「永遠のディーパ」 垣根涼介著 を読んで
これは、“君たちに明日はない”シリーズのパート4となります。
次の4編で構成されています。
・勝ち逃げの女王
・ノー・エクスキューズ
・永遠のディーパ
・リヴ・フォー・トウデイ
「勝ち逃げの女王」は、航空会社の勝ち組CAのこと。会社はJALの想定ですよネ。
「ノー・エクスキューズ」は、破綻した証券会社のOBのこと。想定は、山一證券ですネ。
「永遠のディーパ」は、楽器メーカーのリストラの物語
「リヴ・フォー・トウデイ」は、ファミレスのリストラ、スカイラークを想定されていますネ。
毎回、勉強になります!m(_ _)m
単行本のときの表題は「勝ち逃げの女王」でしたが、文庫化では「永遠のディーパ」に改題されています。なんとなくわかる気がしましたヨ!
どれも興味深く読めましたが、あえて言うと「勝ち逃げの女王」以外の3編が印象に残りました。
まず「ノー・エクスキューズ」について、
山一證券は1997年に廃業をしています。
T生命も1999年に経営破たん・・・(あ痛っ!!)。C生命、K生命は2000年、似ています・・・
当時、当然に驚きはありましたが、「君たちに明日はない」の意識は希薄だったように思います。
物語では、次のことが書かれていました。
バブルが崩壊したあとのこの日本で、五十を目前にした人間がちゃんとした再就職をすることが、その人の内面、屈辱や焦燥、苦痛、失望、あるいは(こんなはずじゃなかった)という絶望を含めて、いかに大変かを。
「自分の人生がどう転んでも、言い訳をしない。泣き言を言わない。家族にも、むろん他人にも、たとえやせ我慢でも、です。つまりは、『ノー・エクスキューズ』、潔さ、ということでしょうか。」
そして、
主人公の真介とその恋人陽子との会話で、
「自分が所属する企業に、ブランドや優越意識を感じる時代は終わったってこと?」
「時代のせいじゃない。元々そんなもの感じていることに、なんの実質もなかったってことかなあ。ようはさ、どんな企業に勤めて、どんな役職になっているかっていうことより、そこでやっている仕事の、自分にとっての意味の方が大事なんじゃないかなって」
「自分の言葉。」、「自分の仕事。」、「自分の生き方。」
まあ、ゆっくりと自分の答えを見つければいい。
見つからなかったら、それはそれでいい。そういう人生もあるし、それはそれでひとつの答えだろう。
そう自然に思えると、心なしか足取りが少し、軽くなった。
***
一方、作家であり、哲学者であり、宗教学者でもある ひろさちや氏は、次のことを語られていました。
「倒産した山一證券の社員が失業したあと、その息子や娘が見違えるように明るくなったと言う記事が新聞に出ていました。子どもたちからすれば、企業の飼い犬になって卑屈になっているおやじより、真に人間らしい父親のほうが好きなんですよ。まさに“禅の教え”の実践です。ひじょうにいいことです。企業の中で自分の将来を考えるよりも、しっかりと“毎日”の幸福を考えるようにすればいい。“現在”の幸福を考えればいいのです。そもそも“未来”が読めないのは当たり前です。イスラム教徒に言わせれば、未来は神の思し召しのままなんです。“禅の教え”である「莫妄想、余計なことを考えるな!」です。
もちろん“努力”を否定はしませんが、現在のじぶんを否定した上でなされる“努力”はまちがった努力だと思います。それと、他人を意識してなされる“努力”もです。
***
“君たちに明日はない”では、毎巻、その最初に次の言葉かそえられています。
「明日への鐘は、その階段を登る者が、鳴らすことができる」
「行動」と「好きなことや他者貢献への努力」は大事でしょう!前向きに行きましょう!
そして、「いまが大事!」、「生きているうち、はたらけるうち、日のくれぬうち」。
m(_ _)m
« ポータビリティについて | トップページ | B野さんと今年もせんべろ忘年会!! »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 瀬戸内寂聴さん(1922年5月15日~2021年11月9日、享年99歳)が51歳で得度される前年に出版、40歳から50歳までに書きためられたエッセイ「ひとりでも生きられる」を読んで(2025.03.16)
- 瀬戸内寂聴さん、70歳のときのエッセイ「孤独を生ききる」を読んで(2025.02.01)
- 瀬尾まいこ氏の著書は「あと少し、もう少し」、「図書館の神様」に続く、約6年ぶりの3冊目、2019年の本屋大賞にも選ばれた「そして、バトンは渡された」を、試験後の癒しとして読んでみました~!(2024.12.21)
- 岩波文庫「読書のすすめ」第14集、岩波文庫編集部編。非売品。最近、読書量が減っているので、薄いけど面白そうでしたので、古本屋さんで200円でしたので、買って読んでみました!うん、面白かった!!(笑)(2024.12.01)
- 新型コロナ禍の2020年6月から2021年6月末まで、朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載された、小池真理子著「月夜の森の梟」が文庫化されたので、一気に読んでみた~!(2024.02.16)
コメント