「隣の女」 向田邦子 著 を読んで
初めて向田邦子氏の本を読んでみた!
これほど女の“性(さが)”のようなものを濃厚に描かれる方だとは初めて知った!
向田氏は「生命保険」とも関わりがあり、父親は東邦生命保険で団体保険部長まで務められた方と聴いている。当時は日本の生命保険会社、やはり転勤が多く、向田邦子氏も自立するまでは父親の転勤で全国に行かれていた。
その中でも鹿児島での想い出が強く「父の詫び状」でその時のことを詳しく書かれているようだ。
さて、本著は5つの短編集からなる。
・隣の女
・幸福
・胡桃の部屋
・下駄
・春が来た
「隣の女」は28歳の平凡な主婦サチ子がアパートの薄い壁から聞こえてくる隣の女の性生活に刺激を受けて、日常の平凡から逃避行する物語。
「幸福」は、30歳の工員の数夫と27歳の洋裁のお針子で少し腋臭のある素子の恋。実は、以前数夫は、素子の姉、同じ腋臭のある組子と付き合っていた。そのことを知った素子の心の揺れを描きながらも、素子は数夫と一緒に居たいと思う物語。
「胡桃の部屋」は、女をつくって家を出た父親の代わりに大黒柱として一生懸命働く30歳の桃子、けれども、二浪した大学生の弟は、留年しない程度に勉強はしているが、彼女をつくり、彼女の家にとびだしていく。大学の学費を払っている桃子は怒る。そして、頼りない妹の高校の学費も払っている。
暫くすると、母親も留守がちになる。女をつくって出ていった父親のところに隠れて通い始めていた。
品行方正に心に鎧をかぶって一人踏ん張ってきた桃子のフッと何かが切れる物語
「下駄」は、出版社に勤める浩一郎と父親の隠し子で弟となる中華料理屋に住み込みで働いている浩司。最初は浩司を疎ましく感じていた浩一郎だが、自分の会社が倒産して、しばらく会わないでいると懐かしくなるという物語。
「春が来た」は、27歳の直子、自分の家を裕福っぽく偽って、26歳の風見との恋を実らせようとする。しかし、自宅に来られたことで、裕福でないことがバレるが、直子の母親の須江と妹の順子からも若い風見に好意を寄せる。それに馴染んでいる様子の風見であったが、最後に「自信がなくなった。ぼくには荷が重すぎる」と言って去っていく。これをきっかけに直子の家族が成長していく物語。
人の心の奥の思いを物語にすることが上手なのだと思ったが、これほどまでに人は思うものなのか、と感じるところがあった。お腹いっぱいです!
ありがとうございました!
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