「レインツリーの国」(有川浩著) を読んで
人見利香(ハンドルネーム、ひとみ)と向坂伸行(ハンドルネーム、伸(シン))との恋愛物語。
普通の“恋愛”と少し違うのは、
ひとみが、低音域に残存聴覚が残っている感音性難聴であること。
高校一年生のとき、両親と山に登って滑落事故に遭い、両耳ともそうなった。
障害歴10年。補聴器は利用しているが、全音域はカバーできず、体調によっても聞こえが左右される。
そんな“健聴者”と“難聴者”との恋愛物語!
とても良かったです!!
二人は、インターネット上で、中学時代に読んだライトノベル「フェアリーゲーム」という本の感想で知り合い、メール交換が始まる。
※ちなみに、「フェアリーゲーム」とは、実在する「妖精作戦」(笹本祐一著)という本とのこと
二人とも読書好きであり、「言葉」が好き。そんな二人が魅かれあう。
こんな記載があった。
どうしてひとみの「言葉」がこれほど好きなのか分かった。
彼女は、・・・彼女たちは、耳が不自由な分だけ、「言葉」をとても大事にしているのだ。第一言語として自分たちに遺された「言葉」を。その「言葉」を大事に使って、真摯に理屈を組み立てる。
だから伸行はひとみの「言葉」に魅かれるのだ。あれほど真摯に使われる「言葉」はまたとないからだ。自分と似ていて少し違う心地よさ。それは、ひとみが「言葉」の限りある愛おしさを知っているからだ。
その「言葉」で大切な思い出の本を語られたら、魅かれない奴はいないだろう。
あと、著者の有川氏は次のことを書かれていた。
難聴者の方が前を歩いているかもしれない。そういうことを考えずに、後ろから自転車のベルを鳴らしているのに避けてくれないのでイライラする、なんてことは私も今まで何度か思ったことがあるのです。
そんな「自分もやっているかもしれない」と言うことを、自戒を籠めつつ積極的にエピソードに取り入れたことを思い出します。
でも、人間と言うのは悲しいもので、こんなお話を書いたにも拘わらず、書くためにいろんなことを調べて知ったにも拘わらず、それでも私は自転車のベルに気がついてくれない人に苛立ってしまうことがあるのです。余裕がないと結局自分の都合を優先してしまうのです。
分かったつもりで分かっていない、分かった振りしかできていない。後からそんな自分を振り返る時の自己嫌悪といったらありません。
しかし、何度でも自己嫌悪するしかないのだと思うようになりました。常に適切な振る舞いができていないとしても、その度にそんな自分を思い知ることは無意味じゃない。そう信じるしかない。次から気をつけよう、何度でもそう思うしかない。
立派で正しい人になれないのなら、間違って打ちのめされる自分でいるしかない。少なくとも、なにも感じなくなるよりは間違う度に打ちのめされる自分でいたい。
とてもイイですネ!!!
ありがとうございました!!!
m(_ _)m
ちなみに、昨年2015年の11月に映画化もされていたんですネ!知らなかった・・・
映画のテーマも『「言葉」が心をつなぐ!』
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