十分話し合い、規約に按分方法をあらかじめ定める等の対応により不公平感を解消していけばよい。

また、個人別管理資産に充当する額は移換相当額であるとされており、DB制度に剰余金がある場合でも当該剰余分は個人別管理資産には充当されないこととなっている。

一方で、制度終了による残余財産は個人別管理資産に充当できるため、減額によるDC移行についても、剰余金相当分を分配し、個人別管理資産に充当できるようにすべきである。その際の移換相当額の算定についても、要支給額で数理債務等、あらかじめ定められた基準で算定されることが望まれる。

 

2点目のDBの加入者拠出分の移行について述べる。DBの加入者拠出は税制上、生命保険料控除が適用され、拠出時に課税され、給付時には非課税という取り扱いとなっている。一方、DCでは拠出時に非課税であり、給付時に課税される取り扱いになっているため、DBからDCへ移行する際、拠出時と給付時で二重課税されることになる)」

現行法令上は、「二重課税となることを十分説明すること」とされているのみであるが、DCへの移行は会社の都合による場合がほとんどであり、ほかの対応も追加すべきではないだろうか。受給権を保全する対応が必要と考える。

 

現行では、DBからDCへの移行は可能であるが、DCからDBへの移行は認められていない。確かに、定額制や給与比例制など、ある時点において個人の持分が不明確な制度の場合、DCとのポータビリティーは困難と考えられるが、ポイント制やキャッシュバランスプラン制度の場合、個人別管理資産額を既得ポイントや仮想個人勘定残高に置き換えることによって十分可能だと考える。

また、DC制度は、給付時にも運用指図者となって、運用を継続して行わなければならない。特に老齢期になっても運用を継続していくためには自己責任でリスクを取っていく必要があり、相当程度の労力が必要となる。そこで、加入者であるうちは自己責任において運用を行い、給付時になればDB制度に移換して、移換時の個人別管理資産額に基づいて算定した確定給付を受けられるようにすれば、自己責任というハードルが下がり、よりDC制度の発展につながると考える。

 

公務員や専業主婦等となった者についても、個人型に加入する、ないしは企業型に継続して加入できる等の改正を行い、より多くの人へDC制度を広め、(同時にDB制度へのポータビリティを可能にし、)DC制度をより魅力あるものにしていくべきであると考える。

m(_ _)m

 

« 「中退共」と「特退共」のちがい | トップページ | 「永遠のディーパ」 垣根涼介著 を読んで »

勉強・試験関連」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ポータビリティについて:

« 「中退共」と「特退共」のちがい | トップページ | 「永遠のディーパ」 垣根涼介著 を読んで »

フォト

最近の記事

2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

最近のコメント

最近のトラックバック

ウェブページ

無料ブログはココログ

Twitter

  • twitter

このブログ内で検索