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2016年2月20日 (土)

「赤ひげ診療譚」 山本周五郎著 を読んで

山本周五郎氏の本を初めて読みました。

スーパーマンのような主人公でしたが、とても面白く、かつ良かったです!!

 

昭和34年、山本氏55歳の作品ということです。

 

主人公は、赤ひげこと、小石川養生所の医長 新出去定(にいできょじょう)。

歳は40から60のあいだで、40代の精悍さと、60代の落ち着きとが少しの不自然さもなく一体になっている。(11頁)

 

赤ひげは医術に優れ、力も強く喧嘩に負けない、スーパーマンですネ!

そこに、新人医員として入る 保本登のひととしての成長も織り交ぜた物語になっています。

 

では、お気に入りのところをご紹介!

 

「医術がもっと進めば変わってくるかもしれない、だがそれでも、その個躰のもっている生命力を凌ぐことはできないだろう。医術などと言っても情けないものだ、長い年月やっていればいるほど、医術が情けないものだと言うことを感じるばかりだ、病気が起こると、ある躰はそれを克服し、べつの躰は負けて倒れる、医者はその症状と経過を認めることができるし、生命力の強い躰には多少の助力をすることもできる、だが、それだけのことだ、医術にはそれ以上の能力はありゃしない」

 

「・・・・現在われわれにできることで、まずやらなければならないことは、貧困と無知に対する闘いだ、貧困と無知とに勝ってゆくことで、医術の不足を補うほかはない、わかるか」

「それは政治の問題だと云うだろう、誰でもそう云って済ましている、だがこれまでかつて政治が貧困や無知に対して何かしたことがあるか、貧困だけに限ってもいい」

「ここに居てみればわかるだろう、ここで行われる施薬や施療もないよりはあったほうがいい、しかし問題はもっと前にある、貧困と無知さえなんとかできれば、病気の大半は起こらずに済むんだ」

 

「人間ほど尊く美しく、清らかでたのもしいものはない。だがまた、人間ほど卑しく汚らわしく、愚鈍で邪悪で貪欲でいやらしいものもない」

「おれは売色を否定はしない、人間に欲望がある限り、欲望を満たす条件が生まれるのは自然だ。売色が悪徳だとすれば料理茶屋も不必要だ、いや、料理割烹そのものさえ否定しなければならない、それは自然であるべき食法に反するし、作った美味で不必要に食欲をそそるからだ。もちろん料理茶屋はますます繁盛するだろうし、売色という存在もふえてゆくに違いない。そのほか、人間の欲望を満たすための、好ましからぬ条件は多くなるばかりだろう。したがって、たとえそれがいま悪徳であるとしても、非難し譴責し、そして打ち壊そうとするのは無駄なことだ。むしろその存在をいさましく認めて、それらの条件がよりよく、健康に改善されるように努力しなければならない。こんなことを言うのはおれ自身が経験しているからだ。おれは盗みも知っている、売女に溺れたこともあるし、師を裏切り、友を売ったこともある、おれは泥にまみれ、傷だらけの人間だ、だから泥棒や売女や卑怯者の気持ちがよくわかる」

 

「世間からはみだし、世間から疎まれ嫌われ、憎まれたり軽蔑されたりする者たちは、むしろ正直で気の弱い、善良ではあるが才知に欠けた人間が多い、これが切羽詰まった状態にぶつかると、自滅するか、是非の判断を失ってひどいことをする。この世から背徳や罪悪を無くすることはできないかもしれない。しかし、それらの大部分が貧困と無知からきているとすれば、少なくとも貧困と無知を克服するような努力がはらわれなければならないはずだ」

 

「徒労とみられることを重ねてゆくところに、人間の希望が実るのではないか、おれは徒労とみえることに自分を賭ける。温床でならどんな芽も育つ、氷の中ででも、芽を育てる情熱があってこそ、真実生きがいがあるのではないか」

 

そんな赤ひげのところで1年経験を積んだ新人医員 保本も出世を望まなくなり、婚約者に対して、

「・・・養生所に残るとすると、生活はかなり苦しくなるし、名声にも金にも縁が遠くなる、もちろんあなたにも貧乏に耐えてもらうことになるが、それでもいいかどうか考えてみて下さい。貧乏暮しというものは、あなたには想像もつかないだろうと思うが、私はそれに耐えても、いまの仕事に生きがいがあると信じているのです。考えが決まったら手紙でもよこしてください」と伝え、

赤ひげに対しても、

「貧富や境遇の善し悪しは、人間の本質には関係ないと思います。私は先生の外診にお伴をして1年足らずの期間ですが、いろいろの人間に接してきました、不自由なく育ち、充分に学問もしながら、賤民にも劣るような者がいましたし、貧しいうえに耐えがたいくらい悪い環境に育ち、仮名文字を読むことさえできないのに、人間として頭のさがるほどりっぱな者に、幾人もあったことがございます」と

そして、赤ひげは、

「毒草はどう培っても毒草と言うわけか。だが、毒草から薬を作り出したように、悪い人間の中からも善きものを引き出す努力をしなければならない、人間は人間なんだ」と話す。

 

ありがとうございました!!!

 

m(_ _)m

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