「PK」(伊坂幸太郎著) を読んで
文庫化されましたので、興味があったので、読んでみました!
この本のテーマの一つは
『勇気とは、勇気を持っている人間からしか学ぶことができない』(P21, 72)
そして、『勇気は伝染していく』(P85)と。
(解説より)
「臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する」オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラー(1870-1937)の言葉として、作中で紹介されている。もっとも、「臆病は伝染する」は、起源をたどれば、ロバート・ルイス・スティーヴンスン『宝島』(1883年)に出てくる言葉で、「他方、議論は人を勇気づける」と続く。
They say cowardice is infectious; but then argument is, on the other hand, a great emboldener.
本書では、それを踏まえた「勇気も伝染する」という言葉が焦点となっている。
もちろんSF小説として、次のこともでてきましたネ。
・タイムトラベル/タイムパラドックス
・パラレルワールド
あまりSF小説を読まないので、詳しくはありません・・・( ̄○ ̄;)!
あと「勉強」になったのは、
「第一次世界大戦のはじまりって知ってる?」
「オーストリアの皇太子夫妻が、サラエボで、青年に暗殺されたんだ。」
「オーストリアの皇太子夫妻がやってきたときに、サラエボでは反発する人たちがたくさんいたんだって。オーストリアに併合された不満で。だから、反発グループが事件を起こしたんだけど、実はその日、五人が失敗してるみたいなんだよね」
「五人が?」
「一人目と二人目が銃を取り出せなくて、三人目は皇太子の奥さんが可哀そうになったんだって。四人目は逃げちゃった。五人目は爆弾を投げたけど失敗。で、その失敗を知った六人目はがっかりしちゃって、喫茶店に入ったの」
「喫茶店で落ち込んでいた六人目が、逃げる皇太子を見つけちゃったわけ」
「不思議でしょ。いろんな偶然や流れがあって、それで、皇太子夫妻は殺害されて、世界は戦争に巻き込まれていくの」
「一匹目の子豚が成功してても、戦争は起きていたと思うけど」
「そうなんだけど、ただ個人の力を超えた、大きな力が物事を動かしているような気がしちゃうんだよね」
「運命とか、そういう話かい」
「運命よりももっと、ごちゃごちゃしたものだよ。世の中で起きている、『原因と結果』って本当に不可解でしょ。そのたった一つの殺人事件が、一千万人の死者を出す世界大戦と結びつくんだよ」(P57-59)
それと、
「ノーベル賞のノーベルの話を知っているかい?」
「ノーベルは、生きている時に、間違って自分の死亡記事が載ったのだけれどね」
「実は、お兄さんが亡くなったのを、記者が誤解して、ノーベルが死んだと記事にしてしまったのだよ。ノーベルは自分の死亡記事が出たことに驚いた。けれど、それ以上に、自分が記事の中で、『死の商人』と称されていることに愕然としたらしい」
「『死の商人』って言われたことに、よほど腹が立ったんだろうね。『ノーベル賞を作ってやるぞ、どうだ!』ってね」
「ノーベルとはそんなにロックンロールが似合う男だったのか。まあ、気持ちは分からないでもないけど」
「元をただせば、新聞記者の誤報なんだ。それがなければ、ノーベル賞は無かったとも言える」(P98)
また、世の中(いまの日本?)を鋭く射す言葉として、
「資本主義が行き詰ったら、戦争でも起こすほかない」(P152)
⇒ある意味「財政投融資」の一つとも言えますしね。恐ろしいことです。
SF小説を楽しむと言うよりも、伊坂氏がアドラー心理学の勉強もされていて、また、歴史もよく勉強されていることで、得るものが多かったと思います。
ありがとうございました!
m(_ _)m
↓単行本の表紙、ドミノストーリーをイメージしていると思います。

↓文庫本の表紙、ヒーローが出てくるのですが、走っているのはヒーロー

« Story Seller annexを読んで | トップページ | アク研行けなくて、ざんねんでした »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 瀬戸内寂聴さん(1922年5月15日~2021年11月9日、享年99歳)が51歳で得度される前年に出版、40歳から50歳までに書きためられたエッセイ「ひとりでも生きられる」を読んで(2025.03.16)
- 瀬戸内寂聴さん、70歳のときのエッセイ「孤独を生ききる」を読んで(2025.02.01)
- 瀬尾まいこ氏の著書は「あと少し、もう少し」、「図書館の神様」に続く、約6年ぶりの3冊目、2019年の本屋大賞にも選ばれた「そして、バトンは渡された」を、試験後の癒しとして読んでみました~!(2024.12.21)
- 岩波文庫「読書のすすめ」第14集、岩波文庫編集部編。非売品。最近、読書量が減っているので、薄いけど面白そうでしたので、古本屋さんで200円でしたので、買って読んでみました!うん、面白かった!!(笑)(2024.12.01)
- 新型コロナ禍の2020年6月から2021年6月末まで、朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載された、小池真理子著「月夜の森の梟」が文庫化されたので、一気に読んでみた~!(2024.02.16)
コメント