「ホテルローヤル」 桜木紫乃著 を読んで
システム本番に向けて、休日出勤がちょこちょこあり、勉強は今一ですが、気分転換!?に本を読んじゃいます。
“人とは”という視点ではとてもよかったのですが、ちょっと暗かったかナ~。
“ホテルローヤル”、北海道、釧路にあるラブホテルの想定です。「直木賞作品」でもあります。
桜木紫乃氏のご実家もラブホテルを経営されていたそうです。
コチラ↓
http://seidoku.shueisha.co.jp/1301/try01_sakuragi.html
ある意味でラブホテルを知り尽くして書かれたのかもしれませんネ。
解説より
ラブホテルにはどこか秘密めいたところがある。世をはばかるような悲しさがある。ラブホテルに入る者は、後ろめたい思いにとらわれる。快楽を求めてやってくるのに、大手を振って入ることが出来ない。罪悪感をもってしまう。
誰もがよく知っていながら遠ざけていた場所を描く。表通りではなく裏通りにひっそりと建つラブホテルのなかにこそ身近な人間たちの切ない物語を見つけてゆく。太陽の下のあかるさより、ホテルの部屋の暗がりの中に人びとの悲しみ、哀歓を見出してゆく。
そこでは男も女も、ホンネの姿をさらけだす。だからいっときの昂揚が過ぎ去ったあとには、急に心がさめたりする。桜木紫乃は、セックスそのものの熱さよりも、むしろセックスのあとの白々しさをとらえようとしている。いったんはひとつになった男女が、ことが終わると、また離れ離れになってゆく。その虚しさ、寂しさ。
釧路は、アイヌ語由来とのこと。漁業以外にも、明治初期には(安田、三井、三菱、明治)財閥によって石炭、硫黄、木材、農水産物の積出港として一大物流拠点を形成しましたが、昭和の高度経済成長をピークに人口減に入っていますね。
“ホテルローヤル”もそのピークの頃に建設され、そして廃墟となるまでの物語です。
とてもよかったのですが、ちょっと思っていたよりも暗かったですネ・・・。
物語は、7つの短編で構成されていて、ホテルローヤルの廃墟から時間が遡っていきます。
各編とも“ホテルローヤル”を中心にひとびとが物語を織りなします。
シャッターチャンス
廃墟となったホテルローヤルの“ある部屋”で、挫折し負け犬状態の木内貴史が、長く付き合っている加賀屋美幸のヌード写真を撮って、それを投稿することで、一矢を報いようとする物語。
ヌード写真を撮影した部屋が三号室。三号室は“ホテルローヤル”が廃業となる原因となった心中があった部屋・・・
本日開店
釧路でお寺の経営を助けるために、住職の妻、設楽幹子が壇家たちに身を売る物語。更に、設楽幹子は結婚する前に“ホテルローヤル”で過ごした男に300万円を騙し取られていた。
えっち屋
ホテルローヤルを建てた田中大吉、それを受け継いだ娘の雅代とホテルにアダルトグッズを納入している業者の気の弱い社員で過去に傷をもつ宮川と、ホテルを閉める前に最後の「想い出」を・・・
バブルバス
ホテルローヤルがまだ賑わっていた頃、家が狭くて舅とも一緒の夫婦が、ホテルローヤルで久しぶりに夫婦をとり戻す物語。唯一、少し明るい物語でした。
せんせえ
親に捨てられた女子高生まりあと結婚する前から妻に男がいた教師野島との物語。二人は最後にホテルローヤルの三号室で心中する。
星を見ていた
解説にも書かれていましたが、この物語の“白眉”ですネ!
ホテルローヤルの掃除婦ミコ(六十歳)と漁業でからだを壊して働けずにいる夫正太郎(五十歳)の物語。
物語の所々でミコは自分の母親の言葉を想い起します。
『誰も恨まずに生きて行けや』
『いいかミコ、おとうが股をまさぐったら、何も言わずに股開け。それさえあれば、なんぼでもうまくいくのが夫婦ってもんだから』
『いいかミコ、なにがあっても働け。一生懸命に体を動かしてる人間には誰もなにも言わねえもんだ。聞きたくねえことには耳ふさげ。働いていればよく眠れるし、朝になりゃみんな忘れてる』
そんな中で、たまにだが連絡を寄こしていた次男が逮捕される記事が出た。
物語のさいごに、ミコを探していた正太郎にミコは「星を見てたの」と・・・
ギフト
若き田中大吉が妻と別れ、愛人の るり子と“ホテルローヤル”を始めるまでの物語。愛人 るり子との間には雅代が生まれる。
ありがとうございました!
m(_ _)m
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