「わたしの人生案内」 源氏鶏太著 を読んで
源氏鶏太氏(1912年(明治45年)4月19日~1985年(昭和60年)9月12日)、戦後から高度成長期にかけてのユーモアに溢れたサラリーマン小説(「停年退職」、「三等重役」など、実家の親父の本棚で見たことがありました。読んではいないのですがネ・・・)で著名な小説家だったと思います。自身も現在の住友不動産で25年間サラリーマン生活をされていて、総務部次長職の1956年に小説家に専念するために退職をされています。
「わたしの人生案内」は、1982年のエッセイのようですので、ちょうど70歳のときの作品となるようです。
「お気に入り」を記録しておきます。
「念念今日」とは、仏教の言葉で、ただ今日のことだけを一所懸命に思っていればよい。過去にくよくよしたり、また、明日のことを思いわずらう必要もない、と言う意味のように聞いている。
私は、過去にノイローゼ(現代で言う「うつ病」と思っています)に三度もかかっている。精神的には弱い男である。そういう私にとって、この言葉をときどき口にすると、なんとなく心に落ちつきが出来て、仕事ができた。
気が滅入ってくると、ニヤリと笑い、そして、「念念今日」、と何度もつぶやいてみることにしている。それによって、救われている。
次に私を救ってくれた言葉は「廓然無聖(かくねんむしょう)」という言葉であった。これも仏教の言葉で、武帝が、「仏教の奥義とは」と達磨さんに質問したら、「廓然無聖」と答えたのだそうだ。
「廓然無聖」とは、空の空、つまり何もないということである。空がからりと晴れ上がっていて、そこには無限があるだけだ、と言う意味であろうか。無限とは無に通じている、この言葉もまたある期間の私の心の救いになった。
ここで、Webによると、
・悟りの境地を一言で表わした語として知られる。「廓然【かくねん】」とは台風一過の青い空のように晴れやかでさわやかな境地であるそこには汚れた迷いや煩悩はひとかけらも無い、そればかりか尊い悟りさえない。そこはあらゆる言葉を絶した絶対的無一物の世界だ。山川草木・花鳥風月は皆 今もその世界で生き生きといのちを輝かせている。
・「碧巌録」にある言葉で、大悟(だいご)の境地には「聖人」と「凡夫」、「仏」と「衆生」との区別はないということ。
出世なんかどうでもいいとしても、“仕事が自分を一人前の人間にしてくれるのだ”、ということだけは忘れないでもらいたい。
子ども叱るな来た道じゃ、としより嫌うな行く道じゃ。
島崎藤村は、
「ユーモアのない一日は、極めて寂しい一日である。」といっている。
林語堂は、
「人間の英知とは、現実に夢を加え、更にユーモアを加えることである。」といっている。
内村鑑三は、
「完全なるホームを作るのは、完全なる人を作るがごとく難し」
そして、ハイネは、断定している。
「結婚、いかなる羅針盤もかって航路を発見したことの無い荒海」
筑前聖福寺の住職仙崖和尚の「老人六歌仙」」
しわがよる ほくろができる 腰まがる 頭が禿げる ひげ白くなる
手はふるえ 足はよろめく 歯は抜ける 耳はきこえず 目はうすくなる
身に添うは ずきん襟巻 杖めがね 湯たんぽおんじゅく しびん孫の手
聞きたがる 死にともながる 寂しがる 心は曲がる 欲ふかくなる
くどくなる 気短かになる 愚痴になる 出しゃばりたがる 世話やきたがる
またしても 同じ話に 子を誉める 達者自慢に 人はいやがる
多くの老人は、健康か、金か、家族関係のことで苦しい日々を送っている。が、つらく悲しく生きているのは自分だけでないと思うことで、いくらかは救われるかもしれない。
その上で、周囲の人々に敬愛されるような老人になる努力が大切だと思っている。
なるほど、なるほどね~。
ありがとうございました。
m(_ _)m
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