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2016年7月30日 (土)

「ポーツマスの旗」(吉村昭著)を読んで その4

ポーツマス条約を結んだ外務大臣「小村寿太郎」の裏の顔について

 

私生活では、大酒し女遊びも激しかった・・・

そして、父親の莫大な借金のため、母親は家を去り、父親の負債は長男の寿太郎に降りかかった。

債権者たちは絶えず家に押しかけて怒声をあげ、役所にもやってきて小村を呼び出し、棒給を奪っていった。

生活は窮した。

友人からは煙草を乞うた。

彼は、借金返済の期日が迫ると家に近寄らず外泊した。同僚や旧知の友人たちの家を泊って歩き、しばしば遊里にも行った。居続けをしながら金も払わぬので、再び行くと素っ気なく追い払われる。役所で弁当を取ろうとしても支払いをしないので断られ、茶を飲んですごすことも多かった。同僚と会食をしても会費を払うことは無く、それでも平然と出席する彼は敬遠された。

債権者の容赦ない督促に、酒を飲み、女を買う荒れた生活が続いた。

 

彼の大きな誤算は、妻の町子であった。かれが町子を妻にめとったのは、その美貌にひかれたからであった。町子は、女子としては珍しく明治女学校卒の高等教育と受けた娘で、留学から帰国したばかりの彼には得がたい娘に思えた。

しかし、結婚後、かれは、妻が家事を一切せぬ女であることを知って愕然とした。女として身につけておかねばならぬ裁縫の針をとることもせず、料理もできない。近くに実家があって、その仕送りで女中を雇い、すべての家事をやらせる。それに、感情が激することが多く荒い言葉を口にしたり、物を投げたりして、小村が腹を立てると、実家の両親の下に行って泣いて訴える。

子供が生まれても、妻の生活態度は変わらなかった。彼女の唯一の趣味は芝居見物で、子どもを女中に託して実家の母などとしばしば外出する。それをなじると、妻は泣き喚いた。町子は幼児のような女であった。食事も気の向いた折にすませ、小村と食膳に向かい合って座ることもない。小村は妻を持て余し、ほとんど口をきくこともしなくなった。

 

小村の家庭生活は無残であった。町子が家事を処理する能力に欠けているため、小村は、夏は浴衣一枚、冬は綿入れを着通し、破れてもつくろってもらうこともない。

小村の給与が増して生活が楽になり女中を雇うようになったが、町子は来客があっても顔を出すことはせず、むろん酒肴の用意もしない。そのため小村は、台所に行って女中に肴を指示し、酒を出させたりしていた。

町子の芝居通いはさらに著しくなって、小学校に通う息子と娘も連れてゆく。役者の錦絵、画本を買い集め、新聞も芝居の欄のみ目を通し、役者の手拭も収集する。町子の趣味は子供たちにも伝わり、役者の所作を真似たり、声色を使って遊ぶ。かれらは、女中や書生に芝居の登場人物や役者の名をつけて興じていた。

小村は、町子と諍いをして時には殴りつけることもあった。が、町子の態度はあらたまらず、息子や娘は母の側について小村に近づこうとしない。女中も町子の指示に従い、僅かに書生たちが小村の身の回りの世話をしたが、町子の冷ややかな態度に辟易して去る者が多かった。

小村は、家庭の空気に堪え切れず芸者遊びにふけった。居続けることもあって、待合から出勤することも稀ではなかった。かれの遊興は省内でも話題になっていたが、家庭の事情からやむを得ないと同情する者も多かった。

町子は、外泊する小村に嫉妬をいだき、しばしば尋常さを欠いた行為をとった。待合の女が月末に請求書を持ってくると、町子は、女性の陰部の名称を口にし、そのようなものに夫が接した代金を支払えぬ、と叫んで追いかえす。

さらに、町子は、小村が常時使用する車夫に、遊里へ送った折には必ず自分に告げることを厳命した。或る夜、彼女は、請求書から知った蜂龍という待合に足を向け、小村を待っていた車夫に、なぜ教えぬ、と言って頬を平手でたたき、待合に入った。二階に上った彼女は、小村の笑い声を耳にして部屋の襖をあけ、小火鉢を持ち上げて芸者に投げた。火鉢は背後の金屏風に辺り、炭火と灰が散った。屏風が燃えだし、待合は大騒ぎになったが、その話も蜂龍の女将の口から外務省内に広がった。

小村は、妻や家庭に絶望し、帰宅しても一室にとじこもって家族と顔を合わせることもしなかった。

晩年は、家族とは別居し、激職の末に結核に罹り56歳で亡くなっている。

 

親、そして妻には恵まれなかったが、ここで培った?タフなふてぶてしさが小国日本のために生きた、と言われている。

 

いろいろな人生がありますネ!

ありがとうございました~!

m(_ _)m


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